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本当に「欲しい!」と思える1台――進化型GRヤリスに試乗。新旧比較でその真価を体感した ...

2024-1-12 10:00| post: biteme| view: 768| コメント: 0|著者: 文:山田 弘樹/写真:トヨタ自動車

摘要: 新旧GRヤリスをサーキットで試す モータースポーツを起点に、鍛え上げていく。その言葉通り、トヨタは登場から約3年の歳月をかけて、スーパー耐久や全日本ラリーで得た知見を通し、秘蔵っ子である「GRヤリス」を大幅 ...

本当に「欲しい!」と思える1台――進化型GRヤリスに試乗。新旧比較でその真価を体感した

新旧GRヤリスをサーキットで試す

モータースポーツを起点に、鍛え上げていく。

その言葉通り、トヨタは登場から約3年の歳月をかけて、スーパー耐久や全日本ラリーで得た知見を通し、秘蔵っ子である「GRヤリス」を大幅に進化させてきた。

試乗したのは、袖ケ浦フォレストレースウェイ。当日はあいにくの雨模様となってしまったが、そのキャラクターをつかむには、むしろ好都合だった。

走り出す前にまずそのトピックをお伝えしておくと、今回進化型GRヤリス(プロトタイプ)には、待望の「Direct Shift 8速AT」が搭載された。そのギアレシオは1速が4.435から始まり(6MTは3.358)、6速が1.000で直結(6MTは5速が1.081)。そして7速(0.793)と8速(0.650)が、オーバードライブになっている。最終減速比は6MTの3.941/3.350に対して、8ATが3.329だ。

筆者もGRヤリスが登場したときは、なぜAT仕様が存在しないのかと疑問に思った。2万5000台という当時のホモロゲーションをクリアしたかったのであれば、それは必要不可欠だと思えた。

結果的にトヨタはFWDにCVTを組み合わせた「1.5RS」という飛び道具までをも用意して、これを達成してしまったわけだが、ともあれAT仕様がないという理由でGRヤリスを諦めた人たちは多かったことだろう。それがこのたび、ようやく実現された。

>>現行GRヤリスのグレード一覧はこちら

ということで晴れてGRヤリスは6速MT(iMT)と8速AT(GR-DAT)をラインナップすることとなったわけだが、さらに今回はこれを、現行型6MTモデルと比較試乗することができた。

グレードは全て、「RZ“High Performance”」だ。BBS製の18インチ鍛造ホイールに225/40ZR18サイズの「ミシュラン パイロットスポーツ4S」を組み合わせ、ブレーキにはフロント対向4ポット/リア対向2ポットキャリパーとスリットローター、ディファレンシャルには前後にトルセンLSDを備えた、カタログモデルの最上級仕様である。

>>合言葉は「壊してくれてありがとう」。レースで鍛えられた新型GRヤリスの過激すぎる進化の中身

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1コーナーを曲がっただけでわかる劇的な進化

最初に試したのは、進化型の6MTモデル。いきなりメインディッシュからのスタートだ。

徐々に雨脚が強まる試乗で、まず筆者の気持ちを明るくさせてくれたのは、そのシートポジションが説明通りに低められていたこと。

現行型のシートは着座位置が高いため重心が上がり、Gに対して体を支えにくかった。筆者はこの着座位置を「生粋のラリーモデルだから、仕方ないのだろうか?」 と勝手に思い込んでいたのだが、トヨタ自身もそこは改善したかったようだ。

またフラットな着座位置になったことで、アクセルやブレーキペダルを踏み下ろさないで済むようになり、微調整がしやすくなった。心なしかクッションもソフトになったと感じたが、シート自体は変わっていないとのこと。僅かに25mmの変更だが、体圧分布が良くなって、座り心地までもが変わったのかもしれない。

コクピットまわりでもうひとつ付け加えると、進化型はインパネ形状が大きく変更された。ナビモニターを含むセンターパネルとシフト周りがメーターパネルと一体化して、ドライバー側に15度傾けられた。やや後付け感が強くてやり過ぎな感じもしたが、これはモータースポーツからもたらされた改良で、スイッチ類はフルハーネスを締めた状態でも操作しやすいポジショニングになっているという。

クラッチをつないで、ピットレーンを後にする。ゆっくりと1コーナーを曲がっただけで、新型GRヤリスの足周りが大きく変わったことに気が付いた。頼もしい操舵感。高いロール剛性を持ちながらも、そのサスペンションストロークが、とても緻密でしなやかなのだ。

スプリングレートやダンピングが向上したにも関わらず、しかも雨なのにこれだけ足周りがきちんと動くのは、ボディ剛性が高められたからだ。具体的にはスポット溶接の点数が13%増やされ、構造用接着剤の塗布部位が約24%も拡大した。さらにラリーフィールドからの要求を聞き入れて、フロントアッパーマウント部のダンパー締結ボルトを、1本から3本へと増やしたのだという。

こうしたシャシー面の強化に対して、1.6直列3気筒ターボも最高出量が272PS/6500rpmから304PS/6500rpmへ、最大トルクが370Nm/3000-4600rpmから400Nm/3250-4600rpmへと引き上げられた。

これはざっくり言って「GRカローラ」と同じ数値だが、排気管長の関係だろうか、最大トルクの最低発生回転数が250rpmほど高い。

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制御が変わった4WDの駆動配分

果たしてその走りはというと、思わず笑いが込み上げるほどの楽しさだった。

モードセレクトで「サーキット」を選べば、GPSの位置判定によってスピードリミッターの上限速度が引き上げられ、アンチラグ制御が入るのだという。アクセルオフでバラバラと、WRカーのような迫力あるバブリンググサウンドは聞こえてこなかったが、エンジンはターボのレスポンスが抜群なだけでなく、そのサウンドも明らかに磨きが掛かっていた。

そして加速も、十分に速い。

もちろんそれは、数千万円級のスーパースポーツたちが叩き出すような、身の毛のよだつ速さではない。しかし床まで目一杯アクセルを踏んで小さなGRヤリスをぶっ飛ばせば、脳みそからアドレナリンやらドーパミンがドッと溢れ出す感じがする。

そんなスピードを心から楽しめたのは、なんと言ってもGRヤリスが4WDだからだろう。そしてこの4輪制御が、雨の中ではびっくりするくらいにジャストフィットした。

ご存じの通りGRヤリスの4輪トルク制御は、モードセレクトにより「NORMAL」でフロント60:リア40、「SPORT」で30:70、「TRACK」で50:50という3つのパターンを持っていたのだが、新型では「NORMAL」はフロント60:リア40で変わらないものの、「SPORT」に相当する「GRAVEL」が53:47、「TRACK」は60:40~30:70の可変へと変更された。

そして筆者が一番リニアだと感じたのは、GRAVELモードだった。ブレーキングからターンインに掛けての安定感と、操舵後にリアが追従したときの、バランス・スロットルのしやすさが抜群なのだ。さらにアクセルの開け方次第ではオーバーステアを作り出して、そのコントロールを楽しむことさえできてしまう。

TRACKモードのリア寄りな駆動バランスで姿勢を作り出すドライバーもいるだろうが、フロントのトラクションがこうした低ミュー路では姿勢制御には効果的で、オーバーステア状態でそのままコーナーを駆け抜けるのも、TRACKモードの方がやりやすかった。ちなみにこのGRAVELモードは開発ドライバーの名前を取って、「大嶋(和也)モード」と呼ばれているらしい。大嶋モード、最高である。

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GRヤリスの可能性を広げてくれる8速ATの存在

対して期待の「Direct Shift 8速AT」は、まず何より運転しやすかったのが印象的だった。

その変速スピードはAT内部の変速用クラッチに高耐熱摩擦材を採用し、ソフトウェアを改良することで、確かにDCT並となっていた。操作もパドルシフトだから、運転に集中できる。慣れれば左足ブレーキだって、使えるようになるだろう。

また筆者は少ない周回数ゆえにMTモードで固定してしまったが、ATモードではドライバーのペダル操作から状況を判断して、不要なシフトアップを避けギアを固定させたりするのだという。

ただ正直なことを言うと8速ATのクロスレシオが、6速MTに加速で大きな差を付けている感じはしなかった。ターボエンジンの特性にマッチするのか、6速MTの加速は息が長く、体感的には同じくらい速いのだ。

さらにマニュアルシフトのタッチが素晴らしく(ここに変更はないはずなのだが、良くなっていると感じた)、運転が抜群に楽しい。当日はタイム計測をしたわけではなく、天候が刻々と変わる状況だったから、これは改めてドライ路面でじっくりと比べてみたい。

現行モデルと大きな差を感じたのは加速性能だ。

袖ケ浦フォレストレースウェイの3コーナーからの登りセクションなどはその典型で、同じグループで走る進化型に追いつこうと、現行モデルでアクセルを全開にしても、こちらが二人乗車だったこともあるが、その差は目に見えて開いていった。

ただ現行モデルも、ヘビーウェット路面だとそのコントロール性はかなり良好だった。若干足周りのしなやかさには欠けたが、荷重が大きく掛からない状況だとその剛性差が現れにくいのだと思う。とはいえより質感が高く、動きに角がないのは断然進化型だ。

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いちクルマ好きとして本当に「欲しい!」と思える1台

そして最後は、簡易的なダートコースで現行RZのダート仕様車(iMT)と、進化型8速ATのラリーチャレンジ仕様車を乗り比べた。

ここでの答え合わせとしては、進化型のボディ剛性と出力の向上が、現行型に大きく差を付けるという展開だったはずだが、それぞれ2周の周回と、走るほどに轍(わだち)が深まる状況では違いを見いだしにくかった。

50:50の等速トランスファーを装備したダート仕様車はトラクションの掛かりが良く、ウェット路面同様現行モデルでも、その操作性が見劣りしなかったからだ。もっとハイスピードな領域を然るべきドライバーが走らせれば、その進化と真価を感じ取ることができるのだろう。また筆者は思わずセンターコンソールに手を伸ばして空振りしてしまったが、ハンドル横に移設した競技用サイドブレーキはアイデアものだった。

果たしてGRヤリスは、見事な進化を遂げていた。

コーナーではフロントの高い接地感を保ったままリア旋回し、きれいに向きを変えながら、雨の中でも前へ前へと進むそのコントロール性の高さには、大いに感動させられた。

開発ドライバーのひとりである大嶋和也選手がインタビュー時間に朴訥(ぼくとつ)と、「本当は、ドライで乗ってもらいたかった。もっとその進化を、感じてもらえたと思います」と、残念そうに語ったのが印象的だった。

その機会は次回にお預けだが、前にも増して筆者のGRヤリス熱は高まった。いちクルマ好きとして、本当に「欲しい!」と思える1台だった。

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