「GRヤリス Mコンセプト」が東京オートサロンで初公開TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は1月10日に開幕した「東京オートサロン2025(TAS25)」にて「GRヤリス M コンセプト(Mコンセプト)」を公開した。 Mコンセプトは、「GRヤリス」をベースに、開発中の直列4気筒2.0Lターボエンジンを大胆にも車両ミッドにマウントしたコンセプトモデル。TGRはリリースで「GRヤリスのさらなる可能性を追求するため」とその真意を説明するが、今後はスーパー耐久シリーズ(S耐)を通じレースという極限の環境下で“壊しては直す”を繰り返し「ドライバーファーストのクルマづくり」を実践していくという。 S耐は近年、日本伝統の耐久レースとして、アマチュアの最高峰であるコンペティションという側面だけでなく、レースという極限の領域でクルマを開発する「走る実験室」の側面を強めている。 その走る実験室の最たる挑戦が、スーパー耐久機構が認めた開発車両で争われる「ST-Qクラス」の「液体水素カローラ(32号車)」。トヨタは2021年の富士24時間レースより「水素カローラ」を投入し、その後燃料を“気体”から“液体”へと変更した液体水素カローラで耐久レースを戦ってきた。 水素カローラのほかにも、「GR86」や「GRヤリス」もS耐の場で日夜鍛えられ、次世代モデルの開発に活かされている。その「走る実験室」での新たな挑戦が、今回のMコンセプトなのだ。 一体どのようなモデルなのか? GRヤリスの開発主査を務める齋藤尚彦氏(GAZOO Racing Company GR統括部 ZR GR4チーフエンジニア)に成り立ちや今後の展開を直撃した。 >>「GRヤリス M コンセプト」を写真で詳しくチェックする ◎あわせて読みたい: キッカケは「1回エンジンを後ろに置いてみたら?」GRヤリスは、その登場以来モリゾウこと豊田章男会長やレーシングドライバーたちがラリーや耐久レースの現場でカイゼンを繰り返してきたのは前述の通り。しかし開発を進めていく中で、越えられない壁が出てきたという。 「(GRヤリスは)フロントに(重量物である)エンジンがあることで、フロントタイヤにかなりのストレスがかかる。フロントに重さがかかると、止まる・曲がる・走る、全てフロントタイヤに集中してタイヤのマネージメントが難しかった。また雪の上で、ハンドルを切ってもブレーキを踏んでもコンマ何秒か何しても上手くいかない『神に祈るしかない時間』があった。 S耐の現場で、エンジニアもモリゾウさんもプロドライバーもずっと(そのことに)悩んでいたところ『1回エンジンを後ろに置いてみたら?』となって、エンジンを後ろに持っていっちゃって作ったのがこのクルマ(齋藤主査)」 齋藤主査曰く、今までのトヨタの開発は、「〇〇というモデルを作る」というゴールが先にあり、そこに向かって開発が進んでいたそうだが、今回の「Mコンセプト」は「どういうクルマになるからないけれども、いま自分たちがやっていないことをトライしてみよう((齋藤主査))」というのがスタートだったそうだ。 ミッドシップにした結果、ミッドシップのネガも発生したがそこはGR謹製の4WDシステム「GR FOUR」で補うことで、GRヤリスのポテンシャルをさらに高めることができたという。 >>「GRヤリス M コンセプト」を写真で詳しくチェックする ◎あわせて読みたい: 「もっとパワーが欲しい」で2.0L化ノーマルのGRヤリスには、レーシングエンジン並みの精度で組み付けられ、304PS/400Nmを発揮する直列3気筒1.6Lターボエンジン(G16E)が搭載されているが、Mコンセプトには新開発の直列4気筒2.0Lターボエンジン(G20E)が搭載されている。 齋藤主査によると、最初はG16Eエンジンを搭載したそうだが、ミッドシップにしたことで回頭性も上がりGRヤリスのネガがだいぶ消えたそうだ。ネガが消えた結果モリゾウさんやプロドライバーから「ここまで走れるならもうちょっとパワーが欲しいよね」という声が上がったという。 そうした声から生まれたのがG20Eエンジンというわけだ。昨年の「東京オートサロン2024」でモリゾウさんが「エンジン技術にもっと磨きをかけるプロジェクトを立ち上げる」と宣言したが、G20Eエンジンはまさにこの1年で開発が進められてきたものだという。 現状の課題を齋藤主査に聞いたところ、元々GRヤリスはコンパクトなボディに高出力エンジンを搭載しているため熱害がアキレス腱となっていたのだが、ミッドシップにすることで走行風が当たらなくなり、さらに熱の問題があるとのこと。 >>「GRヤリス M コンセプト」を写真で詳しくチェックする ◎あわせて読みたい: 「MR2復活」に繋がるのか?今後はS耐で「壊しては直す」を繰り返しカイゼンすることで、そこで得られた熱対策の知見を“通常のGRヤリス”にもフィードバックしていくという。 となると気になるのが今後の展開だが、齋藤主査も「僕らもわかりません」と煙に巻かれてしまった。 「皆さんもご存知の通り、ミッドシップは何十年とトヨタはやっていない。当時のナレッジも全くなくゼロなんですよ。ゼロからのスタートなので、載っけてはみたもののさあどうしよう……という状態(齋藤主査)」 「ネット記事やSNS上では『MR2復活!』という噂もチラホラ出まわっているが?」と少し意地悪に食い下がってみると、齋藤主査も「想像にお任せしますけど、僕らは何も決めていません。シンプルにいまはモリゾウさんやプロドライバーと四駆の技術を突き詰めるということをやっている」と話してくれた。 一方で齋藤主査も「マシンとしてかなり戦闘力が高くなるポテンシャルがある」と述べており、過去「GR-FOUR」というスポーツ4WDもゼロから開発された経緯がある。別の関係者も「今回は大いに皆さんで色々想像して欲しい」と述べているので、ファンの声が大きくなればなるほど、市販化への道が拓けていくのかもしれない。 なお、齋藤主査は最後にコッソリ「全長は変わってないが、実はリアタイヤの位置が少し後ろになっているんですよ。トレッドも広がっていて、フロアも全然違う」と教えてくれた。ミッドシップ化だけでなく、まだまだ色々な秘策がMコンセプトには隠れているようだ。「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」に終わりはないのである。 (終わり) >>「GRヤリス M コンセプト」を写真で詳しくチェックする ◎あわせて読みたい: |
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