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アウディ Q8はスタイリッシュで完成度が高いが積極的に選びたくなる決め手に欠ける

2019-8-29 07:00| post: biteme| view: 627| コメント: 0|著者: 文:塩見 智/写真:編集部

摘要: フルサイズSUV「Q7」のクーペ版 carview!編集部の駐車場は東京都心の巨大なビルにある。ビル内の駐車場によくあるコンクリート打ちっぱなしの空間で、いかにも人工的な雰囲気だ。そしてやや薄暗い。そこに置かれたア ...

アウディ Q8はスタイリッシュで完成度が高いが積極的に選びたくなる決め手に欠ける

フルサイズSUV「Q7」のクーペ版

bty編集部の駐車場は東京都心の巨大なビルにある。ビル内の駐車場によくあるコンクリート打ちっぱなしの空間で、いかにも人工的な雰囲気だ。そしてやや薄暗い。そこに置かれたアウディ「Q8」を見て、しっくりきているなと感じた。

今回試乗した車両はドラゴンオレンジメタリックというややエモいボディカラーだったのだが、それでもアウディというブランド自体がエモーショナル(情熱的)というよりインテリジェント(理知的)寄りなので、ジャングルよりもコンクリートジャングルのほうがよく似合う。

Q8は同社のフルサイズSUVであるQ7のクーペ版だ。MLBエボという同じプラットフォームで開発されており、5ドアである点も同じ。全長4995mm、全幅1995mm、全高1690mmと「Q7」よりもわずかに小さい。といってもホイールベースは2995mmもあり、絶対的には決して小さなクルマではない。

サイズにほとんど制限のないこのクラスならではの伸びやかさ、贅沢さを感じさせる。新世代アウディ顔は八角形のシングルフレームグリルが左右のヘッドランプやエアインテークと一体化していて、なかなかアグレッシブな表情となっている。昨今、こういう顔つきのフルサイズSUVの場合、ドライバーにはより一層の品性が求められる。間違っても高速道路の車線上に斜めに停めて交通を妨害したりしてはいけない。

華々しいルックスにあった刺激的なパワーが欲しい

駐車場を抜け出して首都高からアクアラインを経由し千葉方面へ向かう。このクルマには3リッターV6ターボエンジンが搭載されている。最高出力340ps/5200-6400rpm、最大トルク500Nm/1370-4500rpmを発する。トランスミッションは8速AT。駆動はもちろんクワトロ、すなわち4WDだ。このエンジンはサルーンの「A8」で経験しているが、その時に感じたような力強さがQ8からは感じられない。車両重量が2210kgとヘビー級であることも影響しているだろう。

近頃の過給器付きエンジンは重量をものともしない加速力を見せつけてくることが多いのだが、Q8の加速はおとなしい。不満というほどではないが、(私の)期待ほどではなかった。華々しいルックスに接し、期待値を上げすぎたかもしれない。

もちろん不十分というわけではないし、皆が皆刺激的な加速力を求めているわけではないのだろうが、このカテゴリーのお客さんは経済性をさほど求めない代わりに刺激を求める傾向にあるので、1000万円級のライバルが設定する6気筒ディーゼルターボや8気筒ガソリンターボあたりも欲しいところ。すでに最高出力435ps、最大トルク900Nmの4リッターV8ツインターボディーゼルエンジンを積むSQ8 TDIが発表されているが、日本導入が待ち遠しい。

その代わりといってはなんだが、Q8は洗練されたエネルギーマネジメントシステムを採用する。48Vの高電圧システムとリチウムイオン・バッテリーを活用したマイルドハイブリッドシステムを備え、最大12kWの減速エネルギーを回生するほか、22km/h以下でエンジンがストップする。

最新のUIは使いやすいがちょっと物足りない

Q8は通常のコイルサスとエアサスを選ぶことができる。試乗車はエアサス。走行状況に応じて車高が標準の高さに対して+50mm~-60mmの間で可変する。例えば高速走行中は低くなって空気抵抗を減らし、オフロード走行時には高くなってロードクリアランスを確保するといった具合に。なにより重いクルマの場合、さまざまな種類の入力の角を丸めて乗員に伝えるエアサスのほうが快適性が確保されやすい。

さらに近頃の高級モデルによくある後輪操舵システムも備わる。最大5度の角度で後輪が自動操舵され、小回りを利かせるのにも役立つほか、高速走行時のスムーズな車線変更などにも寄与する。このおかげで最小回転半径が6.2mから5.6mとなり、巨体にもかかわらず取り回し性能が大幅に向上する。

最新のアウディであるQ8は、当然ながら同社の最新のUI「MMIタッチレスポンス」を採用する。MMIとはマルチメディアインターフェイスの略。ステアリングホイール奥に1個、センターパネルの上下に1個ずつの計3個のデジタルスクリーンが各種情報を伝えるほか、センターパネルのスクリーンはタッチ式で、各種スイッチとしても機能する。使いやすいが、メルセデス・ベンツやBMWはある程度曖昧な物言いにも対応するAIを用いた音声入力式のアシスタントをアピールする段階に入っており、いずれも完成度が高いので、その点、アウディはちょっと物足りない。

ドライバー正面のスクリーンに地図画面を大きく表示できるバーチャルコクピットはアウディはじめVWグループの優位な部分だと思う。確認したい頻度で言えばエンジン回転や各種温度計よりも地図のほうが高く、ドライバーが大きな地図画面を正面で捉えることができるのは理にかなっている。

スタイル以外の何か突出したものが欲しい…

Q8はスタイリッシュで各項目の完成度も高いが、現時点では、スタイリングにひと目惚れしたケース以外に積極的に選びたくなる決め手に欠けているように思える。レベル3の条件付き自動運転をいち早く実用化するという宣言をしたアウディだが、実現にはいたっていない。

例えばQ8がこれを実現していれば話題をさらったであろう。びっくりするような効率の高さでもよかった。あるいはそうした優等生的なセールスポイントでなくても、人々が胸の奥に隠す欲望をびんびん刺激する怒涛のパワーでもよい。何かひとつ突出した部分が欲しい。

スペック

【 アウディ Q8 55 TFSI クワトロ デビューパッケージ Sライン 】
全長×全幅×全高=4995×1995×1690mm
ホイールベース=2995mm
駆動方式=4WD
最低地上高=195mm
車両重量=2210kg
エンジン=3.0リッターV型6気筒DOHC直噴ガソリンターボ
最高出力=340ps/5200-6400rpm
最大トルク=500Nm/1370-4500rpm
トランスミッション=8AT(ティプトロニック)
JC08モード燃費=10.3km/L
使用燃料=プレミアムガソリン
サスペンション=前後:ウィッシュボーン式
タイヤサイズ=前後:285/40R22
価格=1102万円(8%消費税込み)


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