氷上で見えてくるPHEVの本質海外生活でもいい、スポーツにおけるハイレベルの真剣勝負でもいい。人間なにか厳しい場所に身を投じることによって初めて見えてくる本質ってものがある。 クルマも同じだ。普段生活している穏やかな場所とは違う、厳しい環境を走って初めてなにか分かってくることがある。ってなわけで行ってきましたよ、真冬の長野県女神湖! クルマ好きなら知るまさしく走りの限界が試される場所で、要するに真冬になると湖の表面が凍ってツルッツルになる(笑)。μ(摩擦係数)にしてコンマいくつ…ってレベルでマジなハナシ、ちょっとでも氷が溶けて表面に水が載ると、人間は普通に立ってすらいられなくなるわけで、そこでは普段見れないクルマの真実が出てしまうわけだ。 今回、試乗するのは事実上の現在最高のEVとも言うべき三菱アウトランダーPHEV! いわゆるプラグイン・ハイブリッドで、高性能リチウムイオン電池を12kWhとほぼピュアEV並みに搭載した新世代のハイテクエコカー。フル充電状態から約60kmまでほぼ完全にEVとして走れ、その後は搭載しているガソリンも使えば合計897km(JC08モード)もハイブリッドカーとして走れる驚異の二刀流。果たしてそれはある意味、二次元的宇宙空間のような女神湖氷上でどう走るのか。まさに地上ゼログラビティ(無重力)への挑戦なのだっ(笑)。 ドライブシャフトのない4WDという独自性さて、二刀流で航続距離の短さというEV最大の欠点を消せるアウトランダーPHEVだがユニークなのはそれだけじゃない。駆動システムは前代未聞のツインモーター4WD。前後それぞれ全く別個に搭載した82psのモーターによりフルタイム4WDとして走れる。つまり、ドライブシャフトで前後が連結したコンベンショナルな四輪駆動ではなく、前後2モーターのラジコンのようなもの。果たして氷上ではどのような動きを見せるのか? まずはアクセルを踏み、発進するが挙動はスムーズ至極。古典的な4WDの不自然な挙動や作動音はまるでない。それは恐らく4輪同士のタイヤの干渉がないからで、それぞれがパワーを素直に路面に伝えているのがわかる。 とはいえ今回氷上にミニコースを作り、ちょっとしたパイロンスラロームをやったがいくら優秀なツインモーター4WDでも、オーバースピードでコーナーに突っ込んだら滑りっ放し。思い通りに走れなくなる。 しかし、低速でゆっくり走ると驚くほど安定。ステアリング通りに素直に曲がる。特に三菱自慢の4輪電子制御のS-AWCを使うと、コーナー入り口での曲がりにくさを絶妙に解消。ちなみに私はメディア対抗で行ったタイムアタックで11位に留まった(笑)。 要するにこのクルマの凄さの本質とは、マジで使えるEVであること以上に、コイツは二輪駆動だとか、四輪駆動だという古典的な駆動方式バトルから離れられるところにある。さらにスペース的にもエネルギーロス的にもツインモーター式はエンジンを2つ搭載することより難しくないはずだ。 つまりアウトランダーPHEVが、氷上で見せた真実とは、クルマが古典的な運動性能の縛りから逃れる瞬間。今までは「4WDだからこう運転しろ」とか「FFだからアンダーが強い」とかそういう古臭い教えが存在したが、アウトランダーPHEVは無関係。タイヤ4つの限界まで加速できるし、止まれるし、曲がれる。そこのふるまいがやたら自然なのだ。まるで構えなくていい。 三菱は今後、SUV型PHEV路線を進む!ちなみにアウトランダーPHEVは去年、欧州で約1万2000台も売れたとか。特にオランダや北欧はバカ売れで、それは原理主義的にCO2排出に厳しい国だけに、1km走行当たりのCO2排出量が44gと計算されるこのクルマにかなりの補助金が出るからだが、決してそれだけでもない。繰り返すが、大人5人と荷物がたっぷり載り、ロング走行も可能なSUV型PHEVというのは、将来の電動自動車として最も現実的な解なのだ。 実は今、EV界で成功しているのは高額なテスラ・モデルSを除くとあまりない。最も台数の多い日産リーフはアメリカでは売れ始めてるようだが、日本では伸び悩んでるし、やはりフル充電状態から200km走れるか走れないかの性能には不安が残る。その点、アウトランダーPHEVはまるで欠点がなく、価格も300万円台からと激安だ。 そして日本のように原子力が危ぶまれると火力発電がほとんどになる国も多いが、アイスランドのように電力は自然エネルギー100%、地熱と水力ですべて賄っているというステキ過ぎる国もある。そういう国にとっては、アウトランダーPHEVはまさにリアル。ノドから手が出るほど欲しいクルマなのだ。 去年の東京モーターショーで明らかになったことだが、今後三菱はこの“SUV型PHEV”という路線でグイグイ進むという。将来、もっとでかいパジェロクラスはもちろんRVRクラスでも出るはずだ。 今後のエネルギー政策にもよるが、日本で電気自動車は伸びるか伸びないか良くわからない。だが、世界のどこかにはこのアウトランダーPHEVを始めとするSUV型PHEVを求める国が確実にある。将来「あの国はなんだか三菱ばっかりだったよ」というウワサ話がでるかもしれないのだ。それくらいポテンシャルを持つクルマなのであーる。 |
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