M2の後継モデル、走りは黄金時代のM3を彷彿させるその昔、国産タイヤメーカーがグループAのタイヤ開発のために、欧州の名門チーム・エッゲンベルガーと組み、「フォード シエラ RS コスワース」でニュルブルクリンク(新コース)を戦った時のことだ。私のシエラはワークス2台に続いて予選は3番手、タイヤもまずまずのパフォーマンスだったが、20ラップほど走ってタイヤのグリップがダウンし始めると、ラップタイムが落ちてきた。 ふとバックミラーを見ると、クラス下の「BMW M3」軍団がまるでハチの巣から出てきたように、私のシエラに襲いかかってくる。彼らは2.3L自然吸気なので、馬力とトルクでは2.0Lターボエンジンを積んだシエラが圧倒していたが、M3軍団はますますラップタイムを上げてくる。 ピットのサインはペースアップの「↑」。だが、体力と気力が底をつき、私が駆るシエラはM3軍団に飲み込まれた。その時からカミソリのようなハンドリングのM3は、私のレース観を変えてしまったといえる。 それから四半世紀が経ち、時代の要請もありM3はパワーウォーズにのめり込んでいった。しかし、「M2 クーペ」の後継モデルとして登場した「M2コンペティション」は、あの時のM3を思い出すような走りを見せたのだ。テクニカルなコースで知られるスペインのアスカリサーキットが舞台となった試乗会からレポートしよう。 エンジンは550Nmを発生するM3&4用にチェンジM3よりもコンパクトなM2はサーキットを堪能できる最良のMだ。M2で腕を磨くと、その先のハイレベルなドライビングを身につけることができる。その意味では体育会系クルマ好きの大本命だと思う。 M2 クーペは「M235i クーペ」と同じN55B型ユニット(3.0L直列6気筒)をチューンして使っている。ピストンなどの一部パーツにはM3&4譲りのものを採用しているが、1個のツインスクロールタービンで最高出力370ps/最大トルク465Nmを絞り出す。 一方、後継モデルとなるM2コンペティションはM3&4と同じツインターボで武装したS55型エンジンを採用。最高出力はM3&4の431psよりもわずかに少ない410ps、最大トルクは550Nmと強烈だ。0-100km/h加速はM2より0.1秒速い4.2秒で駆け抜ける。 トルクが大幅に向上しているので、トラクション性能が心配になるが、リヤにアクティブなMディファレンシャルを装備するので、電子制御と相まって十分な性能を発揮し、パワードリフトもしやすいとBMWは説明する。 S55型というリアルなMエンジンを手に入れたことでM2コンペティションの価値は非常に高まった。エンジンフードを開けるとボディ剛性向上のためのカーボン製ケージが目に飛び込んでくる。バルクヘッドとストラットを強化することでハンドリングを改善しているのだ。 加速性能に見合ったブレーキ性能もサーキット走行では不可欠。ポルシェをライバルとするならなおさらだ。M2コンペティションにはスチール製の大型ブレーキが装着され、ホイールのデザインもサーキット走行の冷却性能を考慮した専用デザインになっている。エクステリアもフロント周りのエアダクトや精悍なドアミラーなど、空力デザインが変更された。 サーキットはDCTだが一般道メインなら選択に悩むサーキットではDCTではなく、幸か不幸か6速MTに乗ることになった。前を引っ張るインストラクターはDCTだ(ずるい!)。ステアリングスポークにある「M2」スイッチを押すと、サーキットの本気モードとなる。2、3ラップしてから、インストラクターをプッシュすると、レーシングドライバーの本能で逃げ始めた。 加速感は十分速く、直列6気筒の滑らかなエンジンが味わい深いが、6MTは左右のストロークが短く、2速から3速に入れるとき間違って5速に入ってしまうことがあった。サーキットでは圧倒的にDCTが楽で、コース取りに集中できる。一方、カントリー路ではDCTをドライブしたが、MTを駆使するのもドライビングの楽しみのひとつだと思った。BMWジャパンではMTもラインアップするらしいので、どちらを選ぶのか悩ましい。 冒頭でも触れたが、かつてのM3を彷彿させるカミソリのようなハンドリングがこのクルマの最大の魅力だ。わずかにアンダーが出るシーンで、スロットルを戻すとノーズはインを向く。その瞬間に体中の血が沸騰した。意のままに走れる楽しさが満載だ。 一方、中高速コーナーではアンダーステア気味(安定志向)に躾けられているが、最高速は280km/h(Mドライバーズパッケージ選択時)なので、安定性は安全のためのやむを得ない措置だろう。アスカリサーキットは中速コーナーがロールプレイングゲームのように迫ってくるので、このアンダーステアは良心的かもしれない。深いコーナーはスロットルとステアリングをマッチさせればいい。リアサスペンションにはボールジョイントが採用され、限界の予知性も良く挙動が読みやすかった。もちろんダンパーも洗練されているので、カントリー路の乗り心地も許容できるものだった。 スペック【 M2 コンペティション 】 |
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