マセラティ初の4WD、その実力は?昨年、日本市場にも導入されたマセラティのハイパフォーマンス・ラグジュアリーサルーン、「クアトロポルテ」と「ギブリ」。クアトロポルテは先代よりボディサイズが大きくなり、上級セグメントへとシフト。そして、新たにEセグメントに導入されたのがギブリだ。さらにこの2モデルには、マセラティ初となる4WDモデル「Q4」もラインナップされていた。いずれも、3リッターV6・ツインターボエンジン搭載モデルにのみ設定される。 さて、今回「クアトロポルテ S Q4」と「ギブリ S Q4」のウインターテストドライブが、イタリアのチェルビニアで開催された。聞いたことのない地名だったが、行ってみれば、目の前にそびえ立つのはマッターホルン。スイスではマッターホルンだが、イタリア側はチェルビニアと呼ぶという。ヨーロッパでは有名なスキーリゾート地だ。 インプレッションの前に、簡単に「Q4」の4WDシステムについて説明しておこう。Q4は通常フロント0:リア100のリア駆動で、必要に応じて最大でフロント50:リア50までトルク配分される、オンデマンド4WDである。マセラティらしいハンドリングと、燃費を考慮して、この軽量コンパクトなシステムを採用したという。ちなみに、FRモデルに対する重量増は60kgに抑えられている。 もう一点、注目すべきは、Q4でも前後重量配分が50:50であること。マセラティは、とかくデザインやサウンドが注目されがちだが、そのルーツはレースであり、今年100周年を迎える歴史と伝統があるメーカーだ。先代まではトランスアクスルを採用するほどのこだわりを見せた。新型はATのみとなったが、やはり50:50は踏襲されている。しかも、FRのみならず4WDになってもそれを実現しているのだ。 大きくなってもスポーツカーのDNAは不変【クアトロポルテ S Q4】さて、試乗の朝、外気温はマイナス5度。リゾート地だけあって、一般道はキレイに除雪されている。まずは、特設の圧雪コースから試乗を開始した。ストレートとヘアピンコーナーが組み合わされた、比較的シンプルなコースだが、アップダウンや道幅の狭いところもあり、所々アイスバーンもあり、と油断ならない。 まずはクアトロポルテに乗る。通常モードでは、電子制御システムMSP(マセラティ・スタビリティ・プログラム)が積極的に作動し、安定して走れる。次に、I.C.E(Increased Control Efficiency=制御効率向上)モードを試す。I.C.E.は、燃費向上だけでなく、滑りやすい路面条件下での走行も含めたセッティングだという。このモードでは、通常モードほど電子制御の存在は感じられず、特にアクセルを踏んだ時には多少雪を掻きながらもクルマが進む。 そして、電子制御を完全オフにして走る。全長5270mmのボディは、雪道でも存在感充分。というより、かなり大きさを感じる。だが、走り始めると、そのホイールベースがギューッと縮まったのではないかと思うほど軽快な走りを見せた。そしてその挙動は、まるでFRのよう。ヘアピンの進入で一気にアクセルをフラットにして、リアが滑ったらアクセルオフ&カウンターステア、クルマの向きが変わったらアクセルオンという、FR同様のドライビングスタイルを愉しめる。直進時の力強いトラクションこそ4WDらしさを感じるが、タイミングによってアンダーステアもオーバーステアも出る。 電子制御を効かせた状態では、トルクベクタリングも作動する。それでも、アクセルを踏んでいれば勝手にクルマの向きが変わってくれる、というほど積極的な制御ではない。ラグジュアリーなサルーンカーだが、やはりその根底にはドライバーオリエンテッドなスポーツカーのDNAがあることを再認識した。 ■【雪上試乗】クアトロポルテ S Q4 よりアグレッシブでシャープな反応【ギブリ S Q4】一方のギブリは、基本的にはクアトロポルテと同様の傾向だが、さらにスポーティな動きだ。同じエンジンを搭載していて、全長が300mm短く、ホイールベースが170mm短く、そして重量が60kg軽いのだから、当然といえば当然だが……。 クアトロポルテは車格に見合った、まったりとした動きなのに対して、ギブリは操作に対してよりシャープに動く。とはいえ、過剰なトリッキーさはなく、上級サルーンカーらしさはちゃんとある。いずれにしても、一般道では電子制御をオフにして走ることはないが、ラグジュアリーサルーンでありながら、スポーツカーさながらの基本性能を備えているのを確認できたのがうれしかった。 この後、一般道も試乗した。もちろん、セーフティデバイスはオンのままで。除雪されているとはいえ、気温は氷点下。どんな罠が潜んでいるか油断できない環境下だったが、常に安心・快適なドライブだった。ハイパフォーマンスをラグジュアリーなエクステリア&インテリアで包み込んだ独特の雰囲気を醸し出すマセラティ・ワールドに浸り、しばしゴージャスな時間を堪能できた。 ■【テクロノジー】マセラティ Q4システム |
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