「クラウンエステート」に一般道で試乗実車に触れて乗って、期待以上に好印象。それがクラウンシリーズの最後のピースを埋める「クラウンエステート」の偽らざる感想です。クラウンエステートのなにがいいか? それは2つ。「実用性」と「グランドツアラーとしてのポテンシャルの高さ」に尽きるでしょう。 実用性はとにもかくにもラゲッジスペースの広さ。ステーションワゴンボディならではの床(荷室)の広さがまず素晴らしい! 昨今、ステーションワゴンはどんどん姿を消しているものの、床の広さは純粋なSUVとは異なるワゴン式パッケージングならでは特徴と言っていいでしょう。同じセグメントの一般的なSUVと比べると、ステーションワゴンは床の奥行(後席使用時の床の前後長はクラウンエステートで1070mm)が広く、たくさん荷物を積めるのがいい。 たしかに奥行きの数字だけを見ればクラウンエステートも(一般的なSUVより広いものの)同クラスのセダンと同等ですが、床が広いうえにセダンよりも荷室高があるのはやっぱりステーションワゴンの魅力。“床の奥行き”と“高さ”の相乗効果で、ワゴンの荷室は広くて便利というわけです。 そのうえで、クラウンエステートはそこらのワゴンよりもさらに実用的。後席の背もたれ部分に可動式のボードが組み込まれていて、後席を倒した際、前席背もたれと荷室床部分にできる“溝”を埋められるというアイデアが組み込まれているのです。 おかげで後席を倒した際は、奥行き2mのフラットな床が出現。ステーションワゴンのなかでも、ここまでデキるクルマはなかなかありません。荷物をたくさん積むことができるし、(このクルマでそれをやる人は少ないかもしれないけれど)車中泊にも最適。クラウンエステートは、なんと実用的なのでしょう。 >>【こんなに広い!】「クラウンエステート」の荷室を写真でチェックする ◎あわせて読みたい: グランドツアラーとしての高いポテンシャルそもそも、クラウンエステートとはかつてクラウンのワゴンモデルにつけられていた名称。新型では純粋なステーションワゴンではなくクロスオーバーSUVワゴンに“キャラ変”したとはいえ、たくさん荷物を積めるという神髄は不変というわけです。 ちなみに開発者によると、純粋なステーションワゴンとしなかったのは「今の時代にも受け入れられるワゴンにしたかった」からなのだとか。 また、このエステートが存在するから「クラウンスポーツ」は後席と荷室のスペースに“妥協する”ことで“妥協のない走り”を手に入れたと考えれば、現行クラウンが“シリーズ”で構成されることで「平均点を狙う」のではなく「それぞれ尖ったキャラで個性を高める」ことが実現していることがよくわかります。 そんなクラウンエステートのもうひとつの特徴が「グランドツアラーとしての親和性」です。クラウンエステートは単に便利なクルマというだけでなく、走りの仕上がりもレベルが高い。 でもその走りとは「ハンドリングが鋭くてスポーティに走ると気持ちいい」というのではなく、長距離を走って疲れないとか、移動時間を快適に過ごせるといった方向。 もちろん最新のトヨタ車だけに、曲がりくねった峠道を走っても素直な挙動や不安な動きを見せない芯のある走りは備えたうえで、たとえばクラウンスポーツほどキビキビと曲がるのではなく、落ち着きと安定感が重視された、まさにロングツーリング向けの味付けなのです。 大人4人がゆったり座って、たくさんの荷物を積んで、粛々とロングドライブをこなす。そんなクラウンエステートは、まさにグランドツアラーとしてのポテンシャルに満ち溢れたクルマというわけです。 >>【こんなに広い!】「クラウンエステート」の荷室を写真でチェックする ◎あわせて読みたい: 同じシステムでも「エステート」は出力が違うちなみにクラウンエステートのプラットフォームは「クラウンクロスオーバー」や「クラウンスポーツ」と共通。ホイールベース(2850mmでスポーツよりは長くクロスオーバーとは共通)からいえば、フロアも含めた設計はクラウンクロスオーバーのワゴン版と言っていいでしょう(実はレクサス「RX」とも同じ)。 ただ、パワートレインが異なり、「燃費型ハイブリッド(2モーターのシリーズ/パラレル式)」である2.5Lハイブリッドシステムと、「パワー&ドライバビリティ重視型のハイブリッド(1モーターのパラレル式)」である2.4Lターボ デュアルブーストハイブリッドシステムの2タイプを設定するクラウンクロスオーバーに対して、クラウンエステートは「燃費型ハイブリッド」と「プラグインハイブリッド」の2タイプ。パワー型ハイブリッドに代わりプラグインが追加されているというわけです。 ただ注目は、同じ2モーター式(後輪をモーターで駆動する4WDなので後輪用を含めると計3つのモーターを搭載する)の「燃費型ハイブリッド」でも、ほかのモデルとは違う部分があること。 それはフロントモーターの出力で、他の燃費型ハイブリッド(クロスオーバーとスポーツ)が88kWなのに対し、エステートだけは134kWまで大幅に拡大。なんと約1.5倍です! これはプラグインハイブリッドモデルと同じスペックであり、開発者によると「エステートでは多人数乗車でたくさんの荷物を積んだ状況を考えて」とのこと。 個人的には追ってマイナーチェンジのタイミングなどで他のモデルにも波及しそうな気がするのですが、どうでしょうかね? ちなみにパワートレインによる走りの違いはしっかりあって、筆者はプラグインハイブリッドのほうが好印象。エンジンが掛かる頻度が少なく、それは快適性が高いというだけでなく運転していても滑らかさというか、エンジンの雑味に邪魔されない“澄んだ感覚”を味わえるからです。 筆者はどちらかというとエンジンの鼓動や音が大好きですが、それは気持ちのいいエンジンを積んでいるクルマの話。効率重視でエモーショナル感の薄いハイブリッドの場合は、エンジンが掛からずモーターだけで走るほうが気持ちいいということを改めて感じました。 >>【こんなに広い!】「クラウンエステート」の荷室を写真でチェックする ◎あわせて読みたい: ワゴン×SUVの意外な特徴とはところで、ラージボディのクロスオーバーSUVワゴンといえば日本には以前からあのモデルが存在しましたよね。そうスバル「レガシィアウトバック」です(すでに日本向けの生産を終了し「在庫販売のみ」となってしまいましたが……)。 そんなレガシィアウトバックとクラウンクロスオーバーの共通項は、広くて快適なキャビンスペースと、広くて実用的なラゲッジスペースを兼ね備えていること。パッケージングは割と近いです。 でもしかし、両車に触れて思うのは、見ている方向がかなり違うということ。 アウトバックは野性味があって、本格オフロードではないにせよ悪路走行も考えている。スタイルだって無塗装の樹脂部品が多く使われワイルドな仕立てだし、メカニズムは前後を機械式につなげる4WDにこだわり、電子制御の悪路走行モードも備えています。 いっぽうクラウンエステートは、あくまで都会派ワゴンの延長。オフロード走行は考えておらず、スタイリングだって都会的です。 もしかすると「そんな“SUV風ワゴン”になんて意味がない」と思う人もいるかもしれません。しかし、それは間違い。普通のステーションワゴンに比べてしっかりベネフィットがあるのです。それは乗り降りがしやすいこと。 ちょっとだけリフトアップしたことによる、高すぎず低すぎずの着座位置が絶妙で、ちょうどいい。これがクラウンエステートにおける、普通のワゴンじゃないことの最大の美点かもしれないと筆者は思ったりしたのでした。 (終わり) >>【こんなに広い!】「クラウンエステート」の荷室を写真でチェックする ◎あわせて読みたい: |
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