最新のVW「ゴルフ“8.5”GTI」に試乗1月10日より、マイナーチェンジを実施した新しいフォルクスワーゲンの「ゴルフ」が発売となりました。8世代目モデルの改良型ということで、いわゆる「ゴルフ8.5」と呼ばれるモデルです。今回は、その最新の「ゴルフ8.5」の「GTI」グレードに試乗したのでレポートします。 マイチェン前の「ゴルフ8」は、2021年6月に8年ぶりのフルモデルチェンジとして、日本での販売が開始されました。先代「ゴルフ7」からプラットフォームやパワートレインを受け継ぎつつ、デジタル化、電動化、ドライバーアシスタントシステムという点で大きく進化しています。スイッチ式のシフトノブを採用し、48Vマイルドハイブリッドを採用したのがトピックでした。 そんなゴルフ8からゴルフ8.5への進化は、シャープなヘッドライトを含む前後のバンパー周りのデザイン変更と、12.9インチの大型タッチディスプレイを伴う新インフォテイメントシステムなどのインテリア採用、そしてパワートレインの改良と整理です。 >>新型ゴルフGTIやゴルフRの内外装をフォトギャラリーで見る そして「ゴルフGTI」に関しては、他グレードと同様の基本部分の進化に加え、エンジンパワーが20馬力アップされています。ゴルフGTIの価格は549万8000円~で、2021年12月にマイチェン前のモデルが日本導入された時と比べると、約80万円の価格アップとなります。 では、そんなゴルフGTIのレポートの前に、より内容を理解するために、「GTIってどんなクルマ?」という背景を説明しておきましょう。 |あわせて読みたい| 元祖“庶民のための”高性能GTゴルフGTIは、その初代が1975年のフランクフルトモーターショーでデビューしました。ゴルフという大衆車でありながらも非常に高性能で、「大衆車で唯一、アウトバーンの追い越し車線を走り続けられるクルマ」などと高い評価を得ます。 その後も、庶民のための高性能GT(グランツーリスモ)として世代を重ね、スポーツモデルとして「シビックタイプR」と、ニュルブルクリンク・サーキットでFF世界最速の座を競うこともしています。 ただし近年は、より高性能な「ゴルフR」が登場したことで、ポジショニングが微妙に変化しました。 ゴルフRは、強力なエンジンと4WD駆動を採用することで、クラスを超える速さを手に入れた“スーパーゴルフ”です。最新のゴルフRの出力は最高出力245kW(333PS)にもなり、ゴルフGTIの195kW(265PS)を大きく上回っています。 >>新型ゴルフGTIやゴルフRの内外装をフォトギャラリーで見る つまり、速さだけならゴルフRが最強となるのです。そのため近年のゴルフGTIは、“速さ”ではなく“スポーティさ”を重視するクルマとなっています。 |あわせて読みたい| 伝統を受け継ぎつつモダンに進化そんな歴史を踏まえて、最新のゴルフGTIを見れば、やはり伝統を大切に受け継いでいることがわかります。 グリルの赤いラインに備わるGTIエンブレムは、歴代モデルのお約束的なワンポイントです。試乗車は、オプションとしてダンパーの伸びと縮み側の両方を任意にコントロールできる「アダプティブシャシーコントロール“DCC”(以下、DCC)」と、235/35R19インチのアルミホイールを装着。精悍なルックスとなっています。 室内に目を移せば、グリルと同じように赤をワンポイントに使ったインテリアとなっています。タータンチェックのファブリックシートも伝統のアイテムで、座面が硬く、幅広く四角いシートも歴代モデルと同様です。 >>新型ゴルフGTIやゴルフRの内外装をフォトギャラリーで見る 赤いステッチがあしらわれたレザーステアリングを握れば、ゴルフGTIの歴史を感じて、気分が盛り上がります。レザーではなくファブリックが標準というのも、庶民のGTらしいところで、個人的に気に入っている部分です。 インテリアは、12.9インチもの大型タッチディスプレイや新加飾などで質感がアップしています。新しいインフォテイメントシステムのカーナビ操作も日本車と近いものになり、使い勝手が大きく向上しました。 全体にGTI専用デザインが採用されていますが、それほど派手ではありません。人の目も気になる、おじさん世代としては、この控えめさも嬉しい部分です。 |あわせて読みたい| 走りは全然スポーティじゃない…!?走り出して、意外な乗り心地の良さに気づきます。 DCCがあるため、やんわり~シャキシャキまで、幅広いダンパーの調整幅があることが効いているのでしょう。極薄の235/35R19タイヤの堅さもそれほど気になりません。DCCの設定を柔らかくしておけば、助手席や後席の家族からのクレームなしのドライブも可能なはず。 また、広い荷室は通常グレードと同様ですから、実用性が相当に高いのも特徴です。スポーティなのに実用性も十分というのも、ゴルフGTIの伝統のひとつと言えるでしょう。 >>新型ゴルフGTIやゴルフRの内外装をフォトギャラリーで見る そして、運転していて何よりも楽しいのがエンジンでした。1984ccの直列4気筒ターボのガソリン・エンジンは、最高出力195kW(265PS)/5250~6500rpm、最大トルク370Nm/1600~4500rpmというスペック。トランスミッションは7速DSGです。 街中を流れに乗って、のんびりと走っていれば、音も小さく軽く、それほどトルク感もありません。ステアリングの手応えも軽いので、全体に軽くフラフラするくらいです。乗り心地が良いことも手伝い、「全然スポーティじゃないなあ」というのが正直なところ。ところが、いざアクセルを強めに踏み始めれば、一瞬のタメの後に、グイグイとトルクが増大して、加速力も高まり、エンジン音も勇ましくなります。面白いのは、エンジン回転数一定のまま、ターボの過給圧が高まることでトルクが増大してゆくところです。 過給が上がるほどにトルク=加速力が増してゆくのです。その湧き上がるような力感は、とにかく気持ちいい! この伸び感がディーゼルとは異なります。メーターを見ると、たいした速度は出ていません。それでも、一瞬の加速感だけで十分に楽しさを感じることができました。 ちなみに、エンジン音は勇ましいけれど、音圧も音量も抑えめで、やかましくありません。これも嬉しいところです。 そんな楽しさに気づいてしまえば、ステアリングの軽さは、軽快さにつながります。ワクワクするような加速感もあり、ドライブが一気に楽しくなります。 ただし、今回の試乗は首都圏の高速道路中心だったので、ワインディングでゴルフGTIならではの電子制御式ディファレンシャルロック"XDS"を試すことができませんでした。グイグイと曲がるゴルフGTIを試すのは、次の機会を待つことになります。 走れば楽しいけれど、実用性も十分。スパルタンではなく、家族と一緒のドライブもこなせます。そして、派手さを抑えたデザインは、若者だけでなく、おじさん世代にも受け入れられるもの。 最新のADAS系やインフォテイメント系機能もしっかり押さえられています。スポーティでありながら、幅広い人たちに受け入れられる、そんな懐の深いクルマ、それがゴルフGTIでした。個人的には相当に気に入っています。 (終わり) (写真:鈴木ケンイチ、フォルクスワーゲン) |あわせて読みたい| |
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