マカンのテクノロジーを徹底取材LAそして東京のモーターショーでほぼ同時に発表され、今年後半の日本上陸が予定されているポルシェ初のコンパクトSUV「マカン」。ポルシェは昨年末、世界中のメディアやジャーナリストをドイツ北部にあるADAC(ドイツ自動車連盟)のテスト施設に招いて、そこに採用されているテクノロジーについて詳解するテクニカルワークショップを開催した。 まず改めてプレゼンされたのは、マカンのポジショニング、市場投入の意味である。2004年のBMW X3のデビュー辺りから本格化したコンパクトSUV市場の拡大は目下さらに勢いを増していて、2018年には年間120万台規模にまで膨れ上がると予想されている。ここに投入されるマカンは、アウディQ5などに使われているVWグループの"MLB"と呼ばれるエンジン縦置きの基本アーキテクチャー、要は主要部分を活用して生み出された。生産はカイエンなどと同様にドイツ・ライプツィヒ工場。ポルシェはボディ組み立てや塗装工程などの設備拡張を行ない、量産に備えてきた。 VWグループのアーキテクチャーを使うという意味では、VWトゥアレグやアウディQ7とカイエンの関係と同様と言える。では、その走りはいかにポルシェらしく仕上がっているだろうか。すでにポルシェAGはドリフトしまくっているマカンの動画を公開している。その走りは、どんなテクノロジーによって実現されたのか、じっくり聞き込み、そして"味わって"きたので報告しよう。 アウディQ5と何が違うのか?マカンは確かにアウディQ5とシャシーの主要部分を共有している。しかしボディ外板には共通部分は無い。アルミ製のボンネットやリアゲート、樹脂製給油リッドなどの採用で軽量化に留意。空気抵抗を示すCd値は0.35~0.37ということだ。 一方、シャシーを見るとサスペンションアームなどは、ほとんどアウディ刻印のものとなっている。しかしマカンは4WDシステムにトルセンセンターデフではなく、電子制御式のPTM(ポルシェ・トラクション・マネージメント)を採用。18~21インチが用意されるタイヤをすべて前後異サイズとできたのは、トルク配分を前後輪の回転差に頼らない、このシステムのおかげである。 サスペンションもコイルスプリング仕様だけでなく、クラス初のエアスプリング仕様を設定している。ステアリングギア比は速められ、電子制御式デファレンシャルとブレーキ制御を組み合わせてトルクベクタリングを行なうPTV Plusも用意。カーボンセラミックブレーキのPCCBも選ぶことができる。 全3種類のエンジンのうち2種類のガソリンエンジンは、ポルシェ設計のツッフェンハウゼン工場製となる。マカンSが積むのは排気量3L、そしてマカン ターボが積むのは3.6Lの、ともにV型6気筒ツインターボユニット。前者が最高出力340ps/最大トルク460Nm、後者が400ps/550Nmを発生する。ともにサーキット走行にまで対応するインテグレーテッドドライサンプを採用している辺りは、いかにもポルシェらしい。トランスミッションは7速PDK。となると心配になった牽引能力は、何と2500kgまで対応するというからトルコンATの車両に劣るところは無い。 こうして見ると骨格以外はすべてQ5とは別物。そう言ってもいいのではないだろうか。そして実際、その印象は走りで証明されることとなった。 ポルシェの"味"は濃厚に今回のイベントはテクノロジーの詳解がメインテーマ。よってステアリングはまだ握らせてもらえなかったのだが、締め括りには同乗試乗が用意されていた。3台のうちマカン ターボのナビシートに乗り込み、ドライバー氏には全開でとお願いした。 動力性能は、期待通り"速い"。マカン ターボの最高速はクラストップの266km/h。マカンSでも254km/hに達する。排気音の小気味良い演出、そしてPDKの切れ味鋭い変速ぶりも相まって、実際の加速はもちろんフィーリング的にもスポーティさが際立っている。 しかし何より驚かされたのはフットワークだ。テストコースとは言え公道のように波打った路面でも乗り心地は快適で、しかも終始フラットな姿勢を崩さない。率直に言って特段軽いわけでも、また全高が低いわけでもないのに、安っぽい言い方ではあるが、まるでスポーツセダン感覚なのだ。 ナビシートから見ているだけでも伝わってきたのが、ステアリングの優れたレスポンス。微小舵角からリニアな反応にコーナーでは狙ったラインにスパッと乗せられ、右足の動きと連動させることですんなりとテールスライド状態に持ち込めるのには驚かされた。そのままドリフト状態で抜けるのも容易。十分以上のオフロード性能、牽引能力も含めた使い勝手を備えた上で、SUVとしては例外的なほどドライバーの意思に忠実な走りが実現されている。 正直に言えば、頭の中には「ま、中身はQ5だし」という思いが無いではなかったのだが、「エンジニアリング バイ ポルシェ」の意地、見せつけられたという感じである。期待は十分に煽られ、「早く自分でステアリングを握りたい」というじりじりとした気持ちにさせられてしまった。実際、そのチャンスは遠からず訪れそう。その時にはまたここで報告できると思うので、お楽しみに。 |
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