“究極のタイヤ”はもう完成している!?よくタイヤを取材する際、開発エンジニアに必ず「例えば、1本100万円とか、コストを度外視してよいということになれば、ドライでもウェットでもハイグリップで、ころがり抵抗も少なく、かつロングライフのタイヤをつくることはできますか?」と質問する。 今回、横浜ゴムのエンジニアに尋ねると「技術的には相当の性能を誇るタイヤをつくることができると思います」と応えてくださった。つまり、タイヤの性能はまだ向上の余地を残しているということ。現段階では、まだその“理想のタイヤ”は商売できる価格では生産できないものの、年々、コストを抑えたまま少しずつ性能を向上させ、一歩ずつ理想のタイヤに近づいているということだろう。 新しいタイヤをテストする度、必ず以前のタイヤよりも明確に進化していることに驚かされる。本当はもう、タイヤメーカーはすり減らず、硬化せず、ハイグリップかつ低転がりで、なおかつロングライフという究極のタイヤを完成させているのに、一気に出しちゃうとそれ以降タイヤが売れないから、ライバルを横目に見つつ、少しずつ進化させているのではないかとうがった見方をしたくなる。そのことをエンジニアに伝えると「冗談じゃありませんよ~。毎回、苦労して苦労してようやく求める性能に達するんですから!」と怒られた。 というわけで、横浜ゴム「ブルーアース」シリーズの新製品2種をテストした。 転がり抵抗AAAを獲得&手応え十分【ブルーアース・AE-01F】転がり抵抗の少ない低燃費タイヤ「ブルーアース・AE-01」のモデルチェンジ版「ブルーアース・AE-01F」。従来のAE-01は、コンパクトカーをはじめとするベーシックカーに適した低燃費タイヤで、JATMA(日本自動車タイヤ教会)が定めるタイヤラベリング制度では、転がり抵抗性能が5段階中2番目のAA(ダブルエー)だった。これが新しいAE-01Fでは最上位のAAA(トリプルエー)に進化した。 AE-01Fは、トレッドパターンや内部の構造はAE-01のデザインを踏襲しているが、AAA獲得のため、コンパウンドを改良。耐摩耗性能に貢献する複数のポリマーをブレンドしたほか、高分散性シリカと横浜ゴム独自の技術であるオレンジオイルを配合することで、転がり抵抗性能を向上させた。 テストコース内の高速周回路を数種類のコンパクトカーで走行した。低燃費タイヤ=グリップが低く頼りない印象を抱きがち。実際、出始めの頃の低燃費タイヤのなかには心もとないタイヤもあったが、それも今は昔のこと。120km/h前後でバンクを含む高速周回路を走行しても一切不安はない。転がり抵抗の優れるタイヤは踏面が硬く、それが乗り心地にも影響することがあるが、AE-01Fは凹凸路面も無難に通過することができた。 そして、ドライバーがアクセルから足を離すと、AE-01Fは本領を発揮する。横浜ゴムの測定によると、AE-01Fは、AE-01に比べころがり抵抗が11.4%低減した。それでいて、制動距離はドライ、ウェットともにAE-01よりも短い(ウェットグリップ性能は、AE-01F、AE-01ともに4段階中3番目の「C」)。低転がり性能がA(シングルエー)の「DNA ECOS」に比べ、JC08モードでの燃費を4%向上したという。 高速走行、スラローム、ブレーキングのどの面でも、AE-01Fは十分な手応えを感じさせた。低燃費タイヤが、低燃費に貢献する代わりにグリップ力、操縦安定性、乗り心地などの面で我慢せざるを得なかった時代から一歩進んだことを、感じさせた。 旧型でも不満は無かったが…【ブルーアース・エース】自動車用タイヤをフルラインで販売する横浜ゴムの、乗用車系のコンフォート及び低燃費部門を担うのが「ブルーアース」シリーズだ。新しくなった「ブルーアース・エース」は、転がり抵抗性能とウェットグリップ性能を、高い次元でバランスさせたトータルバランスに優れる製品。5段階中3番目となるA(シングルエー)の転がり抵抗性能を維持したまま、ウェットグリップ性能が従来のb(4段階中2番目に高い)からa(最上位)へと進化した。 転がり抵抗性能とウェットグリップ性能は相反するもので、転がり抵抗を減らせばウェットグリップは落ちやすい。エンジニアによると、ブルーアースAはAE-01F同様、従来から複数のシリカとオレンジオイルを配合したコンパウンドを採用するが、今回、転がり抵抗性能を落とさずウェットグリップ性能を上げるため、シリカとオレンジオイルを増量した。 テストでは、トヨタ・プリウス2台とVWゴルフ2台を使用。それぞれ新旧のブルーアース・エースを装着し、プリウスでウェット路面のスラローム走行、ゴルフでウェット路面の定常円旋回を実施した。 まず旧ブルーアース・エースでスラロームコースを2度走行。ステアリングを切ると素直に車体が横を向き、不満のないウェットグリップを感じさせた。が、次に新ブルーアース・エースで走り始めた瞬間、同一銘柄の新旧で低μ路面での挙動がこうも違うものかとびびった。JATMAのウェットグリップ性能指数「b」と「a」にはかなりの差があるようで、ステアリング操作に対する反応の速さ、絶対的なグリップ力がまったく異なる。 ゴルフで定常円旋回をしても新旧の性能差は歴然。新ブルーアース・エースは旧ブルーアース・エースの1割か2割増しのスピードで旋回してもグリップを保ったほか、切り増しへの対応力にも差があった。旧ブルーアース・エースだけを体験した段階ではなんの不満もなかったのに、新ブルーアース・エースを体験した後では、もう旧型に戻れない。 低燃費タイヤも重視する性能で選ぶ時代にタイヤは少なくともクルマと同じだけの歴史をもつはずだが、クルマがかなり成熟し、消費者が感じられる進化の度合いがゆっくりになってきているのに対し、タイヤはだれもが明確に感じられるレベルで進化を続ける。 もしも自分のクルマに飽きがきたら、クルマそのものを買い換えるのもいいが、タイヤを新調してみるのもひとつの手かもしれない。「ブルーアース」シリーズは、すべてが「低燃費タイヤ」のラベリングを獲得しながら、大きく分けて4種類あって、サイズラインアップも豊富なので、重視する性能に応じて好みのタイヤが見つかる可能性が高い。 |
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