タフギアもスタイリッシュ系がトレンド?かつては10年連続でSUV販売台数ナンバー1を誇ったエクストレイル。2011年にその座を譲ったのは身内でクラスも下のジュークだったので納得もいっただろうが、2012年と2013年は同クラスのマツダCX-5が君臨。さらにスバル・フォレスターや三菱アウトランダーといったライバル達にも押され気味とあって今回のモデルチェンジにかける意気込みは並々ならぬものがあるだろう。今年のSUV販売台数ナンバー1はホンダ・ヴェゼルが持っていきそうな勢いだが、同クラスではトップに立ちたいはずだ。 だが、直線基調でボクシーな、いかにもアウトドア派といったこれまでの雰囲気から、今風で都会も似合う流麗なスタイルにキャラチェンジしたように見えるから先行きを読むのは難しい。従来までの武骨さ、道具感が良かったという人は少なくないからだ。日本国内だけで考えればアウトドア派として孤高の存在を維持するテもあっただろうが、欧州や中国といった市場ではCX-5に代表される流麗なクロスオーバー系が伸びており、あまり得策ではないようだ。 また、日本も含めエクストレイルがターゲットとしている若者世代のユーザーの意識は以前とは違ってきていて、タフギア的なモノにも武骨さよりもスタイリッシュさを求める傾向が強くなっていると日産は分析。スポーツウォッチに例えれば、昔のG-SHOCKはゴツければゴツいほどウケが良かったが今は違う。多機能だがデザインも質感も優れたSUNTOのようなモデルが狙い目といったところだろうか。 ホイールベース拡大で3列シート車も設定見た目はキャラチェンジしたが、タフギアとしての本質は継承しつつクロスオーバー系の領域まで踏み込んだというのが新型エクストレイルの立ち位置。オンデマンド式4WDながら後輪のトルクを司るクラッチを任意にコントロールするアクティブ式とし、高い悪路走破性を誇ってきたALL MODE4×4-iは継承。ロードクリアランスも従来とほぼ同等を確保している。日本向けは防水シートや防水フロアといったアウトドア派が喜ぶ装備を進化させたカタチで特別に用意し、カタログも雪道や山を駆け巡るイメージでまとめている。従来モデルが好きだったユーザーにも安心して乗り換えてもらえるよう配慮しているのだ。 それでいて一台の乗用車として見た場合、進化している点は多い。従来に比べると全長5mm、全幅30mmとボディサイズはわずかに拡大されているが、ホイールベースは75mmも延長されて居住性は大幅進化。後席はレッグルームが90mmも広がり7人乗りの設定も可能になった。インテリアの質感が劇的に向上したのもトピックスだろう。直線基調から滑らかな曲線構成へと変わっただけではなく、ピアノブラックのパネルやシルバー加飾が効果的に使われて見た目や触感も良くなった。 走らせてみても、インテリアの質感向上は実感できる。従来モデルは内装の建て付けが悪かったのか、カタカタ・ギシギシと室内がきしむのが気になったものだが、それが綺麗サッパリと消え失せている。エンジンルームの吸音材やリアホイールハウスのライナーなどで外部からのノイズ侵入も阻止され、快適な乗用車らしい静粛性を身につけているのだ。 シャシーに投入された2つの先進技術乗り味も随分と変わった。従来モデルはオフロードを走るのに適しているようなソフトタッチなもので、それはそれで案外と悪くなかったが、新型はクロスオーバー系らしくカッチリとしている。ダンパーがザックス製から韓国・MANDO製へ変わっているが、実力が落ちたとは思えない。低速域でコツコツとすることはあるが、これはオールシーズン・タイヤの表面の硬さだろう。 路面の荒れた舗装路を走っていくとフロアがプルプルする感覚があるものの、新型エクストレイル自慢のアクティブライドコントロールが乗り心地をフラットなものとしている。小さな凹凸はエンジンのトルクコントロールで、大きな凹凸はブレーキ制御まで加えてピッチングを補正しているのだ。 シャシー制御技術としてはアクティブトレースコントロールを採用したのも新しい。VDCをベースに、ラインが膨らみそうなときに内側のブレーキをかけてトレース性を上げるものだが、これが意外と効果的だった。普通に街中を走っているだけならあまりお世話にならないが、フロントタイヤからスキール音が鳴ってしまうかも、と推測するぐらいの速さでコーナーを曲がろうとするとスッとシステムが介入してググッと曲がり込み、スキール音も発生しない。ある程度、運転に自信がある人なら、速度や荷重を自らコントロールして同じ様にスムーズに走らせられると思うかもしれないが、どんなに上手くても4輪別々にブレーキをコントロールすることは出来ないので機械を上回るのは無理なはずだ。そうは言ってもシステム介入を体感すると余計なお世話だとちょっとイラっとすることもあるが、多くのアベレージドライバーにとってはありがたい装備ではあるだろう。 大幅向上した燃費&期待は1年後のHVモデルパワートレーンは今のところ2.0L NAエンジン+CVTのみ。従来エンジンに比べると圧縮比を高め直噴化したことで最高出力は10PS、最大トルクは7Nm増強。それでいて燃費は2WDで12.0km/Lから16.4km/Lへ、4WDで11.8km/Lから16.0km/Lへと向上している。ワイドレンジ化やフリクション低減などを果たしたCVTも燃費改善に10%ほど貢献しているという。 ミッドサイズSUVに2.0L NAではあまり余裕を望めないが、街中のパフォーマンスはまずまず。CVTがロー側も拡がっているので発進時の重たさなども感じない。CVTのいやなところと言えば強い加速を求めたときにエンジン回転数が先にあがって車速があとから付いてくる、いわゆる張り付き感だが、エクストレイルはアクセルを50%以上踏み込んだときには普通のATなどステップギアのように、2速、3速、4速とシフトアップしていくかのごとくエンジン回転が上下する。そのおかげで違和感のない加速が得られているのだ。2.0L NAだとアクセルを多めに踏み込む機会も多いが、イヤな気分にはならないだろう。 ただし、先代に比べれば進化しているとはいえ、もう少し低回転でのトルクが充実していて欲しいと思う場面もある、というのが正直なところ。高速道路での巡航ではCVTがグッとハイギアードになりエンジンは低回転を維持するが、その状態だとちょっとした加速要求でもギア比が変動して落ち着かない。街中でももう少しトルクに厚みがあれば軽快で思い通りの走りができるだろう。本当はディーゼルがあれば理想的だが、新型では廃止(従来型は併売。欧州では当面ユーロ5で販売)。現在の2.0L NAも、進化幅を考えれば従来とほぼ同等の価格なのでリーズナブルだが、さらなる高い満足度を得るには1年後に発売される予定のハイブリッドに期待するべきなのだろう。1モーター2クラッチ式のFF用ユニットが、フィーリング面も含めていい仕上がりになることを願いたい。 |
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