内外装デザインは完全キープコンセプトイヴォークはその斬新なデザインとともに、ランドローバーではフリーランダー~ディスカバリースポーツとならぶ手頃な価格設定としたこともあり、それまでのランドローバーにはなかった新たな客筋の獲得に成功した。 グローバル販売でも年間40万台規模のランドローバーにあって、初代イヴォークは年間平均で10万台以上も売れた。日本での販売はランドローバー全体で昨18年の4239台が最高記録だが、イヴォークは実質6年間で国内累計1万台を突破している(単純計算で年間平均約1700台)。こうした数字だけでも、初代イヴォークがいかに同ブランドの客層拡大に寄与したかが分かる。 初代イヴォークは8年強のモデルライフでずっと売れ続けたことも特徴で、販売台数はモデル末期まで安定していた。よって、2代目となる今回の新型イヴォークも、デザインからパッケージまで、その成功をそのまま受け継ぐことを意図した完全キープコンセプトだ。イヴォークに格別の興味をもたない人が単独で眺めているだけでは、まるで区別がつかないほど新旧ソックリ。強く傾斜したセンターコンソールが特徴的なインテリアデザインも、基本意匠やレイアウトまで新旧で酷似する。 最近は欧米でもボディサイズの拡大に歯止めがかかりつつあるのか、新型イヴォークのサイズ拡大も最小限である。日本仕様での比較でいうと、新型は全長で25mm、全幅で5mm大きくなったにすぎない(全高は10mm低くなった)。よって、写真での比較だけでなく、実車をならべてみても新旧で区別がつかない……とまではいわないが、ソックリという印象は変わらない。ちなみに初代イヴォークは最初3ドアが発売されて後に5ドアが追加されたが、新型は最初から5ドアのみだ。 新開発PFで広くなった室内、インテリアの質感は特筆もの一見すると、2代目は上屋を取り換えただけのスキンチェンジか……と錯覚しそうだが、そうではない。初代より20mm長くなったホイールベースからも分かるように、今後の電動化を想定したプラットフォームから新開発で“先代からの流用部品はドアヒンジのみ”と豪語する。 その新開発プラットフォームの恩恵は走り出す前から明らかで、後席空間はヒザまわりも頭上も初代より明らかに広くなり、高いベルトラインによる閉所感こそ相変わらずだが、身長175cm級ならアシが組めるほどだ。荷室も5名乗車の通常時で16リッター拡大という数字を見ずとも、ひと目で広く使いやすくなったことが分かる。 ジャガー・ランドローバーでは、このイヴォークにディスカバリースポーツやジャガーEペイスという兄弟車を加えて、BMW X3やアウディQ3、メルセデスGLCクラス、ボルボXC60、レクサスNX、アルファロメオ・ステルヴィオ……といった競合車に全方位的に対抗するのが基本戦略だ。質実剛健なアウトドア派をディスカバリースポーツが、スポーツカーはだしのオンロード性能を重視するエンスージァストをEペイスが担当するのが基本で、イヴォークはいわばデザインコンシャス層やラグジュアリー派を担当するわけだ。 実際、新型イヴォークの高級感と質感表現は現時点では群を抜いた感がある。とくにインテリアの質感は上級のヴェラールにも匹敵するほどで、伝統的なレザーやウッド仕様も選べるのだが、シルクを思わせる滑らかな肌触りとジャージのような高い伸縮性が融合した標準のシート素材(植物のユーカリ由来の新繊維だそうだ)や、メーターや中央ディスプレイ、そしてセンターコンソールまでタッチパネル式で統一されたコントロール類も、なんともモダンな調度品だ(使いやすいかどうかはまた別問題だけど)。これなら数ある高級DセグメントSUVのなかで“インテリアが気に入ったから”とイヴォークに即決する人がいても不思議ではない。 下位グレードの17、18インチタイヤと相性がいいかも…今回、神奈川県は宮ヶ瀬ダム湖付近の一般道と、特設のテラポッド(模擬オフロード)コースでの短時間試乗にかぎられた。それでもひとつ確実に断言できるのは、イヴォークはその見た目に似合わず(?)、乗り味が徹底してSUVであることだ。それは先代同様……というか、アプローチやディパーチャー、ランプオーバーなどの各アングル、そして最大渡河水深などの悪路性能値もすべて初代より向上しているくらいである。 イヴォークは運転席に座った瞬間から本格SUV的である。運転環境はほかのランドローバー車同様に、座面を高くシートバックも立て気味にセットして、ステアリングを見下ろすような“コマンドポジション”でピタリと落ち着くように仕立ててある。そうして正しいドラポジを決めると、手足の短い日本人体形では傾斜の強いフロントウインドウに圧迫感をおぼえなくもないが、そこも“それでもコマンドポジションにこだわる本物志向”と好意的に受け止めるのが正しいファンの姿だろう。 20インチの大径ホイールを履いた上級スポーツ風味グレードでも、その身のこなしはあくまで、ゆっくりにしてゆったり。正直にいうと、そうしたサスペンション設定とスタイリッシュな20インチのマッチングは現時点ではベストといいがたく、ゴツゴツという突きあげが目立ちがちで、旋回ではタイヤがわずかに先走る感覚もある。今回は試乗できなかったが、下位グレードに用意される17インチや18インチのほうが新型イヴォークのシャシーと相性がいいのでは……と想像させられた。 また、エンジンルーム下を疑似的にカメラで見せてくれる世界初の新機能“クリアサイトグラウンドビュー”はパレットタイプの駐車場や狭い路地などの普段使いでも意外に重宝する気もする。 48Vマイルドハイブリッド搭載車は好き嫌いが分かれそう新型イヴォークのエンジンは全機種が2.0リッター4気筒の通称“インジニウム”である。今回メインで試乗したのはガソリンの中間モデルとなる250psバージョン(P250)だが、十分にパワフルで、柔軟性にも不満はなかった。 ただ、技術的な最大注目は、同社初の電動車として48Vマイルドハイブリッドが備わる最上級の300psバージョン(P300MHEV)だろう。そもそも2.0リッターで300ps……という出力は今の目で見てもかなりハイチューンで、ましてボディが重いSUVのイヴォークとの組み合わせではかなりピーキーな特性が予想された。実際、エンジンそのものは2000rpmくらいから下品なくらいに一気にトルクが立ち上がる感触だが、そこでMHEVのモーターアシストが“つなぎ効果”を発揮して緩和してくれている部分は確かにある。 ただ、イヴォークのMHEVは良く悪くもベルト駆動のスターター兼アシストモーター兼発電機が追加されるだけの簡素なシステムで、モーター出力も限定的。よくよく観察するとP300のエンジンのすこぶるパワフルで鋭い吹けあがりに、モーターが負けている感もあって、元気に走ろうとするとやはり過給ラグを感じさせるシーンがなくはない。そのいっぽうで実際の走りはP250より明確にパワフルであることも事実で、このあたりは好き嫌いが分かれそうだ。 スペック【 レンジローバー イヴォーク ファーストエディション P250 】 |
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