新型「アウトランダー」と「トライトン」を雪上で試す三菱「アウトランダーPHEV」は昨年、姿はほとんどそのままに、中身をごっそり、もう“別モノ”と考えた方が良いレベルで変更して登場した。 国産PHEVの先駆者として、これまでも十分に商品力のあるPHEVだったが、“PHEVの心臓”ともいえる駆動用バッテリーを変更したことで、パワーだけでなく走りの洗練度も増した。 同社は「国産ジープ」やその後を継ぐ「パジェロ」を長年生産してきただけあって、4WDにひとかたならぬ思い入れもつ。 いっぽうで、「i-MiEV」を量産車初のBEVとして発売したことからもわかるように、いち早くクルマの電動化に活路を見出そうとした三菱は、昔から得意としてきた4WD制御技術と電動パワートレインを組み合わせた。それを商品に落とし込んだのが「S-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)」を採用したアウトランダーPHEVだ。 2.4L直4ガソリンエンジンは主に発電を担い、発電した電力は駆動用バッテリーに蓄え、前後のモーターに供給して四輪を駆動する。高速巡航時にはエンジンが直接駆動を担う。 マイナーチェンジでバッテリーの総電力量が20kWhから22.7kWhへ増加しただけでなく、従来の日産開発の“BEV向け”のバッテリーから三菱開発の“PHEV向け”のバッテリーに差し替えた。エンジニアいわく、これによってよりレスポンシブな電力の出し入れが可能となったという。 >>“三菱四駆”の圧倒的な雪での走りを写真でチェックする ◎あわせて読みたい: 楽しさだけでなく安全性にも貢献する「S-AWC」今回は雪上ハンドリングコースで試乗した。 走らせてまず感じるのは旋回のしやすさだ。S-AWCのキモは制動力と駆動力をコントロールし旋回性能を高める機構だ。 その特性をベースに、ドライバーの意向に応じて後輪寄りに駆動力配分を高め旋回性重視となる「ターマックモード」、トラクション性能を重視するほか、車体の安定を優先する「グラベルモード」、路面ミューが著しく低い場面での走りやすさを優先する「スノーモード」、スリップを抑制しぬかるみからの脱出性能を高める「マッドモード」などを選ぶことができる。 今回はクローズドコースで安全にハイペースを楽しむことができる環境だったので、最も活発に走らせられるターマックモードを満喫できた。一般道ではグラベルモードやスノーモードが役に立つはずだ。 このほか燃費優先の「エコモード」、積極的にエンジンをかけて加速力を優先する「パワーモード」、それにバランスを重視した「ノーマルモード」を選ぶこともできる。 >>“三菱四駆”の圧倒的な雪での走りを写真でチェックする アウトランダーPHEVは、コーナーの途中で「おっとっと」とアクセルを緩めたりステアリングを切り増したりする機会が他の多くのクルマに比べて明らかに少ない。雪道の旋回でステアリングを切ってもクルマが思ったほど向きを変えてくれず、外側へ膨らんでいくのはだれにとっても恐怖だ。S-AWCはそれを減らすことができる。 スピードを下げればよいではないか? とあなたは言うかもしれない。確かにそうだが、路面ミューが目まぐるしく変わる路面では、安全な速度などわからない。前のコーナーを曲がれたスピードで次のコーナーを曲がれるとは限らない。 かといって一般道を延々と20km/hで走行するのも事実上難しい。だから旋回性能は高ければ高いほど安全なのだ。アウトランダーPHEVは電動ならではの操作に対する反応のよさと煮詰められた4WD制御によって、安全かつ楽しく走行できるオールラウンダーであることが確認できた。 ◎あわせて読みたい: 過酷な環境が「トライトン」を鍛え上げた「トライトン」には発売当初にオンロードとオフロードで試乗した。 フレームシャシーにボディを載せた構造で、荷台に最大積載量500kg(実際にはもっと積まれてしまうことも想定している)を確保すべくリアの板バネを硬く設定しなければならないトラックであることを考慮すると、オンロードでの快適性は十分に納得できるもので、それでいてオフロードでは見た目を裏切らないタフな走破性を見せてくれたことを、自分の運転でも、パリダカチャンピオンの増岡浩さんが操るクルマの助手席でも確認している。 今回、北海道の雪上オフロードコースで試乗した。一部土が露出した圧雪路で、コーナーとアップダウンが入り乱れるハンドリングコースだ。タイヤはブリヂストン「ブリザックDM-V3」。トライトンは三菱が「スーパーセレクト4WD-II」と呼ぶセンターデフ式の4WDを採用する。 「4H(ハイギアでセンターデフオープンの4WDモード)」、ドライブモード「ノーマル」でスタート。2.4L直4ディーゼルターボエンジンはよくできた6ATの助けもあって、車重2140kgの巨体をなんなく加速させる。 最初のコーナーの手前で速度を落としてステアリングを切り込むと、ブリザックがしっかりと路面をつかみ、外に膨らむことなく狙ったラインを走行することができた。これで一気に安心感が高まり、ペースを上げる。 4WDの永遠の悩みは、直進時のトラクション能力を優先すると旋回性能が落ちてしまうことだが、トライトンは旋回時に必要に応じて内側前輪のみにブレーキがかかる「AYC(アクティブ・ヨーコントロール)」が機能することで高い直進性と旋回能力を両立する。 これが効果絶大で、タイヤのグリップ限界を超えない範囲で走行すればスムーズに旋回させてくれる。ドライバーに「自分の運転がうまいから曲がることができている」と感じさせる優秀な黒子だ。 >>“三菱四駆”の圧倒的な雪での走りを写真でチェックする ◎あわせて読みたい: 悪路で光る圧倒的なタフネスさ次に「4HLc(ハイギアでセンターデフをロックした状態)」を選ぶ。 直進時の挙動は4Hと同じだが、コーナーの出口で加速する際に頼もしいトラクション能力を味わわせてくれた。センターデフをロックすると前後輪の回転数が同じになるため、厳密には旋回能力が落ちるが、雪上だと内輪がスリップすることで4輪の回転差が相殺され、ステアリングを切った状態で加速してもギクシャクすることはない。 今回のコースではセンターデフオープンのままでも走破できたが、より凹凸の激しい場面などではセンターデフロックが助けになるはずだ。 「4LLc(ローギアでセンターデフをロックした状態)」も試した。ハイギア選択時にはトルク不足で不可能だった、きつい勾配の登坂路での一旦停止後の再発進ができた。ローギアによって大きなトルクを路面にじんわりと伝えることができたからにほかならない。 >>“三菱四駆”の圧倒的な雪での走りを写真でチェックする さまざまな雪上オフロードを走行し、低ミュー路での悪路走破性の高さも確認できた。けれど今回最も感心したのは、トライトンのシャシーフレームの堅牢さだ。 完全に新設計された断面の大きなラダーフレームは路面の凹凸による大きな入力を繰り返し受けても一切へこたれない。巨大な穴凹に車輪を落としたり、ジャンプ台のようになっているところへ勢いよく進入し、前2輪が完全に浮いてからドスンと着地しても、何事もなかったかのようにやり過ごすのには驚かされた。 トライトンはオンロードでの快適性を確保するため、フロントにリジッドアクスルではなく一般的には乗用車向けの独立懸架(ダブルウィッシュボーンサス)を採用するが、サスアームが頑丈で取り付け剛性も高いのだろう、入力を受けた際に大きな音こそすれど、各メディアが酷使し続けても状態が変わることがなかった。 空荷で雪上オフロードを走り回って楽しむのがトライトンの本来の目的ではないが、荷物満載で世界の悪路で酷使されることを想定して開発したクルマだからこそ、遊んでも頼もしく楽しめるのだろう。 (終わり) ◎あわせて読みたい: |
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