よりロングノーズ&ショートオーバーハングにベントレーのラグジュリーグランドツアラー、コンチネンタル GTがフルモデルチェンジされた。2003年に初代モデルが誕生し、その後2010年にはセカンド・ジェネレーションへと進化を果たしたコンチネンタル GTは、1998年にVWグループに再編されたベントレーに、まさに歴史的な成長をもたらした重要なプロダクト。デビューから2世代にわたって、実に6万6000台以上のコンチネンタル GTが、カスタマーにデリバリーされている。 新型コンチネンタル GTは、まず視覚で大きな感動を与えてくれるニューモデルだ。エクステリアのデザインは、確かにこれまでの伝統的なシルエットを継承してはいるものの、フロントアクスルが先代比で130mm前方に移動し、それに対応してフロントオーバーハングが縮小されたことで、よりロングノーズのスタイルが強調されるようになった。 シャープなラインで構成されるボディサイドは、ベントレー独自のスーパーフォーミング技術を駆使したもの。これは素材のアルミニウムを500度にまで加熱して一体成型するというもので、新型コンチネンタル GTではボディサイドのすべてが、この技術によって成型されることになった。その彫刻的な美しい造形は、こうやって生まれたのだ。 大きく進化した美しくラグジュアリーなインテリアだがさらなる感動は、インフォニット・チェックアームと呼ばれる、ダンパーで開閉スピードがコントロールされるドアを開き、そのキャビンへと我が身を委ねた時に訪れる。初代と2代目のコンチネンタル GTの間には、インテリアでさほど大きな変化がなかったことを考えると、新型のそれはまさにコンチネンタル GTに、新たな時代が到来したことを物語るかのような話題に満ち溢れている。 新型コンチネンタル GTのキャビンは、とにかく美しく、そしてラグジュアリーだ。ベントレーのエンブレム、フライング「B」をモチーフに、センターコンソールから左右のドアへとシームレスに連続するラインは、ドライバーとパッセンジャーを優しく包み込み、そして上質な空間に身を置くことの幸せというものを改めて考えさせてくれる。スイス製の高級自動巻き時計の地板から発想を得たというパネル装飾の「コート・ド・ジュネーブ」、あるいは新デザインのキルティング「ダイヤモンド イン ダイヤモンド」。ベントレーが誇る熟練した職人は、これらの新たな技法を習得したことで、さらなる高みへと導かれた。 デジタル化されたメーターパネルや、センターコンソールの上部に装備することができるローテーションディスプレイには、ニューモデルとしての斬新さや高い機能性が表れている。新採用されたローテーションディスプレイは、12.3インチサイズのタッチスクリーンを表示するデジタル・ディスプレイのほかに、外気温、コンパス、クロノグラフという3個のアナログメーターをシンプルにレイアウトしたアナログ・ディスプレイ、そしてエンジンオフ時には全体がウッドパネルとなる、3タイプのデザインが楽しめるもの。デジタル・ディスプレイではインターネットへの接続はもちろんのこと、スマートフォンとの連携など、最新世代のコネクティビティが、カスタマーに提供されることになる。 走行中のキャビンは、ともかく快適な空間だ。二重ガラスを採用したサイドウインドウは、不快な周波数のノイズを効果的にカットし、またシートも標準で12ウェイ、オプションでは20ウェイの調節機能を持ち、素晴らしい座り心地を提供してくれるから、長時間の移動でも疲れは最小限に抑えられる。リアシートも短時間の移動ならば、必要にして十分と思えるスペースが確保されている。 現行V8のような後輪駆動主体のスポーティな走りを獲得キャビンで感じたニューモデルとしての新しさは、実際の走りでもきちんとそれが表現されていた。先代のコンチネンタル GTで、ベントレーはそれまでのW型12気筒モデルに加えて、新たにV型8気筒モデルを追加設定したのは記憶に新しいところ。新型ももちろん、まずW12モデルからセールスがスタートするが、その走りは、これまでのグランドツアラーたるW12モデルのキャラクターに、スポーツGTたるV8モデルのキャラクターが加わったというのが第一印象だ。 そう感じさせる理由は、おもにシャシーのエンジニアリングにあるようだ。新たに採用された3チャンバー式のエアサスペンションが持つセッティングの幅広さ、48Vの電装システムに組み合わされ、瞬時に最適なアンチロールバー制御が行われるベントレーダイナミックライド、そして先代の最終進化型となったスーパースポーツから受け継がれ、さらに制御が洗練されたトルクベクタリング。これらの新しいメカニズムと、4WDのシステムが後輪駆動主体型へと見直されたことで、アンダーステア傾向が弱まり、コーナリングマシンとしての新たな魅力が生まれたのだ。 ちなみに新型コンチネンタル GTでは、最も標準的な「B=ベントレー」のほかに、「スポーツ」「コンフォート」、そして「インディビジュアル」のドライブモードをセンターコンソール上のダイヤルスイッチで選択することが可能だが、スポーツでは前輪には最大でも18%の駆動力が伝わるのみだ。ちなみに初代コンチネンタル GTの前後駆動力配分は50:50、第2世代でもそれは40:60だった。 ベストは21インチ。W12ターボのサウンドが弱点か常に正確でしっかりとした手応えを伝える、電動パワーアシストステアリングの動きも素晴らしい。それはコーナリング時にボディの大きさを意識させない、スムーズでナチュラルなターンインをドライバーが感じる、大きな理由ともなっている。 搭載される6LのW型12気筒ツインターボエンジンは、635psの最高出力と900Nmの最大トルクを発揮するもの。これにデュアルクラッチ式の8速ミッションが組み合わされたのが、パワートレーンでは大きな話題だ。低速域から一気に大きなトルクを立ち上げ、そこから体感的にはほぼフラットに、レブリミットまで連続するトルクのフィーリングは、グランドツアラーにはベストなものだろう。ドライブモードでスポーツモードを選択すると、アクセルレスポンスはさらに鋭く、またミッションも高速域をキープする制御へと変化して、さらに走りはスパルタンなテイストになる。ただし個人的には同時にボリュームを増すエグゾーストサウンドだけは、どうしてもベントレーというブランドにはマッチしていないように感じられた。 どのような速度域でも、そしてどのドライブモードを選択しても、コンチネンタル GTはフラットな乗り心地と、圧倒的なスタビリティを崩すことはない。試乗車には21インチのタイヤが装着されており、オプションではさらに22インチタイヤも用意されるというが、ベストバランスを感じるのは、おそらくは21インチだろう。ホイールの内側に見えるブレーキも新型ではさらに強化され、ワインディングでもその制動感は常に安定していた。 0-100km/h加速で3.7秒、最高速では333km/hというパフォーマンスを誇る新型コンチネンタル GTは、同時に最先端の運転支援システムや環境性能向上のための技術が採用されたモデルでもある。W12エンジンは低負荷時の気筒休止システムを備えるが、実際にその制御をドライバーが感じることは不可能に近い。こちらも自然な制御に終始する、ACCを核とした運転支援システムは、ドライバーの負担を確かに低減してくれるはずだ。 最大のライバルは同じ英国のアストンマーティン DB11新型コンチネンタル GTをドライブしながら、ライバルとの相関関係を考えた。試乗前に行われたプレゼンテーションで、ベントレー自身もその名前を挙げたように、最も強く意識するライバルは、やはり同じブリティッシュ・ブランドのアストンマーティンが投じる、DB11シリーズということになるだろう。 新型コンチネンタル GTのスペックは、そのV12モデルよりわずかに魅力的なものだったが、アストンマーティンは先日、DB11のさらに高性能なハイエンドモデルとして、DB11 AMRをリリースした。エクステリアやインテリアのデザインで、新型コンチネンタル GTとDB11のどちらを好むのかは、もちろんカスタマー自身の好みだが、コンチネンタル GTはニューモデルへと進化したことで、確かにスポーツGTとしての性格を強めてきた。先代モデルがそうであったように、V8モデルが登場すれば、さらにDB11とのライバル関係は強調されることになるはずだ。 ベントレーは、この新型コンチネンタル GTにおいて、ラグジュアリーグランドツアラーのハイエンドを再定義したと胸を張る。そしてこの言葉を納得させるだけの魅力をニューモデルが持ち合わせていたことは、今回の試乗で十分に確認することができた。日本上陸が実に待ち遠しい一台だ。 スペック【ベントレー コンチネンタル GT 】 |
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