日本メーカーの北米販売は大幅減になる可能性もトランプ政権が発表した“相互関税”(4月10日時点では90日停止中)が世界中に波紋を広げています。現時点では、具体的な影響は出ていないはずですが、だからこそどこまで悪影響が広がるのかが読み切れず、不安が不安を呼ぶことで株価下落などの経済の失速につながっているという状況です。 相互関税のほか、自動車(乗用車)については一律25%の追加関税が発効されました。これにより従来の関税(2.5%)と合わせて、アメリカへの輸出には27.5%もの関税がかかることになりました。 トランプ大統領は「輸入車は関税分を価格に転嫁すればよい、そうすれば国産(アメリカ製)の自動車が売れることになる」といった旨の発言もしているようですが、いずれにしてもアメリカに自動車を輸出している自動車メーカーにとってマイナスなのは確実です。関税分を価格に転嫁しなければ利益は減り、単純に25%の価格アップをすれば販売台数が減るであろうことは明らかだからです。 日本自動車工業会の発表によりますと、2024年に日本からの対米輸出は約137万台となっています。じつは、この実績についても前年比7.9%減と大幅に減っているのですが、トランプ関税によってさらに輸出が減るようであれば日本の自動車産業にとって大打撃となってしまうことはいうまでもないでしょう。 すでに自工会の片山正則会長(いすゞ)は日本政府に対して強い危機感を表明するなど、関税対応についてアクションを起こすよう要望していますが、日本の自動車産業を守るために政府ができることは関税の撤廃をアメリカに訴えることだけでしょうか? >>ADASってどんな機能? 解説画像をチェックする |あわせて読みたい| 北米の販売減は、日本国内の販売増で埋めればいい筆者は、まったく逆の発想もあると思っています。それは日本国内の自動車市場の拡大を促すような政策です。 前述したように日本からアメリカに輸出されている自動車は137万台です。追加関税による価格上昇(25%程度)を考慮すると、販売台数的には少なくとも1割減となることが予想されています。台数に直すと13.7万台です。 アメリカ市場における日系ブランドのシェアがこの規模でシュリンクしてしまうことのマイナス面は無視できませんが、ここでは目先の売上(販売台数)を維持するための方法を考えてみたいと思います。 日本の自動車マーケットは縮小傾向にあるといっても、まだまだ大きな市場です。2024年は認証不正による出荷停止などの影響もあって前年比7.5%減となりましたが、それでも442万台。じつはコロナ禍以前は500万台の規模でした。つまり、内需については50万台規模の拡大余地があるといえます。 仮に対米輸出が20万台減ったとしても、それ以上の需要を日本国内で生み出すことができ、その大半を日本製の自動車が占めるようなことになれば、対米輸出の穴を埋めるのに十分なポテンシャルがあるといえます。 もちろん、「日本の自動車メーカーが苦しいので、日本の皆さんは新車を買いましょう!」と言ったところで売れるはずはありません。そこで政府に期待したいのは、“日本車が売れるような補助金”の新設です。 >>ADASってどんな機能? 解説画像をチェックする |あわせて読みたい| ADAS補助金で新車販売と交通事故削減を狙えBEVには「CEV補助金」があり、日本の自動車メーカーが有利になる設定となっています。すでに2025年度の補助金は決定していますので、ここで増額するというのは不自然でしょう。 そこで、最近は購入検討者が真っ先に注目するスペックとなっている「先進運転支援システム(ADAS|読みはエーダス)」搭載車を対象とした、手厚い「ADAS補助金を新設することを提案したいと思います。 >>ADASってどんな機能? 解説画像をチェックする 高齢者の交通事故は社会問題となっていますが、ADASの普及は高齢者の安全運転支援にも高い効果が見込めます。ドライバーが意識を喪失したときに自動的かつ安全にクルマを停止させる機能も、一部のモデルは実用化されています。 最近は交差点の右左折時に歩行者を検知して衝突被害軽減ブレーキ(AEBS)を作動させるような機能は常識になりつつあります。急速に広まりつつある全車速型ACC(アダプティブクルーズコントロール)が当たり前になれば、高速道路での追突事故も減るでしょう。 こうした先進機能は国産メーカーのお家芸ともいえます。国が認定するフルスペックの先進運転支援システム搭載車に乗り換える際の「ADAS補助金」を新設すれば、交通事故をさらに減らすことが可能になります。こうしてADASを標準装備した新車への買い替えが進めば、新車販売が増えれば、一石二鳥の経済対策となるはずです。 もちろん、補助金を新設するには財源が必要です。そこで注目したいのは「輸出に伴う消費税の還付」です。輸出に伴う消費税の還付金は2兆円規模となっています。対米輸出が減れば、還付される消費税も減りますから、それを財源とすることで可能ではないでしょうか。※消費税の還付|輸出した場合、国内での売り上げが発生しないので、仕入れや経費で支払った消費税が還付される。 トランプ関税というピンチをチャンスに変えて、日本の自動車マーケットを500万台規模に復活させるという内需拡大政策を期待したいと思うのです。 (終わり) (写真:アフロ、日産、ホンダ、スバル) |あわせて読みたい| |
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