出足好調のヴェゼル、ハイブリッドが86.3%を占める2013年12月20日に発表されたホンダの新型コンパクトSUV、ヴェゼルが売れている。発売後約1カ月の売り上げ台数は2万4900台というから、月間販売目標台数4000台の約6倍。もちろん新車効果で初速が伸びていることもあるけれど、多くの人がヴェゼルのようなモデルを待ち望んでいたことは確かだ。 では、人気の理由は何か? コンパクトなSUVということであれば、ヴェゼルよりひとまわり小さく、値段も少しお手頃な日産ジュークがある。ここはやはり、燃費のいいSUVが待たれていたと考えるべきだろう。事実、上記の2万4900台のうち、27.0km/LのJC08モード燃費を誇るハイブリッド仕様が86.3%を占めるという。 出足好調のヴェゼル、実際にドライブするとどんなモデルなのか。新型車試乗会で、人気のハイブリッド仕様を中心に試乗した。会場で対面したヴェゼルは、想像より大きかった。全長はフィットより340mm長い4295mm、2610mmのホイールベースはフィットより80mm長い。ヴェゼルについては、一部に「フィットをベースにしたSUV」という報道もあった。けれども、開発スタッフにうかがったところ厳密に言えば正しくない表現とのことだった。小型車の根幹となるプラットフォームがあり、そこからハッチバック(フィット)やSUV(ヴェゼル)が枝葉を伸ばすイメージだという。ちなみにヴェゼルの全幅は1770mmなので、3ナンバー車である。 ボディ下半分にタフなSUVの力強さ、ボディ上半分にクーペの流麗さを与えたというエクステリアデザインは、パッと人目を惹くアクの強さがある。片側に2灯のLEDヘッドライトを用いるキリッとしたフロントマスクや鋭いキャラクターラインなど、好き嫌いがはっきりわかれるタイプだろう。個人的には、楽しい場所に遊びに行くためのクルマであるからして、これくらい濃い顔でいいと考える。 ハイブリッドシステムの作動は実にスムーズパワートレーンはガソリンエンジンとハイブリッドの2種。ガソリン仕様は1.5Lガソリン直噴エンジンにCVTを組み合わせ、ハイブリッド仕様は1.5Lガソリン直噴エンジン+モーターに、7速DCTを組み合わせる。ハイブリッドシステムはフィット・ハイブリッドと同じ1モーター・2クラッチ方式であるけれど、ヴェゼルが直噴エンジンを用いる点が異なる。システム全体の最高出力は、アトキンソンサイクルエンジン採用のフィット・ハイブリッドが137psだったのに対し、ヴェゼル・ハイブリッドは152psに達する。そして、ガソリン仕様、ハイブリッド仕様のそれぞれにFFとフルタイム4輪駆動の駆動方式が用意される。 主に試乗したのはハイブリッドのFFモデル。中央に速度計、向かって左にシフトポジションとパワーメーター、右にハイブリッドシステムの作動状況を表示するディスプレイが配置されるメーターパネル内の眺めはフィット・ハイブリッドと変わらない。空調やカーナビをタッチパネルで操作する、スマートフォン的なインターフェイスも共通だ。 目新しいのは、スイッチで操作する電動式パーキングブレーキ。聞けば、センターコンソールが高い位置に来るSUV的なインテリアは、サイドブレーキと相性が悪いのだという。また、欧米では足踏み式のパーキングブレーキを嫌う層がいることから、電動式が採用されたとのことだった。 システムを起動してアクセルペダルを踏み込むと、ヴェゼル・ハイブリッドはモーターだけで静かに走り出した。速度が上がるとエンジンも始動して、伸びやかな加速をアシストする。走行中は、2つのクラッチが黒子のように働き、エンジンとモーターを切り離したりつなげたりする。たとえばモーターだけで走るEV走行や、ブレーキをかけた時にはエンジンを切り離す。とはいえ作動は実にスムーズで、エンジンが切り離されたかどうかは、インパネ内に表示されるインフォメーションディスプレイを確認しないとわからない。 リアクティブフォースペダルは立派な省エネ技術フィット・ハイブリッドでも感じたけれど、ホンダがi-DCD(Intelligent Dual-Clutch Drive)と呼ぶハイブリッドシステムの美点は、アクセル操作に対するレスポンスがいいところだ。マニュアルトランスミッションと同じくダイレクトにギアがかみあっているから、アクセルを踏むと間髪入れずに前に出る。また、2つのクラッチはエンジンとモーターの滑らかな連結に力を発揮するだけでなく、シームレスで素早いシフトにも貢献している。 ただし事前に何の知識も持たずにヴェゼル・ハイブリッドのアクセルペダルを踏んだ方は、ちょっとした違和感を抱くかもしれない。アクセルを踏み込み過ぎると、ペダルを押し戻すような反力を伝えるRFP(リアクティブフォースペダル)を採用しているからだ。社内のテストでは、RFPによって燃費が9%ほど向上したというから立派な省エネ技術だ。 決してイヤな感じの反力ではないし、なぜ反力を伝えるのかの理屈を知ればすぐに慣れる。ただし、ご主人は理解していても奥様は「ヘンなアクセル」だと誤解する恐れはある。意味と効果、そして作動時のフィーリングを周知徹底すべきテクノロジーだと感じた。 好みがわかれそうな乗り心地エクステリアデザインは好みがわかれると記したけれど、乗り心地も同じだ。背の高さを感じさせない敏捷な身のこなしを好ましく思う人と、SUVにしては少し硬すぎると感じる人にはっきりわかれるはずだ。ポジティブにとらえれば、タウンスピードから高速巡航までステアリングホイールを通じて確かなインフォメーションが伝わる、しっかりとした足まわりだ。高速コーナーは安定した姿勢でクリアし、タイトコーナーも軽快に駆け抜ける。ひとことで言えばスポーティな足まわり、ということになる。 反面、後席では路面からの突き上げがキツく感じられる。きびきびと走りたいドライバーにはドンピシャのセッティングであるけれど、後席でゆったり寛ぎたいという方からは不満が出るかもしれない。短時間の試乗であったけれど、タイヤの違いで乗り味はかなり変わる。前述した、しっかり走りたい人は17インチ、乗り心地重視の方には16インチをおすすめしたい。また、ハイブリッド仕様とガソリン仕様を比べたところ、基本的なフィーリングは同じであるけれど、同じ装備だと車重が90kgほど重くなるハイブリッドのほうが乗り心地に重厚感が感じられた。 シフトセレクターの根元付近にある「SPORT」ボタンを押すと、青かったメーターの縁取りが赤くなり、ハイブリッドシステムの作動状況を表示していたディスプレイが回転計に変わる。そしてエンジンが主役の、スポーティな性格へと変貌する。 「走り」が印象的だったのでそちら方面の話に片寄ってしまったけれど、パッケージングにも見るべきものがある。フィットと共通のセンタータンクレイアウトを採ることで、室内が広々としているのだ。大人4人が余裕を持って乗車することができるし、荷室も広い。 約30km/h以下で作動する自動ブレーキ(シティブレーキアクティブシステム)など安全装備も備えているし、室内は広くてよく走る。おまけに燃費が良好とくれば、人気となるのは当然だろう。扱いやすい実用車、カッコよくて運転が楽しいスペシャリティカー、広々としたミニバン、タフなSUVと、使い方によっていくつもの表情を見せる、まさにクロスオーバー車の登場である。人気があるのも理解できる。 |
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