90と110にV8ガソリンエンジン搭載モデルが追加される大人気の「ランドローバー ディフェンダー」。少し前から「JLR」という呼称を定着させようとしているジャガーランドローバーは、レンジローバー、ディスカバリー、ディフェンダー、ジャガーの4ブランドで構成される。 ともに英国のジャガーとランドローバーが合併してできたブランドで、ジャガーはサルーンやスポーツカーをラインアップしてきたが、2025年にBEV専用ブランドとして再発進すべく数年前にエンジン付き車両の新規開発をストップし、現在は既存モデルを販売している。 ランドローバーはSUV専業メーカーで、ラグジュアリーな「レンジローバー」、ファミリーユースを重視した「ディスカバリー」、本格的な悪路走破性をもつディフェンダーの3系統のシリーズをラインアップする。ランドローバーもレンジローバーから順次電気自動車を拡充していくと表明しているが、現時点ではICE(内燃エンジン)が販売の中心だ。 >>レンジローバーの詳細情報はこちら 2019年の登場以来、人気の衰えないディフェンダー。短い90、中間的な長さの110(といっても全長約5m)、長い130の3種類のボディがあり、エンジンは2L直4ガソリンターボと3L直6ディーゼルターボの2本立てというラインアップで販売されてきた。ここへきてV8ガソリンエンジンを搭載したモデルが90と110に追加された。 >>ディフェンダー各モデルのカタログ情報はこちら 伝統の5L SCか、BMW製4.4Lツインターボか?搭載されるV8は、5LスーパーチャージャーのP525。数字は最高出力を示す。これは先代のレンジローバーにも用いられていたが、昨年モデルチェンジした新型レンジローバーには、新たにBMW製の4.4LガソリンターボチャージャーのP530が採用された。 ジャガーがBEVブランドに生まれ変わることを宣言し、レンジローバーもBMW製エンジンを使うようになったため、ディフェンダーV8がP525を使う最終世代となった。プレスリリースに「ディフェンダーがP525を搭載するのは24年モデルのみ」との記載があるので、ディフェンダー用のV8もいずれはP530に切り替わるのだろう。 P525とP530のどちらがよいかと聞かれたら結構迷うところだ。同じ車両に搭載して計測すればP530のほうがよいタイムを出すだろうし、燃費も上回るだろう。体感的な力強さはほとんど変わらない。フィーリングは結構異なる。P525のほうが野太く大きなエンジン音を発する。典型的なV8サウンドだ。P530はより静かだし、高回転まで回すと澄み切った音がする。 パワーや効率を求めるだけならよい過給器が備わった6気筒エンジンでも事足りる時代。“らしさ”を求めてわざわざV8を選ぶなら、V8でしか聞くことのできない音と、感じることのできない振動を発するP525のようなエンジンがよいなと思う。 >>ディフェンダー各モデルのカタログ情報はこちら 高いが、圧倒的パワーと官能的な振動と音があるどちらのV8がよいかということよりも重要なのは、とにかくV8がディフェンダーに載ったということだ。アクセルペダルを積極的に踏み込んで3500rpm以上に達すると、P525のV8サウンドは、野太さはそのままに音階と音量が上がり、同時に陶酔するような加速Gをもたらす。軽量なスポーツカーがもたらす健康的な加速の魅力に比べ、V8のSUVが与えてくれる魅力は罪悪感たっぷりだ。加速する度、ドライバーに「本音を言え。こういう加速が欲しかったんだろ?」と問うてくる。 2.4トンの車体を痛痒なく走らせるという意味では、3L直6ディーゼルターボエンジンを搭載したD300でも不足はない。P525以上の最大トルクをより低い回転域で発揮するし、ディーゼルとは思えぬほど静かで、振動もよく抑えられている。もちろん燃費はよりよく、さらに燃料代も安い。 けれどもV8には、ディーゼルでは決して味わうことのできない高回転での盛り上がりがある。D300に対し300万円以上余計に支払うのなら、特別な速さと本能に直接訴えかけてくるような音と振動の刺激が欲しいじゃないか。ディフェンダーV8にはそれがある。 V8搭載で獲得した最高出力525ps、最大トルク625Nmを、このオフローダーはしっかりと路面に伝えることができるのか。これが想像以上にしっかりと走行できたので驚かされた。俊敏とは言わないが、ワインディングロードで狙いどおりのラインをトレースすることができる。ボディ剛性の高さが正確なハンドリングを可能にしている。 後日試乗した90のほうが110に対しホイールベースが435mm短く、車重が140kg軽いことからより軽快な動きを見せたが、110でも十分に快活な走りと言える。 足まわりやパワートレーンを電子制御するテレインレスポンスには、V8専用のダイナミックというモードが備わる。選ぶと足まわりが明確に引き締まり、トランスミッションは積極的に高回転を許すようになる。図体からは想像できないほど速い。0-100km/h加速は110で5.4秒、90だと5.2秒となる。これまたV8専用装備のサイズの大きなパドルシフトを駆使し、回転が下がるのを防ぎながらコーナーを駆け抜けるドライブは痛快だ。 先にディーゼルモデルよりも300万円以上高いと書いたが、具体的には、D300のXが1265万円なのに対し、V8(グレード名も「V8」)は1588万円なので323万円高い。自動車税も3Lのディーゼルなら5万1000円/年だが、5LのガソリンV8だと8万8000円/年と高い。 しかも燃料代が軽油なら140円/Lだが、ハイオクガソリンだと170円/Lと、リッター30円も違う。何から何まで高いのがV8という存在だ。しかしそのエクストラコストを支払えば圧倒的なパワーと官能的な音と振動が得られる。要するにV8は完全なる贅沢品だ。 <終わり> >>ディフェンダー各モデルのカタログ情報はこちら |
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