マツダ×スバルが再生カーボンでタッグを組んだ1月14日から1月19日まで、スバルの恵比寿ショールームにで「SUBARU×MAZDA スーパー耐久シリーズ参戦車両合同展示」が行われ、14日にはトークショーが行われた。 当日展示されたのは、スバルの「チームSDAエンジニアリング BRZ CNF コンセプト(以下、BRZ CNFコンセプト)」と「ハイパフォーマンス X フューチャー コンセプト(以下、ハイパフォーマンスX)」、マツダの「マツダ3 バイオ コンセプト」で、ともにスーパー耐久シリーズ(S耐)を戦うマシン。恵比寿ショールームにスバル車以外のクルマが展示されたのは初めてとのことだそうだ。 今回なぜ、このような展示が行われたかというと、両社の車両にスバル航空宇宙部門の“再生カーボン”が使われているから。 S耐には、スーパー耐久機構が認めた開発車両で争われる「ST-Q」というクラスがあり、トヨタ、スバル、マツダに加え、ホンダや日産もカーボンニュートラル燃料(CNF)などの次世代技術を鍛えているのだが、その中でメーカーの垣根を越え様々な課題をざっくばらんにディスカッションする「S耐ワイガヤクラブ」という取り組みが存在する。 「共挑」をスローガンに掲げるS耐ワイガヤクラブだが、今回の取り組みは(ざっくり言うと)、S耐ワイガヤクラブの話し合いの中で、スバルが「航空宇宙部門が再生カーボンの研究をやっているんだが誰か乗らないか?」と声をかけたところ、マツダが「お願いします!」と手を挙げて実現したというのが発端だ。 ◎あわせて読みたい: CO2排出量が激減&何度もリサイクル可能スバルの航空宇宙部門は、ボーイング「787」などの中央翼を製造しており、機体製造で生まれたカーボン(CFRP)の端材を活用した再生カーボンの開発に取り組んでいた。 宇都宮の工場を視察した際のエピソードを聞かれ、前田育男氏(マツダ・スピリット・レーシング代表)が「ゴミ箱を見て驚いた。素晴らしいゴミが山のようにあった」と言えば、本井雅人氏(チームSDAエンジニアリング代表)も「ドラム缶の中が宝の山に見えた」と語るほどカーボンの端材(と言っても航空機の端材なのでかなり大きい)が眠っていたそうだ。“ゴミ(=お宝)”の量はおよそ10~30トン/年にもなるという。 航空宇宙部門では、大きい廃材は樹脂を一度焼き剥がし「再生炭素繊維(リサイクルカーボン)」を作成、それを再度積層・樹脂含浸・硬化させ、カーボンパーツを制作する技術を確立。細かな端材は、小さなカーボンの繊維を取り出し、一方向に繊維をそろえた「スライバー」と呼ばれるものを作り、それを再度織り合わせることでカーボンパーツを作成するという。 従来、カーボンパーツは2000~3000度という高温で焼くため多くのCO2を排出していたが、再生カーボンは、樹脂を焼き剥がすのにそこまで高い温度が必要ないため、CO2排出量を1/6~1/10に削減することができるそうだ。しかもこの再生カーボンの強度はオリジナルと変わらず、何度でも再利用ができるという。 航空宇宙カンパニーの関根尚之氏は「ゴミが廃棄物として捨てられていたのをゼロにしたい。樹脂を焼き飛ばすだけでなく、薬品などを使用して取り除きさらにCO2を削減する方法も検討している」と意気込み、今後は自動車以外での再生カーボンの活用も目指しているそうだ。 ◎あわせて読みたい: リサイクルが生んだアップサイクル2024年シーズンは、BRZ CNFコンセプトのボンネットやハイパフォーマンスXのリアウイング、マツダ3 バイオ コンセプトのボンネットなどを使用してさまざまなテストを繰り返したという。 マツダ3 バイオ コンセプトは、「CX-5」などに搭載される2.2Lのディーゼルエンジンを搭載しており「かなりフロントが重たい(前田氏)」状態。再生カーボンの使用で、市販車の鉄製より14kg弱も軽量化につながり、耐久性もレースにおいて全く問題ないことが確認できたという。 ちなみに2024年最終戦富士では、ほんの僅差でマツダ3 バイオ コンセプトがハイパフォーマンスXを下す結果に。元々ST-Qクラスは賞典外だが、そこはやはり技術者同士。スバル陣営は相当悔しい思いをしたらしく、結果的にスバルの航空機部門がマツダをアシストした(してしまった?)というオチまである。 前田氏は「去年はボンネットだけだったが、今年はもう少しほかのパーツにも展開していきたい」と述べ更なる戦闘力アップを計画中。 本井氏も「今年は3、4カ所、使用箇所を増やしていきたい。さらに材料置換だけでなく、航空宇宙部門ならではの数値解析なども含めてさらにパワーアップし、今年こそマツダさんに負けないように」と話すなど両者の協力関係(とライバル意識)はますます高まるばかり。 S耐への挑戦が、カーボンニュートラル社会実現への技術開発だけでなく、交わることのなかった社内の連携も生み出し、さらに他社とのコラボレーションまで発展する。共挑というアップサイクルは、今年もさらに様々な形に発展していきそうだ。2025年のS耐は3月22日~23日のモビリティリゾートもてぎでの第1戦を皮切りに、全7戦を予定している。 (終わり) ◎あわせて読みたい: |
GMT+9, 2025-4-22 03:13 , Processed in 0.055848 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .