その1|安全のため“わざと”出している通報音クルマにさほど興味のない人は「EVはほぼ無音で静か」というイメージを持っているかもしれませんが、実際には様々な音を出しています。 EVが走行するとき、ドライバーや乗員、周囲の人に届く音には、大きく分けて3種類の音が存在します。 まず、低速で走行中に電気回路から発生しているような、「ウィーン」「ルルルル」「ヒューン」といったSF映画に出てくるような音が聞こえることがあります。これは主に「車両接近通報装置」が出している音です。 車両接近通報装置というのは視覚に障害があって音でしか車両の存在に気付けない人に向けた機能で、おおよそ20km/h以下の低速時に、車外に向けて音を出しているのです。この音はEVのほか、エンジンをかけずに走れるハイブリッドカーにも備わっています。 >>この記事のフォトギャラリーはこちら |あわせて読みたい| その2|モーターやインバーターが変形や振動する音しかし、速度が上がり、車両接近通報装置が音を出さない領域でも、「ファーン」や「キーン」、「ヒューン」といった高周波音が聞こえてくることがあります。こうしたノイズは主に電気駆動系が発生しているもので、複数の原因が考えられます。 もっとも大きな要因はモーター自体が発しているノイズです。ご存知のように、EVに使われているモーターのほとんどが電磁石を使っています。電磁石というのは金属に電気を流すことで磁力を発生させるものですが、その磁力で金属がわずかに歪みます。 これを専門用語で「磁歪(じわい)」といいますが、電磁石を動かす電流は一定ではないので、金属が歪んだり戻ったりを繰り返すことになります。歪み自体は100万分の1程度のわずかなものですが、変形によって特定の周波数のノイズが発生するわけです。 また、モーターに流す電流や電圧をコントロールするインバーター内部でも振動が発生します。このインバーターの音は「ドレミファ音」などとして、電車好きの人たちの間でも有名ですね。 これら複合的な要因によってモーター周りからの高周波ノイズが生まれているといえます。 >>この記事のフォトギャラリーはこちら |あわせて読みたい| その3|操縦フィールを高めるために作っている音こうしたノイズについては、モーターの構造やインバーターの工夫によって抑えることもできますが、最近はこのノイズをドライバビリティ(運転のしやすさ、操作性)の向上に活用するというアプローチも盛んです。 エンジン車では、アクセル操作とエンジンサウンドがリンクして、ドライバーがパワートレインの働き具合を感じ取るように、モーターの駆動感を伝える「疑似サウンド」を車内に流す機能を与えられたEVは少なくありません。駆動システム由来の高周波ノイズだと思っていたら、メーカーが積極的に作り込んだサウンドである可能性が高いわけです(もちろんエンジン車でも音は作り込まれています)。 ほかにも、高速走行時にはエンジン車と同じように、EVも風切り音やタイヤ由来のノイズが大きくなります。エンジン車より駆動系のノイズ音量が小さいEVは、こうした走行ノイズが耳に届きやすくなるので、「エンジン車よりタイヤがうるさい」という印象を持つ人がいるかもしれませんが、多くの場合はEVの駆動系が静かなゆえに、風切り音やタイヤノイズが目立ってしまっているというのが現実でしょう。 モーターとタイヤをつなぐ駆動系にはギア(歯車)なども使われていますから、そうした機械が発生するメカニカルノイズもゼロではありません。ただし、駆動ギア由来のノイズは他の要因で生まれるノイズほど耳に届かないことが多いように感じます。 たしかに、初期のEVにおいては電気駆動系によるノイズが隠しきれていないモデルもありましたが、最近のモデルについては低速では車両接近通報装置の音、加速時などには運転感覚をわかりやすくするために作られた疑似サウンドのほうが耳に届いているケースが多い印象があります。 >>この記事のフォトギャラリーはこちら (終わり) (写真:アフロ、トヨタ、ポルシェ) |あわせて読みたい| |
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