シビック「RS」と「e:HEV」を乗り比べ9月13日より販売を開始した、マイナーチェンジ版のホンダ新型「シビック」。短時間ながら一般道(都内)で試乗することができた。注目のトピックは、6MTのみのスポーティな「RS」グレードの追加。どちらも1時間ほどのドライブではあったが、ハイブリッドモデルである「e:HEV」と乗り比べができた。 シビックは言わずもがなホンダのビッグネームだ。1972年に初代が登場し、以来ホンダの“ベーシックカー”として日本だけでなく世界中で高い評価を得てきた。世界130以上の国や地域で2760万台以上が販売され、現在でも年間45万台が生産されるなど、ホンダの屋台骨を支える超重要モデルとなっている。 現行となる11代目シビックは「爽快CIVIC」をコンセプトに2021年に登場した。年々大きく価格も高くなってきているが、ターゲットは(世界の)Z世代。これが世界基準のベーシックであり、時代は確実に変化していることを痛感させられる。今回のマイチェンでは「爽快CIVIC evo.」をコンセプトとし、その流れを引き継いだ格好だ。 デザインは、フロントバンパーの意匠を変更。ホンダによると、“シャープな突進感”を表現したバンパーを採用することでスポーティさを高めているそうだ。 ぱっと見の違いは僅かだが、特にグリル周りの精悍さが増したことでよりイケメンになったように思う。個人的には、1980年代後半から1990年前半ごろのペッタンコでスポーティな“カッコいいホンダ”の面影が重なった。これならホンダ好きだけでなく、老若男女幅広い層に支持されるのではないだろうか。 >>新型シビックRSとe:HEVを写真で比較する 時間軸が前後するが、今回新たにナビ(Honda CONNECT)に「Google」が搭載されていた。最初はスマホで繋ぐGoogleマップなどと一緒かな? ぐらいに考えていたのだが、試乗後に聞いたところGoogleの誇る音声認識技術などが搭載されており、エアコンの温度設定などがかなり正確に行えるそうだ。 そのほかGoogleマップも、スマホで普段我々が使っているものをベースに表示デザインなどをホンダが長年培ってきたエッセンスで独自にチューニング。車両の状態や(スマホより)精度の高いセンサーなどを活用することで、スマホナビでありがちな長いトンネルで自車位置をロストするといったこともないとのこと。OTAでアップデートもされ、まさにカーナビとGoogleマップの良い取りだそうだ。 先に教えて! と思ってしまった(調べなかったワタクシが悪い)ので、試乗の際にぜひチェックしてみてください。 ◎あわせて読みたい: e:HEVは相変わらず抜群に良いRSというお楽しみは後に取っておくとして、まずはe:HEVモデル(400万円を切る標準グレードのLX)から試乗する。 e:HEVモデルの変更点は、先に述べた外装のほか、インテリアにグレー内装を追加したこと、新デザインの18インチアルミホイール、電動サンルーフの標準化などで、ハイブリッドシステムのアップデートはなし。 >>新型シビックRSとe:HEVを写真で比較する それでもやはりe:HEVモデルの走りは爽快だ。 e:HEVモデルが登場した際の試乗記が数多く出ているので詳しくはそちらに譲るが、事細かに色々と説明しようとしても「それってつまり爽快でしょ?」という言葉で片付けられるほど、エンジン出力の出方、ハンドルを切った際のクルマの動き、ブレーキのタッチや減速フィール、乗り心地、広い視界と絶妙なサイズ感による運転のしやすさなど、全ての調和がとれ自然でスムーズなのである。 不快な部分や気になるところがなく、とにかく走っているのが気持ちよくなる。例えるなら、よく晴れた秋晴れの清々しい朝のような気持ちよさだ(伝われ!)。シビックe:HEVに乗れば、毎回この気分に浸れると思うと、それだけでいい買い物になる。迷っているなら今すぐ試乗をオススメする。 ちなみに、スポーツモードを選択するとちょっと過激なくらい速い。個人的にはノーマルモードの過不足のない自然なフィーリングがこのクルマのコンセプトにはピッタリだと感じた。 また(完全な好みの問題だが……)今回のマイナーチェンジで追加されたグレー内装は、個人的に爽快シビックのコンセプトを体現しているように思う。当日の試乗は雨(土砂降り)だったが、ベーシックカーでありがちな安っぽさもなく気分が明るく晴れやかになった。 ちょっと褒めすぎな気もするが、個人的にはなんで日本では月販目標台数500台なんだろう? と思ってしまう。出来がいいからもっと売れてもいいはずだが、やはり400万円という値段は今の日本には高すぎるのか。しかし“シビッククロスオーバー”とも言うべき「ZR-V」はそれなりに売れているので(24年9月は3381台)、価格だけじゃない気もする……。 ◎あわせて読みたい: 「RS」は専用装備でなかなか本気続いてはお待ちかねの「RS」だ。 ホンダの「RS」というシリーズは、ハイウェイを悠々と気持ちよく流す「ロードセーリング」の略だったのだが、今回のシビックではさらに一歩踏み込み(そもそもどのグレードも高速道路はスイスイと走れるので)、「ロードスポーツ」のようなテイストに仕上げているという。 11代目のシビックは、1.5Lターボのベースモデルがあり、それを基準に、より先進的で上質感を追求したe:HEVと、究極のスポーツモデルとしてタイプRが存在していたのだが、RSはちょうどベースモデルとシビックタイプRの中間(かややタイプR寄り)のようなイメージだそうだ。 タイプRはパフォーマンスも(値段も)一級品で現在は受注停止中。気軽に誰もが操れる喜びを追求した“身の丈にあったちょうどいいスポーティさ”がRSグレードのキャラクターなのだ。なお、北米にはスポーツモデルとして「Si」も存在するが、RSはSiよりも若干マイルドとのこと。 >>新型シビックRSとe:HEVを写真で比較する マイルドとはいえ、専用装備もなかなか気合が入っている。 エクステリアでは、ヘッドライトリングやドアミラー、エキパイフィニッシャーやホイール(ナットまで)をブラック調とし、サッシュ/ドアモールをハイグロス仕様に、フロントとリアにはRSエンブレムをあしらった。 インテリアはブラックとしながら、各所に赤のピンストライプやレッドステッチなどをあしらうことでスポーティさを高めている。古典的な演出だが、タイプRの少々やりすぎ感もある真紅の内装と違ってちょうどいいバランスだ。 足回りでは、ロール剛性を11%アップさせ5mm車高を下げた専用サスペンションや、専用ブレーキ(15→16インチ)、軽量シングルマスフライホイールや専用ステアリングを装備。 さらに、シビックタイプRにも搭載されたエンジン回転を自動で合わせてくれる「レブマッチシステム」や、好みでカスタマイズできるドライブモード「INDIVIDUAL」を追加する凝りようである。 ◎あわせて読みたい: ホンダらしさが帰ってきた!走り出してみると、バッジを変えただけの“お気楽スポーツモデル”でないことはすぐにわかる。e:HEVからの乗り換えると、その“味変具合”となかなか本気でスポーティな走りに思わず笑みが溢れた。タイプRほどは求めてないが、少しスポーティなモデルが欲しいユーザーにはまさにピッタリだ。 入力の角は丸められているが、足回りはダンピングが効いて腰があり、“スポーツモデルに乗っている感”を味わえる。滑らかな走りのe:HEVに対ししっかり骨太な味付けで、こちらの方が好きな人も多いだろう。試乗当日は雨だったが、ペースを上げても、舵を入れた際のクルマの動きも正確でしっかりと路面に吸い付くような安心感があった。 そして何より特筆すべきは、百発百中のレブマッチシステムと相まった6MTの楽しさだ。ホンダのスポーツモデルらしく、手首にほんの少し力を入れるだけでスコンと吸い込まれるようにシフトチェンジが決まる。 「オレはヒール&トゥをマスターしているからそんなもんいらん!」という声が聞こえてきそうだが、街中でこのレブマッチシステムを使ってしまうともう後戻りできなくなる。それぐらい安楽にMTの運転が楽しめるのだ。同乗者がいればなおのこと嬉しい装備である。 >>新型シビックRSとe:HEVを写真で比較する 1.5Lターボエンジンは、e:HEVから乗り換えると加速にほんのわずかなターボラグを感じるのだが、その分シフトチェンジして適正なギアを選ぶ楽しみがあるし、回転が高まった後の加速はターボモデルらしくパンチが効いている。何しろMTを駆使したクルマとの一体感がたまらない。 軽めのクラッチと軽量フライホイールで、発進時のエンストが心配だったが、駐車場から出る際などの極低速の車速のコントロールも容易でこれなら久しぶりのMTでもすぐに馴染めるのではないだろうか。 “誰もが”気持ちよく爽快に走れる「e:HEV」と、“誰もが”走りの高揚感を味わえる「RS」。「CIVIC=市民の」のという言葉通り、“誰もが”それぞれの楽しさ・気持ちよさを味わうことができるので悩ましい。 RSの値段は400万円を超えるが、特にRSは20~30代の購入も多いとのこと。先進安全などの装備も充実しており乗ってみると決して高いとは感じなかった。ホンダとしてもRSは「埋もれていたニーズを掘り起こせた」とのことで、想定以上の受注を獲得しているそう。「シビックなのに〇〇」と言った固定観念がない層には素直に受け入れられているのかもしれない。 e:HEVかRSかはもはやどっちも良く価格も近いので好みの問題になってしまうが、個人的にはカッコよく、走って楽しいホンダが帰ってきたことに妙に嬉しくなった。繰り返しになるが、迷っているなら一度乗ってみることをオススメする。これでタイプRもしっかりと日本で売ってくれれば、ユーザーは悩ましくも楽しい日々を過ごせるのだが……。 (終わり) ◎あわせて読みたい: |
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