屋久島でCO2フリードライブ1ヶ月のうち35日雨が降る、と言われるほど雨の多い屋久島。実際に雨が降るのは160日程度なのだそうだが、海岸近くから切り立つようにそびえる標高1900m級の山に湿った海風があたり、東京の3倍もの雨を降らせる。とくに山頂付近の降雨量は年間1万ミリに達し、膨大な量の水が勢いよく平野部へと流れていく。それが、映画「千と千尋の神隠し」の主人公の名前のもととなった千尋(せんじゅ)の滝や、日本の滝百選に選ばれている大川の滝など、数多くの滝を創り出した。 そんな豊かな自然条件を活かし、屋久島は島内で消費される電力のほぼ100%を水力発電でまかなっている。つまり、EVであればCO2排出量はゼロになるということ。ちなみに火力発電の多い鹿児島県の場合、発電段階での排出量を加味すると、EVのCO2排出量はガソリン車の3分の1になる。走行段階に限定すればEVはCO2をまったく出さないが、もとの電気をどう作っているかにトータルCO2排出量は左右される。水力発電をはじめとする再生可能エネルギーとEVとの相性はとてもいいのだ。 BMWがi3の試乗会を屋久島で開催した理由もここにある。どうせやるなら、CO2フリーの島でCO2フリードライブを味わってもらおうという狙いだ。公用車やレンタカーにEVを導入することで、CO2フリーに取り組んでいる屋久島には、急速充電器が4カ所、普通充電器が11カ所15台用意されている。 従来との違いをアピールする確信犯的デザイン世界の人口は今後ますます増え、都市化も進む。そんな時代のモビリティに対応するには電動化は避けて通れない。今後ますます厳しくなる環境規制(CO2排出量)にミートするにも電動化は避けて通れない。そんななか、BMWが新しく提案するブランドが「i」。その第一弾となるのがi3だ。 i3のボディサイズは全長4010mm、全幅1775mm、全高1550mm。ポロよりは大きいが、ゴルフよりは小さい。ボディの特徴は観音開きのセンターピラーレス式4ドアを備えること。構造はミニ・クラブマンと同じだが、右側のみのクラブマンに対しi3は両側に付いている。開けるときはフロント→リア。閉めるときはリア→フロントという順番を守らないといけないため素晴らしく使い勝手がいいとは言えない。けれど2ドアよりはずっと楽に後席にアクセスできる。 ご覧のようにi3のデザインはかなり個性的だ。フロントフードからルーフを経てハッチゲートまで続くハイグロスブラック仕上げもさることながら、思わず目が釘付けになるのが、従来の自動車デザインの常識を無視した大胆きわまりないサイドウィンドウグラフィックだ。流麗とは言いがたいデザイン処理ではあるが、これは完全に確信犯。従来のクルマとは違うことをアピールするのが狙いだ。 ではi3は従来のクルマと何が違うのか? EVであることはもちろんだが、単にエンジンをモーターに置き換えただけでなく、デザイン、パッケージング、素材、生産方式、ブランディングなどすべての面において革新的な取り組みをしている。その代表例がCFRP(カーボンファイバー強化樹脂)製のボディだ。 CFRPによる軽量化がもたらすものi3の構造はBMWが「ライフモジュール」と呼ぶ上屋と、「ドライブモジュール」と呼ぶシャシーからできている。ライフモジュールは軽量かつ高強度を誇るCFRP製。リチウムイオンバッテリーや出力125KWのモーター、サスペンションなどを含むドライブモジュールにはアルミを使っている。この革新的な材料と構造による軽量化効果は200kgを超え、容量22kWh(リーフは24kWh)のバッテリー重量を相殺した。 他にも鍛造アルミ製サスペンションアームや中空ドライブシャフト、19インチながらタイヤ幅155、リム幅5Jという極細のタイヤ&ホイール(転がり抵抗も小さい)など、軽量化対策は枚挙にいとまがない。さらに、組み立てを行うドイツのライプツィヒ工場には4機の風力発電機があり、生産用の全電力を風力発電でまかなっている。 ご存じのようにEVの弱点は航続距離だ。しかし大量のバッテリーを搭載すると重く、価格も高くなる。それに対するBMWの回答がCFRPとアルミを使った軽量化技術だ。i3の重量は1260kg。ほぼ同じ容量のバッテリーを積むリーフより約200kgも軽い。にもかかわらず航続距離は225kmと228kmに及ばない(ともにJC08)。となると高価なアルミとカーボンを使って200kgを超える軽量化を実施した意義はどこにあるんだろうと思ってしまうが、カタログ燃費がアテにならないのはご存じの通り。実用電費=航続距離を判断するには同条件下での比較テスト結果を待つべきだろう。 そんななか確実に言えるのは、大幅な軽量化が走行性能に大きなプラスを与えているということ。エコカーであってもドライビングの歓びは絶対に捨てないとBMWは公言している。たしかに、i3は乗って楽しいクルマに仕上がっていた。 えっ?と思うぐらいの元気っぷり随所に天然素材やリサイクル材を使った斬新な室内に乗り込み、ステアリングポストの右側にあるセレクターでDを選択して走り出す。2.5Lエンジンに匹敵する250Nmものトルクを発生するモーターと軽量ボディの組み合わせは、スムースかつ力強い発進を生みだしている。ある程度速度が乗ったところでアクセルから足を離すと強めの回生ブレーキがかかる。街中での軽いブレーキと同程度の減速Gがでるため、慣れるまでは速度を殺しすぎてしまうだろうが、慣れてしまえばブレーキをほとんど使わないで走ることが可能だ。 流れに乗って走る程度ならアクセルを半分以上踏み込むような機会はほとんどないが、あえて全開加速を試みると、えっ?と思うぐらいの元気っぷりでグイグイ速度を上げていく。高速道路への流入などではリーフを軽く引き離すだろう。かなりスポーティだ。 ハンドリングも、トレッドが大きく、かつバッテリーを床下に積んでいるため安定感がある。155という細いサイズのタイヤも思いのほかよくグリップし、厳しいコーナーが連続する屋久島のワインディングロードを結構なスピードで駆け抜けてくれた。 期待通り、というより期待以上だった曲がる能力に対し、気になったのが乗り心地だ。立体駐車場に対応するため日本仕様はサスペンションをわずかにローダウンし、スプリングも固くしている。その影響もあるのか、荒れた路面では突き上げと揺すられが少々強い。とくに後席はそんな傾向が強い。MINIからの乗り換えなら問題なしだが、3シリーズあたりから乗り換えると、後席に座っている家族から苦情が出るかもしれない。 人気のレンジエクステンダー付きか、ピュアEVかi3にはモーターサイクル用の647cc直列2気筒エンジンを搭載したモデルもあり、9Lのタンクに入れたガソリンを使うと航続距離が約100km伸びる。補助金を考慮すると価格が17万円しか変わらないということもあり、日本ではいまのところ75%の購入者がこのレンジエクステンダー付きを購入している(ヨーロッパでは33%)。 重量は130kg重くなるが走りに不足はないし、エンジン音もよく抑え込んでいる。後席だと遠くで道路工事をしているような音がかすかに聞こえてくるものの、前席ならさほど気にならない。とくにある程度速度を上げて走っている状況ならエンジン音は無視できるレベルだ。 というわけで一家に一台ならレンジエクステンダー付きをオススメするが、セカンドカー用としてなら、都市内での新しいモビリティというコンセプトに忠実なピュアEVを選びたくなる。 i3に続き、夏にはPHVスポーツカーのi8を投入するなど、BMWがiシリーズにかける意気込みは強い。i3とi8があるならi5があってもおかしくないわけで、iシリーズの展開を含め、今後BMWが電動化のトレンドリーダーとして強い存在感を発揮していくのは間違いなさそうだ。 |
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