初期モデルのオーナーライター、興奮で寝付けず?「商品改良を受けて進化したCX-60に乗りに来てください!」 マツダからそんなお誘いを受けて、めちゃめちゃ楽しみにメディア向け試乗会へ向かったのは何を隠そうワタクシ自動車ライター工藤貴宏です。前日の夜なんて、遠足の前の日の小学生なみに興奮で寝付けなかったくらいですから(やや誇張あり)。 どうしてそこまで楽しみにしていたかというと、自身がCX-60オーナーだから。しかも愛車はド初期モデル。だからCX-60の進化は子供の成長を見守る親のような気分。そんなわけで、期待と不安の入り混じるなんとも微妙な心境(よくなって欲しい反面、従来モデルオーナーとしては残念でもある複雑な気持ち)で新型CX-60を乗りに出かけたのでした。 結論からいえば「最初からこのくらいの乗り味にしておけば、乗り心地もここまで話題にならなかっただろうに」というのが最新CX-60の正直な印象。まあ、初期型オーナーとしてはちょっと穏やかな心境ではないこともないけれど、それはそれでクルマのブラッシュアップは歓迎すべきですからね。 さっそく進化ポイントを紹介……の前にまずは、CX-60にあまり詳しくない人のためにCX-60の”いいところ”と“よくないところ”をおさらいしておきましょうか。 >>この記事のフォトギャラリーはこちら \あわせて読みたい/ 「これはいい!」と思えるポイントは5つまずは「インテリアのしつらえ」。グレードでいうと「Lパッケージ」以上のインテリアはシート表皮からダッシュボードやドアのトリム、そして加飾やスイッチの精緻さなどまで、まるでプレミアムブランドかと思うような贅沢な作り込みに誰もが驚き、オーナーとしても満足度はとても高いものです。 2つめは、いまや希少な6気筒エンジンの心地よさを味わえるという魅力。パワートレインは直列4気筒ガソリンや、それに大型モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドもあるけれど、個人的なオススメは全車6気筒となるディーゼルエンジン。いまや6気筒エンジンを選べるというだけで希少だし、しっかりその心地よさを楽しめるのだからうれしいですよね。 ちなみに6気筒エンジンを搭載するSUVは、国産だとCX-60と兄貴分の「CX-80」のほかはトヨタ「ランドクルーザー300」くらいです。 3つめは後輪駆動(&後輪駆動ベースの4WD)の運転感覚とハンドリングのスポーティ感。ボクのような運転好きのドライバーにはたまらないんですよ。峠道を、SUVとは思えないような俊敏性で曲がっていく、運転を楽しむ人のためのSUVといっていいでしょう。 いっぽうで、ディーゼルエンジンの燃費の良さも凄いです。3.3Lという大排気量だから「燃費がよろしくないのでは」と思われがちだけれど、実はこの大排気量は燃費のため(高効率と余裕で燃費をよくする作戦)。高速道路を制限速度で走れば、20km/Lを超えることだって珍しくないのだから。これが4つめですね。 そして5つめはコストパフォーマンスのよさ。確かに絶対価格としては安いクルマではないけれど、このボディサイズで、このインテリアの作り込みで、6気筒エンジンを積んで装備も充実……と考えればコストパフォーマンスは高いのですよ。もし輸入車なら間違いなく1000万円級の内容といっていいでしょう。 >>この記事のフォトギャラリーはこちら \あわせて読みたい/ 「あまりよくない」ポイントは2つそんなCX-60だけど、もちろん褒めるべきポイントばかりではないです。「よくないところ」だってあり、オーナーとして思うのは2つ。 まずは車体。理解したうえで買ってはいるけれど、車体はやっぱり大きくて駐車場などは気を遣います。その割に後席が広いかといえばそうでもないのも、知っておいたほうがいかもですね(後席の広さを求めるならCX-80がオススメ)。 それから、世間で言われている乗り心地に関して。“とってもコンフォート”とは言えないのもまた事実。これに関してはマツダも相当気にしているようで、そこを改善しようというのも今回の商品改良の目的のひとつというわけです。 ちなみにCX-60は今回の改良以前にも、2023年8月にプレスリリースも出なかったほどひっそりと商品改良が行われ、リヤダンパーやスタビライザーなどサスペンションがブラッシュアップされています。今回はさらに広範囲にサスペンションをいじったとのこと。 どのくらい広範囲か? フロントはショックアブソーバーの減衰力の伸び側を2割程度アップしたほか、ナックルの締結ポイントを変更。つまりジオメトリー(サスペンションの動き方)も変化しているということになります。 リアはスプリングを(車両重量に合わせて数タイプあるスプリングの平均で)2割ほど柔らかくしたいっぽうで、ダンパーの伸び側の減衰力はフロント同様にアップ。ストロークしやすい足としました。あわせてバンプストッパーやクロスメンバーブッシュの特性も変更しているそうです。 そして驚いたのがスタビライザー。これまでガソリン車を除く4WDモデルに装着されていたリヤスタビライザーが、なんと2025年モデルでは全車取り外されているのです。そこまで変えたの?と驚かずにはいられませんよねぇ。 >>この記事のフォトギャラリーはこちら \あわせて読みたい/ で、今回の改良で乗り心地はよくなったのか?そんな内容をリストアップするだけで、今回のサスペンションのブラッシュアップは「小変更」という範疇ではなく、大きく仕立て直したといっていいレベル。ちなみにスタビライザーを外した理由は、単にサスペンションを柔らかくするためといった単純なものではなく「スタビライザーによって制約を受けていたサスペンションの動きを最適化し、車体の挙動をよりしっかりコントロールするため」なのだとか。 それらハード面の変更に最適化すべく、電動パワーステアリング、KPC、スタビリティーコントロール、そして4WDの制御も見直されています。 とはいえ、問題は乗り味や乗り心地が変化したか、ということ。変わらなければ、どれだけ変更しても意味ないですから。 もちろん変化を実感しましたよ。その変化の方向は「これまではコーナリングの楽しさなどがストイック過ぎたのを、より幅広い人に受け入れられるように」というマツダの説明が言い得て妙。“大幅に”とまではいかないけれど、乗り心地がよくなったのは感じられました。 >>この記事のフォトギャラリーはこちら \あわせて読みたい/ ディーゼルマイルドハイブリッドがもっとも大きく変化また、今回試乗した「ディーゼルマイルドハイブリッド4WD」「ディーゼル4WD」、そして「ディーゼル2WD」の3タイプでは、今回の改良における乗り心地の“変化度合い”に違いがあるのも面白いところ。筆者は(この3タイプの中ではこれまでもっとも乗り心地がストイックだった)ディーゼルマイルドハイブリッドがもっとも変化が大きく、次いでディーゼル4WD、あまり変化がなかったのはディーゼル2WDと感じました。 ただ、絶対的な乗り心地でいえば、もっとも快適なのはディーゼル2WDで、続いてディーゼル4WD、そしてディーゼルマイルドハイブリッドと“進化幅の大きさ”とは逆の順番。 従来モデルは結構な差があったディーゼル2WDとディーゼルマイルドハイブリッドの違いは、新型のディーゼルマイルドハイブリッドの変化が大きかったことで差が縮まったという印象なのです。ディーゼルマイルドハイブリッドに関しては、乗り心地は明確に違いますねぇ。 よくよく考えてみれば、ディーゼル2WDはもともとリヤスタビライザーなし。従来はリヤスタビ付きだったディーゼル4WDとディーゼルマイルドハイブリッドは、リヤスタビライザーを外したことでディーゼル2WDの乗り味に近づいたと解釈すれば納得です。 初期モデルに比べると、乗り心地……具体的に言えば路面から大きい入力があったときの衝撃の大きさと、高速で車体の上下動の収束が悪い挙動もずいぶん改善されました。特にディーゼルマイルドハイブリッドで(ディーゼル2WDはもともとそのあたりが抑えめだった)。 >>この記事のフォトギャラリーはこちら \あわせて読みたい/ CX-60に興味があって運転好きなら、ぜひ実際に試乗を!ただ、そうはいっても新しいCX-60の乗り味が劇的に改善されて極上というわけではありません(オーナーだからこそ愛を込めてそう断言します!)。世間には国産でも、もっと乗り心地のいいSUVも存在しますからね。 だけどだけど、もし運転好きなら、CX-60の運転の楽しさを知れば許容できる範囲になったと筆者が感じたのもまた事実。ゆえに冒頭の「最初からこのくらいの乗り味にしておけば」なのです。世の中にはもっと乗り心地の悪いクルマだってありますからね。 オーナーとして言いたいのは、CX-60に興味のある人はネットなどの情報(この記事も含めて!笑)だけを鵜呑みにせず、ぜひ実際に試乗して、自分の感覚で判断して欲しいということ。「百聞は一見にしかず」なんていう言葉がありますが、クルマは「百聞は一乗にしかず」なんですから。 ところで最新CX-60はグレードの見直しも行われました。たとえばディーゼルエンジンを搭載するベーシックグレード「XD(クロスディー)」が消え、その代わりに登場したのは「XD SP」というディーゼルエンジン搭載の新たなグレード。 電動テールゲートなどを装備せず価格は控えめとしつつ、見た目はハニカム形状のフロントグリルやブラックアルミホイールを組み合わせた20インチタイヤなどでスポーティにコーディネートされています。「リーズナブルにカッコいいCX-60を!」という人には最適ですね。 また、特別仕様車として「XD-HYBRID Trekker(クロスディーハイブリッドトレッカー)」も加わりました。こちらはマイルドハイブリッドのディーゼルで、このモデルだけの専用カラー「ジルコンサンドメタリック」が用意されるほか、高く積み上げた荷物の荷崩れを防ぐパーティションネットなどを装備。そして、同じマイルドハイブリッドながら走行中のアイドリングストップからの復帰方法が異なるのも興味深いところ。 駆動用モーターではなくセルモーターを使うことで、バッテリーの電気を余すところなく駆動に使えるためモーター走行距離が増え、燃費が向上するのだそうです。実は、この特別仕様車はカタログの燃費数値もほかのグレードよりいいんですよ。 (終わり) >>この記事のフォトギャラリーはこちら \あわせて読みたい/ |
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