テスラはすでに自動運転可能は“信者”が盛りすぎ先日、ネットで「もうすぐ自動運転が実現するから何十万円もかけて運転免許を取得するなんて情弱のやることだ」といった主旨のコメントを見かけました。SNSだったか、ニュースへのコメントだったかは失念しましたが、“もうすぐ自動運転が実現する”という前提条件は気になる人も多いのではないでしょうか? 自動運転技術の実装で業界をリードしている“ような”イメージが強いテスラにはFSD(フルセルフドライビング)という機能があり、これを利用すれば一般道での自動運転が可能になると信じている人は多いようです。 >>ホンダゼロやテスラのロボタクシー、アフィーラワンを画像で見る しかし、自動車に詳しい人ならご存知のように、テスラのFSDはドライバーがシステムを監視していることが前提であり、世界標準となっているSAE自動運転レベルでいうと単なる「レベル2」でしかありません。(※レベル2は一般的な国産車や輸入車で普及している、ACCやレーンキープといった先進運転支援技術が主体で、一部のモデルで広まりつつある「ハンズオフ機能」もここに含まれます。) そう、テスラ信者は異論を唱えるかもしれませんが、自動車業界の正式な基準でいえばFSDは自動運転ではなく、先進運転支援システムに過ぎません。 もちろん、テスラのFSDは自動運転レベル2としては最高峰の内容をもっていますが、“運転支援システム”の範疇にある限り、運転や事故の責任はドライバーにあります。極端な言い方をすれば、FSDが完璧に作動している状態であっても、ドライバーは視線を外して(アイズオフ)、スマートフォンやTVなどの画面を注視することはできないのです。 (次のページでは今行われているレベル3運転を解説) |あわせて読みたい| ウェイモのタクシーは完全自動運転じゃないの?アイズオフができるのは、自動運転「レベル3」以上のシステムです。 この自動運転レベル3は、2021年に世界で初めてホンダが「レジェンド」に搭載して量産したという実績があります。そんなホンダがCESで発表した次世代BEVシリーズ「Honda 0(ゼロ)」にはアイズオフ可能な自動運転レベル3相当の技術が搭載されることが発表されました。それでも当初は高速道路の渋滞に対応するレベル2相当から機能をスタートさせ、徐々にレベル3へとアップデートさせていくという慎重な姿勢を取っています。 >>ホンダゼロやテスラのロボタクシー、アフィーラワンを画像で見る レベル3車の市販実績のあるホンダでさえ、これが現状であることを思えば、運転免許のいらない完全自動運転(レベル5|システムが高速道路~一般道まですべての運転操作の責任を持つ)の実現にはまだまだ時間がかかると考えるのが妥当でしょう。 こう書くと、「いやいや、海外では無人タクシーが走行しているのだから完全自動運転は技術的には実現しているはず」という意見も出そうです。北米や中国の一部地域では“社会実験として”こうした自動運転車が走行しているのは事実で、じつは日本でもドライバーの操作が不要な自動運転車が実証実験レベルでは公道を走っています。 ただし、完全自動運転で走っているように見えるタクシーもスタンドアローンで動いてるわけではなく、ほぼすべてのケースにおいてシステムのエラーをリカバリーするべく遠隔監視されるなど、利用者が感じているほど“無人”ではなかったりするのが実情です。 また、現時点ではほとんどの場合において「高精度三次元マップ」(自動運転のベースとなるcm単位の精度の立体地図情報)と位置情報を組み合わせることが前提。高精度三次元マップデータのないところをカメラやLiDAR(ライダー|レーザー光で対象物の距離や形状を把握する自動運転の主力技術のひとつ)やミリ波レーダーを組み合わせた自動運転で“事故をまったく起こさずに”走らせるのはまだ不可能というのが、一般的な理解なのです。 (次のページではカメラ画像だけで可能? を解説) |あわせて読みたい| 【悲報】完全自動運転は当分の間、実現しそうにない高精度三次元マップや、LiDARやミリ波レーダーすら使わず、車体各部に配したカメラの画像データをAIで処理することにより、車両に搭載したセンサーとコンピュータによってFSD走行を実現するというテスラのアプローチは、自動運転の早期実現という視点ではスピード感はあるものの、技術面や安全面の視点ではかなり“大胆な”アプローチに映ります。 こうした件について筆者が自動運転関連の技術者と話をしていると、多くの技術者が「カメラだけを使うのは冗長性(多重のシステムでリスクを低減すること)に課題がある」と考えていることは事実です。 コンディションがよいシーンではカメラの画像処理だけの自動運転が可能でも、大雨や雪が降っている状態での冗長性を考えると、LiDARやミリ波レーダーといった悪天候に強いセンサーも併用して冗長性を確保すべきという意見は、現時点での技術レベルでいえば納得感があります。 雪が積もって真っ白な状況では路面と歩道を画像で見分けるのは難しく、カメラのレンズ部分に雪が付着すればシステムが正常に作動しなくなることは、誰にでも想像できるでしょう。 たとえば、2025年のCESでソニーホンダモビリティ(SHM)が発表した量産モデル「アフィーラワン」には独自のADAS(先進運転支援システム)としてアフィーラ インテリジェント ドライブが搭載されますが、カメラ、LiDAR、レーダー、超音波センサーなど40ものセンサーで周囲をセンシングするとアナウンスされています。 アフィーラワンは車内でエンターテインメントを楽しむことを期待するユーザーも多いはずで、アイズオフが可能になるレベル3以上の自動運転テクノロジーの搭載が期待されます。それでもレベル5に相当するような完全自動運転ではなく、あくまで「高性能なADAS」の延長線上の機能に留まるでしょう。 >>ホンダゼロやテスラのロボタクシー、アフィーラワンを画像で見る 冗長性の確保は自動運転レベルに関わらず重要です。アフィーラに40もの多様なセンサーが必要であるとするならば、完全自動運転の実現と普及には、まだまだ越えなければならないハードルが多くあることを示していると理解したほうが良さそうです。 (終わり) |あわせて読みたい| |
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