レクサス「GX」に一足早く試乗した1989年にトヨタがアメリカ市場向けに立ち上げた新高級車ブランド「レクサス」。 立ち上げ時には「LS」と「ES」の2車種のみだったが、その後「SC(1991)」、「GS(1993)」、「LX(1996)」、「IS(1998)」とラインアップを拡大。中でも1998年に登場した「RX」は「高級車×SUV」を世界で初めて具現化させたモデルとして有名だ。 その一方、レクサスの重要なマーケットである北米からは「直球勝負のプレミアムSUVも欲しい」という要望もあったと聞く。今では当たり前のクロスオーバーSUVだが、当時は変化球……。恐らく、LXだけではユーザニーズを受け止められなかったのだろう。 そこで2002年に登場したのが「GX」である。「ランドクルーザー」譲りの高い走破性と扱いやすいボディサイズ、更にレクサスならではのしつらえの良い内外装などが高く評価された。 2009年に登場した2代目はよりレクサスらしさを表現。メインマーケットの北米に加えて世界の約30の国と地域で販売され、2023年3月末までに累計約54万台を記録している。 >>レクサス「GX」を写真で詳しくチェックする ◎あわせて読みたい: ついに日本導入される3代目「GX」そんな中、2022年に14年ぶりにフルモデルチェンジされたのが3代目である。このモデルはGXにとって大きなターニングポイントとなったが、その理由は大きく2つ。 1つ目は、3代目にして初となる日本への導入だ。従来モデルもリクエストが多かったと聞くが、当時は「LXとキャラクター分けが難しい」という判断だった。それをブレイクスルーできたのは、2つ目の理由「GXの立ち位置の変化」だろう。 初代/2代目は本格オフローダーと言いながらも、あえて土の匂いを消したキャラクターだったが、3代目は逆にそこを全面にアピール。 開発チームは「新型は『レクサス“本格”オフローダーの“ど真ん中”を作る』をコンセプトに、単なるモデルチェンジではなくプレミアムSUVのゲームチェンジャーになるべく開発を行なった」と語っている。要するにSUVとしての原点に戻った……と言うわけだ。 ちなみにレクサスは現在、大自然と共生しながらアウトドアライフスタイルを彩るクルマの楽しさと、様々な体験を提供する「OVERTRAIL PROJECT(オーバートレイル・プロジェクト)」を推進中だが、このGXがその中核モデルとして引っ張るそうだ。 日本では当初、2024年6月に限定100台の「GX550 オーバートレイル+」を抽選販売、通常モデルは2024年秋に発売予定という計画だったが、トヨタの認証不正問題をきっかけに発売を延期……。しかし、この度ついにと言うかやっとと言うか、もう間もなく発売されると言う情報が流れてきた。 それに合わせて、昨年先行発売された「GX550オーバートレイル+」に試乗することができたので報告したい。これから発売される通常モデルとは法規対応や細かい仕様の違いはあるが、基本は同じスペックである。 >>レクサス「GX」を写真で詳しくチェックする ◎あわせて読みたい: 全体的なまとまりの良さは「LX」を超えるエクステリアはエッジの効いたスクエアフォルムで、ドシっと構えたスタンスの良さが特徴だ。随所に新世代レクサス共通のモチーフも盛り込まれるが、単なる意匠でなく本格オフローダーに必要な機能を伴ったデザインだという。 開発チームは「オフロード走行時に破損をさせないための灯火類の配置、グリルと融合させたプロテクター形状など、全てのデザインに意味を持たせた『機能的スピンドルボディ』を実現させました」と語る。まさにレクサスの品を損なうことなく“ワイルド”と“ゴツさ”を備えたデザインと言える。 フロントオーバーハングが短く凝縮感あるデザインのため写真だとコンパクトに見えるが、実際のボディサイズは全長以外LXとほぼ同じ。先代と比べるとかなりのサイズアップだが、ドアミラー形状の工夫で「ミラー to ミラー」は先代モデルよりも短い上に、見切りのいいボディ形状も相まってリアルな取り回し性はサイズ以上に良い。 インテリアはNX/RXに通じる「TAZUNAコクピット」を踏襲したデザインを採用するが、インパネ上部はフラット形状(クルマの傾きを正確に知るため)、シフト周りに走行系スイッチを集約(確実に操作できるため)、シャッター付きカップホルダーの採用(中の小物をぶちまけないため)、使用頻度の高いスイッチはタッチパネルではなく物理スイッチにする(直感操作を重視)など、エクステリア同様全てに意味があるデザインで、全体的なまとまりの良さはLXを超える。 後席は、トヨタ/レクサスのリアルオフローダー黄金比となるホイールベース2850mmを踏襲しているので、ボディサイズの割には広々スペースとは言えないものの、必要十分な足元スペースは確保されている。ちなみにこのモデルは2列仕様(=5人乗り)だが、海外向けには3列仕様(=6/7人乗り)も用意される。 パワートレインはLX譲りのV6 3.5L直噴ツインターボガソリンエンジン+10速ATを搭載するが、GXに合わせて小型タービン&専用制御の採用によりレスポンス重視の専用特性。 353ps/650Nmのパフォーマンスは2480kgの重量級ボディを軽々走らせる余裕を持つだけでなく、LXよりもターボラグが少ないシームレスなトルク特性と高回転までストレスなく吹け上がる伸びの良さはスポーティ。 ただ、エンジンサウンドはレクサスを考えるとやや主張が大きめで、個人的にはもう少し抑えるもしくは音質を整えたいところだ。 >>レクサス「GX」を写真で詳しくチェックする ◎あわせて読みたい: 本格オフローダーであることを忘れるフットワークシャシー系は基本素性に優れる「GA-Lプラットフォーム」+強化された車体の組み合わせに加えて、専用セットの「AVS(電子制御ダンパー)」、「EPS(電動パワーステアリング)」、「E-KDSS(前後スタビライザーを電子制御するシステム)」と、トヨタ/レクサスの本格オフローダーに与えられた武器を全て盛り込んでいる。 基本的にはグローバル1スペックだが、タイヤのみ日本の法規対応のために265/70R18のオールテレーン(TOYOオープンカントリー)から265/65R18のオールシーズン(ダンロップ・グラントレック)に変更されている。 その走りは、操舵応答やクルマの動きにボディオンフレーム特有のダルな所をLX以上に感じないレベル。 穏やかだがダイレクト感のある操作系と、無駄なロールを抑えながら4輪を上手に使って綺麗に旋回するコーナリングの様は、下手なモノコックのクロスオーバーSUVより優れており、このクルマがリアルオフローダーであることを本当に忘れるオンロードのフットワークと言っていい。その結果、実際に走らせていると感覚的にはより小さく/より軽く感じたほど。 この辺りは、低重心&重量バランスに優れる基本素性に加えて、E-KDSSやAVSなどの制御モノの相乗効果、更にはLXとは異なるGXの走りの味付け(LXはゆったり、GXは俊敏)も効いているはず。ちなみにタイヤ変更は舗装路を走る上ではいい方向に効いているようで、北米仕様に対して各部の薄皮を2~3枚剥いだかのようなスッキリした精度を実感した。 乗り心地は、入力が優しくショックをスッと抑えて無駄な動きを出さない絶妙なセットアップになっているが、細かい凹凸が続くようなシーンではバネ上が落ち着かずヒョコヒョコした動きが僅かに残るのが気になった。このあたりはハンドリングとは逆にタイヤ変更が悪い方向に効いてしまったと予想する。 総じて言うと、デザインや走りに加えて、自分事になれる雰囲気も含めた総合力の高さはLX以上で、レクサスSUVシリーズの中核を担う存在と言っていい。 GXの日本導入でレクサスは同サイズの本格オフローダーを2車種持つわけだが、見た目/走りを含めてフォーマルなLX、アクティブなGXと各々の「役割」は明確なので心配無用。これもある意味“群戦略”と言える。 ただ、一つだけ心配なのはLXと同じく供給面で、欲しい人がちゃんと買えるような体制をシッカリと築いてほしい。 (終わり) >>レクサス「GX」を写真で詳しくチェックする ◎あわせて読みたい: |
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