ルノー5 Eテックがベースの高性能スポーツモデル「日本では遅々として電気自動車(以下BEV)の普及が進まない」という報道を頻繁に見かけるが、実はパリ条約で二酸化炭素低減の“旗振り役”を担うはずのヨーロッパ諸国、特にメルセデス・ベンツ、そして最近ではボルボやポルシェまでが内燃機関の継続販売、つまりは“エンジンの生き残り策”を発表しているのはbtyの読者ならよくご存知かもしれない。 しかし環境保全を考えれば「BEVへの転換は政治的にも技術的にも不可逆である」というのは覆せそうにない結論でもある。各自動車メーカーのBEV開発は休むことはなく、様々なカテゴリーで続々とニューモデルが発表されているのも事実だ。 今回紹介する「アルピーヌA290」は、アルピーヌ社が最近欧州で発売されたばかりのルノーの新型BEV「5(サンク) Eテック」をベースにして開発したスペシャルチューニングモデルである。 <A290のボディサイズと重量> 本題に入る前にアルピーヌとルノーの関係について説明しておくと、両社、正確にはルノー・スポールとアルピーヌ社(当時はアルピーヌ・コンペティション社)は1976年に合併したが、1995年にアルピーヌブランドは消滅した。しかし2017年にアルピーヌは「A110」で成功裏に復活、それを機にルノーは再び子会社のルノー・スポールとアルピーヌ社との統合を発表している。 そしてその最初の成果が「アルピーヌ A290」だ。北フランス、ノルマンディー海岸の町ディエップにあるアルピーヌ工場から送り出されるA290は、ヘッドライトのグラフィックはルノー5のままだが、内蔵されたデイドライビングライトと、フロントにX字の補助ライトがレイアウトされている。 フロントのエアインテークは大型化され、その左右には大型のフラップと両脇にはエアカーテン用のスリットが設けられている。もちろん伝統に従ってボディの前後にあるロゴもステアリングパッドにあるバッジも全てアルピーヌでルノーの文字はない。 |あわせて読みたい| #アルピーヌ #A290 #ルノー #ルノー5 #価格 #電気自動車 意外にも快適性重視の走り。欧州価格は約619万円~ベースモデル同様にフロントに搭載され、前輪を駆動するモーターはルノー「セニック」から移植されたもので2種類のチューニングがある。床下に搭載されている電池の容量は52kWhで、航続距離は条件にもよるが最大で380km(WLTP)と発表されている。 ホールド性が高いスポーツシートに身体を落とすと、目の前にはアルピーヌのロゴが入ったステリングホイール、そしてその向こうには「ルノー5 Eテック」と同じ10インチの横長スクリーンが並んでいる。スタータースイッチをONにしてコンソールに並んだD―N―Rの3個のボタンでDをセレクトしてスタートする。 アルミ製のサブフレームやステアリングナックルを採用したにも関わらず、空車重量は1479kgとベースのルノー サンク(150ps&245Nm)よりも30kgも重い。これは前述したようにセニック用の大型モーターを使用したためだ。 しかしA290はドライバーの背中がバックレストに押し込まれるような鋭い加速Gを伴ってダッシュする。このハイパワーモデルに採用されているミシュラン パイロットスポーツ 5Sのグリップは素晴らしく、少し深めにドライブペダルを踏み込んでも文字通り音を上げずに速度を増してゆく。 しかし、スポーツモデルとしては意外なほど快適性が強調されているシャシーセッティングのせいか、コーナーではアンダーステアが出てしまう。直径320mmに拡大されたディスクブレーキはそんな時にコントローラブルでシュアな制動力を見せてくれるが、ステアリングも思ったほどシャープではないので…結果としてはリラックスしたドライブが楽しめる。 A290の名誉のために付け加えておくと試乗会ではクローズドサーキットでの走行も行われ、トラクションを最大化する新機能のトルク・プリコントロールによってアジャイル(俊敏)な性格も垣間見ることが出来た。 筆者はアルピーヌというブランドからもっと過激なスポーツハッチを想像していたが、その内容は意外に実用性を考えたスポーツモデルだった。 冒頭に述べたようにヨーロッパでもBEV販売は足踏み状態と言われるが、それでもこのアルピーヌ A290のような選択肢が広がるのは市場の活性化にもつながるだろう。アルピーヌ・ジャポンによれば今のところ日本への輸出は行われないようだが、参考のためにドイツでの価格はGTが3万8700ユーロ(約619万円)、GTSが4万4700ユーロ(約715万円)である。※1ユーロ|150円で計算 (終わり) |あわせて読みたい| |
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