売れていないだけでなく魅力的な車種が少ない!ニュースでご存知のとおり、営業利益が前年同期比90%減になるなど日産自動車の経営状況が厳しいものになっています。全世界で9000名ほどのリストラに着手、生産能力を適正化するといった対策も発表されていますが、それでは根本解決にならないばかりか、企業としてシュリンクしていく一方でしょう。 ごく一部の超プレミアムブランドを除けば、自動車メーカーというのは数を売って、売り上げを増やすことが成長につながります。現実的に生産能力が余っているならば工場を閉鎖することで全体としての稼働率を上げることは有効ですが、それは“筋肉を減らしてダイエットしている”ようなもので、将来的な成長力を削る処置と言わざるを得ません。 ひとまず大規模リストラによって体制を整える必要性はあるとしても、先々のことを考えると、販売台数を増やすことが重要です。そのためには魅力的な商品ラインナップを揃えることが基本中の基本となります。 そうした視点で日産のラインナップと販売台数を眺めると、非常にさみしいものとなっています。売れていないだけでなく、とにかく車種が少ないのです。グローバルで考えなければならないのは当然ですが、ここでは日本市場にフォーカスして「いま日産に必要なモデル」を考えてみることにしましょう。 参考になるのは、レクサスを含むトヨタの幅広いラインナップです。かつて日本では「TN(トヨタ・日産)戦争」という言葉が使われるほど、トヨタと日産はガチンコで全面対決するライバル同士でした。それが、いまではトヨタ一強となっています。はたして、日産に足りないモデルとは何でしょうか? >>フォトギャラリーで日産とトヨタの人気モデルを見る |あわせて読みたい| カローラクロス対は「サニーカリフォルニア」2024年度上半期(4~9月)、もっとも売れた登録車はトヨタ「カローラ」でした。日本向けの5ナンバーボディのセダン「カローラ」とワゴン「カローラツーリング」、3ナンバーボディでグローバル仕様の「カローラスポーツ」、SUVスタイルの「カローラクロス」などバリエーションが豊富なことも半年で7.7万台をセールスした原動力になったのでしょう。 一方、かつてカローラのライバルとして日本市場を二分した「サニー」の名前はいまや日産の新車ラインナップから消えてしまっています。さすがに4ドアセダンのサニーを復活させても経営は好転ないでしょうが、日産のラインナップにカローラクロスのライバルが見当たらないのは事実です。 「RAV4」を「エクストレイル」で追撃しているのであれば、カローラクラスにガチンコでぶつけるライバルモデルも必要です。基本的なアーキテクチャーはエクストレイルと共通としながら、丸目ヘッドライトとウッド風サイドパネルを与えた「サニーカリフォルニア」を復活させれば、CセグメントSUV市場における台風の目になるかもしれません。 >>フォトギャラリーでサニーカリフォルニアやパトロールをチェック RAV4やハリアーのPHEVには「エクストレイルPHEV」クロスオーバーSUVでは、トヨタはプラグインハイブリッドを充実させています。前述したRAV4のほか、スタイリッシュな「ハリアー」にもプラグインハイブリッドを設定。レクサスの人気モデルである「RX」や「NX」にもプラグインハイブリッドがあります。また、カテゴリーは違うもののハイブリッドの象徴といえる「プリウス」にもプラグインハイブリッド仕様が用意されています。 一方、日産のラインナップにはそもそもプラグインハイブリッドの設定がありません。エクストレイルのプラットフォームは、アライアンスを組んでいる三菱「アウトランダー」と共通なのは知られています。そのアウトランダーがPHEV(プラグインハイブリッド)ということは、日産もプラグインハイブリッドをラインナップすることは不可能ではないはずです。 |あわせて読みたい| コンパクトミニバンよりLLミニバンの設定が急務トヨタにあって日産にない高級~超高級ミニバンの設定も急務です。 「アルファード/ヴェルファイア」に加えてレクサス「LM」と、トヨタ陣営のLLミニバンは非常に充実したラインアップを誇ります。アルファード/ヴェルファイアにも近日、PHEVが設定されるようですが、EV走行機能や外部充電機能をもつPHEVグレードを「エルグランド」の後継モデルに設定すれば、トレンドを牽引できる人気車種になるかもしれません。 国内向けのミニバンについて議論すると、日産にはトヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」と同クラスのモデルがないのが問題と指摘されることが多いのですが、もし日産がシエンタクラスのモデルを誕生させると、ミニバンナンバーワンの販売台数を誇るセレナが失速するでしょう。 それはフリードとステップワゴンの両方を用意したことで後者が苦戦しているホンダの状況からも想像できます。つまり、日産がコンパクトミニバンを開発するのは悪手になる可能性もあるわけです。 ランドクルーザーには対抗「パトロール」で対抗トヨタにあって日産に足りないモデルといえば、本格的なクロカン4WDではないでしょうか。端的に言えば「ランドクルーザー」のライバルとなるモデルが日産には必要です。なにしろ300、250、70を合わせた「ランドクルーザー」ファミリーは、2024年度上半期で2.8万台も売れています。これはプリウスに数百台差と迫るもので、もはやクロカン4WDはニッチカテゴリーではないのです。 実は日産にはクロカン4WD「パトロール」(北米名は「アルマーダ」)があります。パトロールはかつて日本でも「サファリ」というモデル名で「ランドクルーザー」のライバルとして販売されていたのは良く知られている話です。 そんなパトロール(サファリ)ですが、2024年9月に425馬力を発生する3.5L V6ツインターボを積んだハイパフォーマンスモデルとして発表されています。現時点では中東など海外向けモデルといった位置づけですが、日本市場においてランドクルーザーが支持されており、なおかつ納期が年単位となるほどのバックオーダーを抱えていることを考えると、パトロール(サファリ)の日本市場復活にはそれなりの勝算もありそうです。 >>フォトギャラリーでサニーカリフォルニアやパトロールをチェック BEVシフトだけが現在の失速の原因ではない最後に余談ですが、最近では「BEV失速」の報道も増えてきました。しかし、世界的なカーボンニュートラルという目標が変わらない限り、BEVが有力な選択肢であることは変わりません。ある日を境に一気にBEVへと切り替わるわけではなく、グラデーション的にゼロエミッションへシフトするのであれば、揺り戻しがあるのは想定される話です。 欧州系メーカーは慌てている様子で、いち早くBEVシフトを掲げた日産も厳しい状況になっているのは事実ですが、“想定以上にBEVの販売が失速している”のではなく、“想像もしていないライバルとして中華系メーカーが台頭してきた”ことが原因かもしれません。 |あわせて読みたい| |
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