「X1」をベースとしたコンパクトSUVなんてアグリーな2シリーズなんだろう…。その姿を初めて見たとき、ちょっと驚いた。 BMW X2。それは「X1」をベースとしたコンパクトSUV。BMW流にいうと正確にはSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)ではなくて「SAV」(スポーツ・アクティビティ・ビークル)なのだが、ともかくこのメイクスで“偶数ナンバー”のクルマたちは、これまたBMW流に言えば「SAC」(スポーツ・アクティビティ・クーペ)という、オーソドックスな奇数ナンバーに対して実用性度外視の流麗でスポーティなクーペボディが与えられるのが通例となっている(ミニバンタイプの2シリーズなど、整合性の取り切れていない部分もあるけれど)。 なのに目の前に現れたX2は、流麗というよりはボクシーでボリューミーだった。クーペのようなスタイリングを採るその贅沢さが、偶数シリーズの特徴じゃなかったかしら? 直感的に、そんなことを感じたのだ。 ただしこれには、「なるほど!」と思わず手を打ってしまうような理由がシッカリとあった。それをここで述べる前に、まずはX2の成り立ちを少し紹介するとしよう。 エクストリームを意味する「M Sport X」の“X”日本仕様のX2は「18i」となる1.5リッター直列3気筒直噴ターボと(140ps/220Nm)、「20i」となる2リッター直列4気筒直噴ターボ(192ps/280Nm)の2種類のエンジンが設定され、フロントに横置き搭載する(本国仕様には、2種類のディーゼルエンジンが存在)。 駆動方式はそれぞれにFFの「sDrive」と、X1同様FWDをベースとした4輪駆動「xDrive」があり、「xDrive」はフルタイムとしながらも基本は主に前輪を駆動させて走り、これがスリップしたときに後輪へトルクを多く配分するオンデマンドタイプの4WDとなっている。そしてグレード設定としては、スタンダード・モデルと「M Sport X」がある。 今回試乗したのは20i xDriveの「M Sport X」。そしてこの“X”が、重要なキーワードになるとボクは感じたのであった。なぜならその意味は、“EXTREME(エクストリーム)”のエックスだったのだ。つまりウインタースポーツで言えばスノボやスキー、ストリート系で言えばスケボーやBMX、泥んこ系だとモトクロス(バイクは積めないか)といった、過激なスポーツとイメージをシンクロさせる、タフギア的な意味あいを、BMWはこの“X”に込めているというのである。 この乗り心地を「硬い」と感じるか「平気だ」と思えるか?そんなX2 M Sport Xの走りは、BMWの狙い通りとても若々しい。 Mスポーツサスペンションを装着した足回りは一見固めに感じられるが、それは20インチにもなるオプションの「ピレリ・P ZERO」に因るところが大きい。 むしろ足回りは高い車高を支えながらも着実にストロークをして、路面からの突き上げをうまく吸収しており、トータルとしてはうまく乗り心地が確保できていると言えるだろう。 また試乗車は慣らしを終えたばかりのまっさらな新車であることを考えると、距離を重ねて行くほどにしなやかさも増して行くはず。ある意味この乗り心地を「硬い」と感じるか「平気だ」と思えるかで、気持ちの若さが計れるかもしれない(笑)。ともかくBMWは、どうしても乗り心地が硬くなるランフラットタイヤを、かなり高い水準でコントロールできている。そしていざこれを快活に走らせると、X2の魅力はさらに引き立つ。 ステア応答性は素早いが、ロールを上手に利用して荷重移動するサスペンションの設定はお見事。快適な乗り心地はそのままに、操舵すると少しだけノッポなボディを傾かせ、曲がり込んだコーナーでも狙った通りにラインをトレースしてくれる。そのコーナリングスピードの高さに対してあまりに足回りがスムーズに動くから、もしかしたら「ちょっと曲がり過ぎる!」と感じるドライバーもいるかもしれない。最近はミニも洗練されてこの傾向になってきたが、明らかにその味付けは差別化が図られている。積極的にゲインを高めてドライバーのやる気を鼓舞するタイプではなく、あくまでクールな曲がりっぷりだ。 そしてそこからスポーツモードを選ぶと、電動パワステの反力が少し高まり、エンジンやトランスミッションの追従性がよりシャープになって、走りは安定する。ダンパーが引き締められた感覚はなかったが、操舵と駆動系のリニアリティが上がることで全体的にシッカリ感が増えるから、これならワインディングでも気持ち良く走ることができるはずである。 何より気持ち良いのはそのエンジン。時代の空気感を読んでだろうかターボパワーを声高に主張することはない。けれど、ブーストの掛かりはリニアで先走り感がなく、アクセルを踏めば踏んだだけ力が出てくるから回すのが気持ち良い。4輪駆動ゆえか、ハイグリップタイヤのなせる技か、4つのタイヤがバネ下でバタつかないのも高級感につながっている。 このご時世にアクセルを目一杯踏み込むなんていかがなものか…。そんな風に思う方も多いだろうけれど、普段は280Nmのほどよいトルクで粛々と走れるのだから、ここはこうした運転する楽しみをBMWが残してくれていることに、素直に感謝しておきたい。 唯一残念なのはトランスミッションの制御だった。トルクコンバーターのロックアップが強すぎるのか、シフトアップ時に加速Gの抜けが起きないのはよいのだが、変速したときにピッチングが起きてしまいスムーズさに欠けるのだ。もっともこれはアクセル全開からのシフトアップだから、日常的にはあまり起こらない現象だとは言える。しかし高速道路でのダッシュや、気持ち良く走りたいときのリズムをクズしてしまうという点では、同じ8速ATを搭載するミニJCWの制御に近づけて欲しいと感じた(FF車は7速AT)。 515万円という価格はオジサンがターゲットかもブラック基調のインテリアや、ガッシリと質感の高いスウェード調シートには、イエローステッチが渋い。フロアマットのイエロートリムもキマってる。最初はアグリーだと感じていたフロントグリルやサイドステップのシルバートリムも、ちょっと子供っぽいけれどエクストリーム仕様としては頷ける。 このヤンチャな感じ、いいじゃないか! とはいえ車両価格は515万円(税込)と、その点だけはちっとも若々しくない。それはBMWジャパンもわかっているようで、若者をイメージしながらもメインターゲットとなるのは40代以上の“若い心を持ったオジサン”のようだった。しかしボクらミドルエイジにとっても若返りはメーカー同様重要であるし、これを数年大切に乗ることで次の世代へユーズドカーとして渡してあげられるのなら、それでもいいじゃないかと思った。ご子息・ご息女にそのステアリングを握らせてあげるのも、かっこいいパパとしてはひとつの役目であるかもしれないし。 スペック【 X2 xDrive20i M Sport X 】 ※本文中に誤りがあったため修正いたしました。(8月24日) |
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