バンディッドの顔がアルファードっぽい感じにスズキ「ソリオ」のマイナーチェンジが(一部で)論議を呼んでいる。特に「バンディット」のほうの「ちょっと(トヨタ)アルファードっぽい感じになったフロントマスク」は正直どうなのか? という論議である。 もちろん、今回のマイナーチェンジではフロントマスク以外でも、1.2Lエンジンが直列4気筒から直列3気筒に変更されたり、パーキングブレーキが足踏み式から電動式(ブレーキホールド機能付き)に変わっていたりもする。 しかしそのあたりは正統派のモータージャーナリスト各位に任せるとして、ここではあくまでも「顔」に特化しながら、今回のマイナーチェンジの是非を考えたい。 まず標準モデルである「ソリオ」だが、こちらもフロントマスクのデザインが変更されてはいるが、バンディットのアルファード化(?)と比べるならば軽微な変更でしかない。 具体的には、プレスリリースによれば「フロントグリルのメッキの配置を横方向に広げることで、伸びやかで堂々としたデザインに進化させました」という変更なわけだが、「言われなければわからないぐらい」と言うこともできる。 もちろん従来型と見比べると、ゴージャス感がけっこう強調されたことがわかるため、「らしくねえなぁ……」と鼻白む部分はある。だが比較的軽微な変更でしかないゆえに、筆者からのコメントは特にない。そのうちすぐに見慣れてしまい、変わったことすら忘れるだろう。 >>マイチェンで顔が変わったスズキ「ソリオ」のフォトギャラリーはこちら |あわせて読みたい| 大衆車を豪華にする必要があったのか?問題は「バンディットのアルファード化」である。 従来型バンディットのフロントマスクは「……できることなら押して、押して、押し出していきたい!」という人間の本能のような部分と、「とはいえ品格を備えた、和の心も尊ぶ自分でありたい」という相反する想いがせめぎ合うポイントへ見事に着地させた、いいとこ取りのファインプレーだった。 だが、今回生まれ変わった後期型は、あからさまな押し出し系である。 「……アルファードとか“メルセデス・ベンツGクラス”みたいな車ならさておき、ソリオクラスの車で押し出して、いったい何がしたいんだ?」という根本的な疑問はあるが、とにかく新しいソリオ バンディットは顔面の半分以上が、先代アルファードとトヨタ「ランドクルーザー プラド」のフロントグリルを足して10で割ったみたいな意匠のグリルで覆われることになった。 この事実に対して筆者個人は「うぐぐ……」と思うわけだが、もちろんそれは筆者という平凡な一個人の主観でしかない。この問題を考えるうえで重要なのは「スズキがそれを選択した」ということだ。 スズキという自動車メーカーとその販売店は、少々野暮ったい感じのたたずまいであり、他メーカーの店舗と比べれば小規模でもあり、そこで売られている車も「安価な大衆車」がほとんどだ。 そして中興の祖である故・鈴木修会長自身が自らのことを「俺は中小企業のおやじ」などと称していたことから、世間からはいささか軽く見られているきらいがある。 >>マイチェンで顔が変わったスズキ「ソリオ」のフォトギャラリーはこちら |あわせて読みたい| スズキが売れると判断したデザインなのであるだがスズキに騙されてはいけない。 スズキは、インドをはじめとする各国で大活躍しているグローバル企業であり、2024年3月期決算では売上高が5兆円を超え、営業利益も過去最高を記録した。ちなみにその利益率の高さはトヨタ以上だ。 それゆえ、そんなスズキが「民意」を汲み取ったうえで採用したデザインは、セールス面で成功する蓋然(がいぜん)性がきわめて高いと考えるべきだろう。 筆者のような単なる車好きは「好き嫌い」で車のことを考えるが、グローバルで成功している自動車メーカーは――もちろんロマンチシズムが皆無なわけではないだろうが――、モノが売れないことには話が始まらないため、好き嫌いを超えた「売れる売れない」で物事を判断する。 で、やり手であるスズキが「このほうがより売れる」と判断した結果があのフロントマスクであるならば、おそらくはアレが「ビジネス上の正解」なのだ。筆者個人としてはまったくもって気に入らない“正解”だが、スズキには自社の車を自由にデザインする権利があり、筆者には「自分が気に入らないモノは買わない」という自由がある。それでいいのだと思う。 とはいえ、同時にスズキは「試してみたけど、やっぱりダメでした」となったプロダクトはさっさと引っ込める、柔軟性と機動性を持ち合わせた企業でもある。それゆえ今回のバンディットも今後、「試してみたけどイマイチでした。また元のテイストに戻しますねー」となる可能性はある。 しかし「結局はオラついたデザインの車のほうが売れる」という世の中の現状から推測する限りでは、やはりマイナーチェンジ版ソリオ バンディットは、なんだかんだでけっこういいセールスを記録する可能性のほうが高いだろう。うぐぐ。 <おわり> >>マイチェンで顔が変わったスズキ「ソリオ」のフォトギャラリーはこちら 写真:スズキ/編集部 |あわせて読みたい| |
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