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NSX改良モデル試乗 見た目はほとんど変わらないが中身は相当良くなった

2018-12-20 07:00| post: biteme| view: 592| コメント: 0|著者: 文:五味 康隆 /写真:小林 俊樹

摘要: 内装はもう少し手を加えてほしかった 2018年も終わりが見えてきた年末になって、かなり心を揺さぶられるモデルが登場した。「ホンダ NSX」2019年モデルがそれだ。見た目には2016年8月の発表時から大きな変更はない。 ...

NSX改良モデル試乗 見た目はほとんど変わらないが中身は相当良くなった

内装はもう少し手を加えてほしかった

2018年も終わりが見えてきた年末になって、かなり心を揺さぶられるモデルが登場した。「ホンダ NSX」2019年モデルがそれだ。

見た目には2016年8月の発表時から大きな変更はない。ワイド&ローを強調するべく、フロントエンブレム下のグリル部のクローム加飾をボディ同色にした程度だ。

仕事柄、様々なモデルに試乗するが、最も人々が振り返り、写真を撮られることが多いのがNSXだ。あまり見ることがない希少性(日本で受注400台:年間目標販売台数100台)と、スーパーカーの中でも異様なまでのロー&ワイドな見た目がそうさせるのだろう。今回のごく小さな変更でも、その異質なロー&ワイドがさらに強調されている。

初代NSXで人気だったオレンジのボディ色も復活した。まったく同じ色ではなく、より派手なボディカラーが許容されるようになった今の時代と、新型NSXのスタイルに合わせた「サーマル・オレンジ・パール」で、オプションでキャリパーにもオレンジ色が追加されるなど、コーディネートもできる。一方、室内はオプションだったアルミ製のペダル&フットレストが標準設定になった以外は変更なし! 「レジェンド」と同じ匂いが漂う内装には、もう少し手を加えてもらいたかった。

もちろん、そんなことを言われるのはホンダも百も承知のはず。今回の変更の要は「走りの質」だ。見た目や装備ではなく、ホンダのスポーツモデルのフラッグシップとして、胸を張れる乗り味を探求して全ての工数を注ぎ込んだのは、乗ればわかる。それはビックマイナーチェンジに相当するほどの進化を遂げていた。

最後は人…なぜ最初からこの完成度で出せなかったのか?

最初に毒を吐いておこう。ブランドの象徴となるべきNSXというフラッグシップモデルを世に問うにあたり、2016年の発売当初からこの熟成度で出せなかったこと、そんな開発体制を組んでしまったことを、ホンダは恥ずべきこととと認識するべきだ。ボディ回りを含めて使っているアイテムは同じであり、足回りのセッティング、ハンドリング特性などの味付け変更、走行プログラム系の調整だけで、見違えるほどのクルマに仕上がっているからだ。

背景として、開発責任者が日本の水上聡氏になった効果が大きい。泥臭い視点かもしれないが、やはりクルマ作りは人で決まる。まとめ役の能力、センス、情熱で仕上がりは大きく異なっていく。市販済みなので生きた道である一般道も含めた走り込みができたというのもあるだろう。しかし、2016年以前の開発段階でもテスト環境はそれほど大きく違うわけではなく、そもそも日本で開発していないことも問題だった。その気にさえなれば、当時でもこの完成度に持っていける開発環境を用意できたはずだ。これをホンダの関係者がより深く意識しないと、スーパースポーツがあふれるこれからの時代に、競争力のあるモデルの開発・進化は望めないと思う。

初期型オーナーが乗ったら悔しがるほどの進化

ここでNSXの走行システム「スポーツハイブリッド SH-AWD」を簡単に紹介しよう。3.5L V型6気筒 DOHC直噴ツインターボエンジンをミッドに搭載し、その出力軸に駆動も発電もする電動モーターを1基積んでいる。その先には9速DCTがあり後輪を駆動する。フロントにはユニットとしては一体だが左右タイヤを独立して駆動する1対の専用電動モーターがある。つまりこのNSXの特殊な3モーター式ハイブリッドモデルであり、自在に駆動力を操る4WDモデルだ。さらに言えば、フロントの左右駆動力を変えられるのでトルクベクタリングが可能だ。

2019年モデルでは旋回中の車両の傾き(ロール)を抑制するスタビライザーの剛性をフロント26%、リア19%アップ。さらにリアのコントロールアームブッシュの剛性を21%、リアハブを6%アップさせた。これら全ては旋回中の踏ん張りとそこから加速した際の高負荷時にシッカリ感を出すための要素だ。旋回負荷をそれぞれのパーツが確実に支え、高負荷でも設計通りの位置で動くことで、サスペンションスプリングやダンパーをセオリー通りに路面の追従性だけを追い求めた柔軟性に富んだ特性にできた。初期型オーナーが乗ったら悔しがるほどの進化に感じるだろう。

専用タイヤが静かで上質というNSXの魅力を引き出した

走り出して即座に感じるのはタイヤの違い。路面へのコンタクトがとても柔らかくなった。以前はタイヤの硬いブロックがガツガツとアスファルトの凹凸に引っかかるようにグリップしている感覚があったが、今回採用されたコンチネンタル スポーツコンタクト6は、路面の凹凸を優しく包みこんでグリップを高めているようなフィールで、街中でも上質でしっとり感がある。走行モードをクワイエットモードにしたときの静かな電動モーター走行にもマッチしている。

ちなみにこのタイヤ、2019年NSX専用に仕上げられたスペシャル仕様であり、市販されているスポーツコンタクト6とはコンパウンドもストラクチャーも異なる。専用タイヤを示す認証マークがついていないので知らずに変えてしまいそうだが、この乗り味が好みならディーラーで純正タイヤに交換するべきだ。

2019モデルはそんな細かい話をしたくなるほど、タイヤまで含めた最適な味付けがなされた。コツコツ感は以前と同様にあるが、そのコツコツの角が少しだけとれた丸みある入力になった効果と、タイヤの路面攻撃性が弱まった効果か、車内に響くようなロードノイズも抑えられている。静かで上質というNSXならではの魅力がうまく高められた印象だ。

NSXはオーナー向けのアップデートメニューを充実させるべきだ

今回の改良でNSXはスーパーカーとしての資質を高めた。速さと旋回能力に関しては以前から研ぎ澄まされていた。しかし初期型では旋回性は鋭いが唐突なことや、走行モードによって異なるもののペースアップしていくとが必ずどこかの速度域でドライバーの感覚に合わない挙動を示すといった、トルクベクタリングの癖があった。ハンドル操作だけでなく、路面のアンジュレーションなどの入力変化でもトルクベクタリングの挙動が乱れるので、余計に怖かった。それがどうだろう。今回の改良で全て改善されているのだ!

絶えず期待に反すること無く、素直にコントロール性高く走ってくれる。首が遠心力で外に持って行かれそうになるほどの鋭い旋回も、違和感のない操作フィールの元で得られる。もちろん背景には低重心であることや柔軟性に富んだ足回りで路面吸い付くように走る特性も関係する。加えてレスポンスに優れる心地よい排気音。特に走行モードを「スポーツ+」以上にしたときにエンジンから聞こえてくるターボの解放音は病みつきになるほどだし、ツインクラッチの変速の歯切れの良さも相まって痛快そのもの。こんなシーンでもモーターはフル稼働しているから、アクセル操作に対するレスポンスは素晴らしく、エンジンだけでは得られない鋭い加速を味わえ、電気モーターを使ったスポーツカーの世界が今後主流になると確信させられるのだ。

ワインディングを含めて様々な道を走ったが、感覚と調和せず不自然に曲がるなど違和感があったのは1度だけ。凹凸の大きな路面で旋回した時だが、それで危険になるようなものではないので気にしなくていいだろう。電動モーター式のトルクベクタリングはあまりにも自由自在なので、逆に特定の状況になるとこうした微妙な違和感はどうしても残るだろうし、それらを一つずつ穴埋めしていく作業が今後の洗練進化としてNSXには求められるだろう。

NSXは熟成による伸び代が他のモデルより大きいので、今後はアップデートのメニューを充実させるのが良いと思う。希望者に有償でソフトアップデートを行い、最新のハンドリングを得られるようにする。もちろんハード面のセットアップが異なるので全てを同じにすることはできないが、それが可能になれば購入しやすくなると思うのだ。価格は変わらず2370万円と高額だが、2019年モデルのNSXは手放しでオススメできる完成度となった。

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五味康隆(ごみ やすたか):モータージャーナリスト
自転車トライアル競技で世界選手権に出場。その後4輪レースに転向して全日本F3選手権で3年間戦ったのち、モータージャーナリスト活動を開始するという異色の経歴を持つ。確かなドライビング理論と優れた運転技術に裏付けされた解り易い解説には定評がある。みんカラブログ「eカーライフ」Youtubeチャンネル「E-CarLife」、各種SNSでも積極的に情報発信している。

スペック

【 NSX 】
全長×全幅×全高=4490mm×1940mm×1215mm
ホイールベース=2630mm
駆動方式=4WD
車両重量=1800kg(カーボンセラミックブレーキローター装着車は1780kg)
エンジン=3.5L V型6気筒 DOHC直噴ツインターボ
最高出力=373kW(507ps)/6500-7500rpm
最大トルク=550Nm(56.1kg-m)/2000-6000rpm
トランスミッション=9速DCT
リアモーター=35kW(48ps)/3000rpm、148Nm(15.1kg-m)/500-2000rpm×1基
フロントモーター=27kW(37ps)/4000rpm、73Nm(7.4kg-m)/0-2000rpm×2基
システム出力=最高出力:427kW(581ps)、最大トルク:646Nm(65.9kg-m)
JC08モード燃費=12.4km/L
使用燃料=プレミアムガソリン
サスペンション=前:ダブルウィッシュボーン式
        後:ウィッシュボーン式
タイヤサイズ=前:245/35ZR19、後:305/30ZR20
車両本体価格=2370万円


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