先代モデルは末期でも現行モデルより売れていた2023年10月にフルモデルチェンジして、3代目となった「N-BOX」。軽自動車(以下、軽)最長のホイールベースによる広大な室内空間を武器に、ホンダの屋台骨を支える軽スーパーハイトワゴンですが、3代目となってから、販売台数が伸び悩んでいるのではないか…という指摘があります。それは果たして本当でしょうか。 3代目としては初のフルイヤー販売となった2024年のN-BOXの販売台数は20万6272台。登録車を含めた国内の乗用車販売台数では3連覇、軽乗用車としては10連覇という強さを誇ります。 ただ、2代目モデルが9月末まで販売されていた2023年のN-BOXの販売台数は23万1385台でした。つまり、N-BOXはフルモデルチェンジ直後の年に、販売台数は逆に10%以上減少(=前年比89.1%)してしまったわけです。 >>N-BOXとスペーシアの各モデルをフォトギャラリーで見る (次のページ|売れなくなった理由はデザイン?) |あわせて読みたい| 販売が伸び悩む理由はシンプル過ぎる内外装?そんな3代目N-BOXの弱点として、内外装の“質感が低下した”という指摘が目立ちます。オシャレ家電製品のようなシンプルさを表現したという3代目のエクステリアでは、2代目で多用されていたメッキ加飾を意図的に減らしています。 ただ、シンプルすぎるがゆえに「地味で物足りない」、「先代モデルよりも安っぽくなった」といった声のほか、カスタムモデルについては標準ボディとの差別化が不十分で、存在感に欠けるとの意見が少なくありません。 >>N-BOXとスペーシアの各モデルをフォトギャラリーで見る インテリアでは、フル液晶のインホイール(=ステアリングホイールの内側から見えるタイプ)メーターを採用し、ダッシュボードの高さを70mm下げてフラット化することで前方の視認性が向上。姿勢や視線の乱れを少なくするなど、乗り物酔いを防ぐ工夫も施されています。グレードによって、コルクや大理石の質感を表現したインパネトレーを採用するなど、質感にもこだわっています。 しかし、2代目モデルの上下に厚みのある立体的な造形と比べると、表面的で控えめな印象となり、ここでも物足りなさを感じるユーザーもいるようです。 実用面では、従来比2倍以上の容量を誇る大型グローブボックスや、後席の大型サイドポケットを採用する一方で、フロントのドアポケットが少なくなるなど、収納そのものの数は減りました。また、助手席前のトレイは小さく、ティッシュボックスが置けない点も気になります。気軽に物が置ける大型のオープントレイを採用した2代目モデルや現行スペーシアとは対照的です。 その他にも、足元を広く見せる効果がある一方で好みが分かれる2本スポークステアリングの採用や、初代から2代目まで採用されていたプラズマクラスターの廃止、ターボモデルではスピーカー数が8個から6個に減らされたことなども、ユーザーは「コストダウンされた」という印象を受けてしまうかもしれません。 (次のページ|売れなくなった理由はライバルの進化?) |あわせて読みたい| ライバルが大幅に魅力アップしたことも要因に今回の3代目N-BOXのデビュー翌月となる2024年11月には、ライバルである「スズキ スペーシア」がフルモデルチェンジされ、N-BOXにはないマイルドハイブリッドを全車に搭載して、さらに軽量ボディも相まって、売れ筋の「ハイブリッドX」や「同G」のスズキコネクト搭載車で23.9km/L(WLTCモード)という低燃費を誇ります。 >>N-BOXとスペーシアの各モデルをフォトギャラリーで見る 一方、マイルドハイブリッドを持たないN-BOXでいうと、売れ筋の「G」のWLTCモード燃費は21.6km/L。実燃費は少し差が縮まるとの体験談もありますが、カタログ燃費でスペーシアにやや負けているのは事実です。 さらに、スペーシアはリアシートに新機軸の「マルチユースフラップ」を採用。フラップの位置や角度を調整することでオットマンのように使用できるほか、反転させることでシートに置いた荷物の落下防止にも使えます。また、ステアリングヒーターや車内の冷暖房効果を向上させる「スリムサーキュレーター」など、スペーシアにはN-BOXにはない、「一度使ったら手放せなくなる」と評判のアイテムも用意されます。 (次のページ|N-BOXジョイ投入の効果は?) 期待のN-BOXジョイでも販売台数減少が止まらないそんなN-BOXですが、3代目のデビューから約1年が経過した2024年9月に、アウトドアテイストを強調した「N-BOX ジョイ」が追加されました。ブラックの無塗装樹脂を取り入れたエクステリアに加え、撥水機能をもつチェック柄シートを装備したジョイはいわば、スペーシアで大人気のバリエーション「スペーシア ギア」の対抗商品ともいえます。 しかし、実際のジョイはリアシートバックにパネルを内蔵するなどして、リアシートを倒した時の広大な空間でまったり過ごせる「ふらっとテラス」を最大のウリとしています。最近流行のSUV的なワイルドさより“リラックス感”を前面に押し出すあたりは、ホンダならではのこだわりでしょう。 >>N-BOXとスペーシアの各モデルをフォトギャラリーで見る ジョイの追加によって販売台数の上乗せが期待されたN-BOXですが、発売の実際の販売台数は、2024年10月が1万6821台で前年同月比73.3%、11月は1万8028台で同85.5%、12月は1万4849台で同75.4%と、前年同月比での台数減が続いています。少なくとも販売台数では、9月に発売されたジョイの効果は見られてない……というのが正直なところです。 一方、スペーシアは好調です。現行スペーシアにギアが追加されたのは、N-BOXジョイと同時期の2024年9月で、翌10月の販売台数は1万4234台で前年同月比150.8%、11月は1万4472台で同126.9%、12月は12,543台で同113.1%と、ギア追加の効果がしっかりと感じられる数字を残しています。 さらに、2024年全体でも16万5679台で前年比135.1%と、絶対的な台数ではN-BOXには届いていませんが、“伸び”という意味では前年比マイナスだったN-BOXとは対照的です。 (次のページ|売れなくなった理由はライバルの進化?) |あわせて読みたい| N-BOXは“わかりやすい”上質感やコスパ感が必要超キープコンセプトのN-BOXが、デザインや装備面ともに進化が控えめで、代わり映えしない一方、スペーシアは内外装を大きく変更し、新たな装備を追加するなど、「わかりやすい新しさ」を訴求することでユーザーに受け入れられていると言えます。 また、見た目の車両本体価格はN-BOXと大きな差がなさそうに見えますが、2トーンカラーやナビシステム、マルチカメラ、シートバックテーブルなどの主要装備内容を揃えると、トータルではスペーシアが割安になります。 >>N-BOXとスペーシアの各モデルをフォトギャラリーで見る ホンダの国内販売台数は今や約4割が軽。その象徴たるN-BOXは今もトップ人気の座は守っていますが、その背後にスペーシアがひたひたと迫ってきているのは事実。わかりやすい質感表現や、装備内容に対するコスパ、ギアのようにしっかりと稼げる新バリエーションなどなど、N-BOXが不動の横綱であり続けるには、次なる一手が求められているかもしれません。 (終わり) (写真:ホンダ、スズキ、ダイハツ、三菱) |あわせて読みたい| |
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