スタイリングは新しさに乏しいがSGPに不満はなし新型フォレスターは、キープコンセプトともいうが、ファンやユーザーなど、よほどフォレスターに関心がある人でなければ新旧の外観を見分けるのは難しいのではないか。そりゃよく見ればディテールは変わっているが、新型のスタイリングは新しさに乏しい。20年経って歴代フォレスターの写真を古い順番から並べていくことがあったら、このあたりが一番難しいと思う。 ただし、スバルに単なる美しさ、新しさを求める人は少ない。昔から「フォーム・フォローズ・ファンクション」という言葉があるように、機能が表れたカッコよさこそスバルが目指すカッコよさであり、ファンもそれを求めている。開発陣も「我々が提唱する0次安全(視界の良さや運転しやすいポジションを得やすいカタチ)や、このクラスのSUVに備わっているべきユーティリティーを確保した結果、こういうカタチになった」と説明する。それにしても変わらなすぎだとは思う。 新型はインプレッサとその派生モデルのXVに続く、SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)採用の第3弾だ。SGPを採用したクルマでは今のところハンドリングと乗り心地に不満を抱いた試しがないが、フォレスターについてもそうだった。新型は従来型に比べ、曲げ剛性を2倍、ねじれ剛性を1.4倍に高めたというが、実際に乗ってみてもいかにも堅牢だと思わせる。飛ばしても曲がっても音を上げず、不整路を走らせても不快な振動がほぼ感じられない。SGPを採用する限り、次のレヴォーグもレガシィも車体は安泰だろう。 渋滞で重宝するツーリングアシスト付きアイサイト今回は首都高中心の試乗コースで、ほぼ全区間が渋滞か渋滞になりかけといった環境で試乗した。その結果、まず感じたのは、標準装備のツーリングアシスト付きアイサイトのありがたさ。ステアリングホイールに軽く手を添えておけば、先行車両との車間距離を一定に保ち、車線中央を維持してくれる。渋滞と無縁でいられない地域に住むユーザーにとっては日常的に恩恵を感じられる、これ以上ない装備だ。 たまにアイサイトなどのADAS(先進運転支援システム)を毛嫌いする人がいるが、不思議でならない。もしかしたらかつて機能が中途半端な時期のACCを体験し、これじゃ使い物にならないと感じたままなのかもしれないが、最新のアイサイトをはじめ、同一車線内で車線中央を維持すべくステアリング操作をアシストしてくれるシステムが備わったADASは、正しく使えばドライバーの疲労を大幅に軽減してくれるし、安全にも寄与する。 フォレスターは多くの子連れ家族に検討されるクルマだ。子供がいると土日しか休めず、渋滞にハマるとわかっていても出かけざるを得ないことが多いもの。ツーリングアシスト付きアイサイトはフォレスターに最もふさわしい装備だと思う。 物足りないパワートレーン…ターボ廃止は理解に苦しむ惜しむらくはパワートレーンだ。新型は2リッター4気筒+モーターのハイブリッドと2.5リッター4気筒の2種類。従来型にあった2リッター4気筒ターボがなくなった。ハイブリッドの新設は時代の要請として理解できるが、ターボの廃止は理解に苦しむ。販売面でさほど貢献しなかったからというのがスバルの言い分だが、私自身は新型の2種類のパワートレーンを両方試してみて、ターボが恋しくなった。 ハイブリッドはモーターの出力が小さいためアシスト量が少なく、バッテリー容量も小さいので、アシスト時間も短い。例えば40~50km/hからの中間加速といった、2リッターでは少し物足りない部分と感じるタイミングで効率よくアシストしているのは感じ取ることができるのだが、アシストされてももの足りなさは解消されない。この日の車載燃費計によれば燃費は11.8km/L。ハイブリッドというには物足りない。 どちらかというと、全域でそこそこトルキーな2.5リッターのほうが印象がよかった。とはいえ、従来型の最大トルク400Nmのターボエンジンはもっとずっとトルキーで、痛快な加速を味わうことができた。あれが懐かしい。このクラスのSUVは多数あるが、速いSUVは珍しかった。速いうえに悪路走破性が高いSUVというのがフォレスターの2大セールスポイントではなかったか。 ターボは売れなかったと言われると、あまり言い返す言葉がないが、歴代のターボがつくったイメージがフォレスター全体の売れ行きに貢献していたということはないのだろうか。ぜひ力強いターボ復活を検討していただきたい。もしくはアシスト量を増やすか燃費をぐっと引き上げる、もしくはその両方を叶えるわかりやすいハイブリッドを望む。 世界販売の3割を占めるフォレスターの運搬船を見学ところで今回は試乗会後に、スバルがメディアを対象に行うテックツアーの第9弾として、自動車運搬船の見学が実施された。 川崎市にある株式会社東扇島物流センターはスバル車を船舶で北米輸出するための拠点だ。日本国内で生産されたスバル車を海外輸出する国内5港のひとつで、1983年の創業以来、オリジナルとしては最後の世代となったレオーネ、89年に登場したレガシィ、レオーネの実質的な後継モデルとして登場したインプレッサ、その派生のフォレスターを輸出してきた。 数時間後に出港する予定のバイオレットエース(4万9708トン)に乗船し、乗組員その他の方々から話を伺った。バイオレットエースはギリシャのオーナーが所有し、商船三井がチャーターしているバハマ船籍の船。2011年3月に竣工。全長は189.3mあり、11のデッキに最大5000台の乗用車を積載することができる。 自動車は運搬物としては比重が軽いため、高さ45mのうち喫水(水に沈んでいる部分)が8mしかない。船のほとんどが浮かんでいるように見えて重心が高そう。実際、操船は難しい部類に入るそうだ。乗組員は21人。同センターを出て、アメリカ西海岸なら2週間、東海岸なら4週間で到着するという。 日本車が北米を席巻した86年には、同センターからレオーネを20万台近く輸出した。その後、円高やモデルの切り替わりなどのタイミングなどによって輸出台数は減少、95年には5万台未満に落ち込んだ。それを救ったのが97年に登場した初代フォレスターだ。北米で人気を集めて輸出台数は順調に回復。リーマンショックや東日本大震災などによる一時的な落ち込みはあったものの、2015年には30万台に迫る台数を輸出した。17年、施設の老朽化に伴い規模を縮小したが、累計500万台以上のスバル車を北米へ送り込んだ。 2017年、フォレスターは世界で28万1014台が販売された。ここのところスバルの年間の世界販売台数は100万台強で推移しているため、実に3割近くをフォレスターで稼いでいることになる。 スペック【 アドバンス(e-BOXER) 】 【 ツーリング 】 |
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