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9速MCTを搭載する新しいAMG C 63は快適性重視のおっとり系

2018-8-7 07:00| post: biteme| view: 129| コメント: 0|著者: 文:山田 弘樹/写真:メルセデス・ベンツ日本

摘要: トランスミッション以外のアップデートは地味だが… 新型Cクラスの登場に合わせて、そのハイエンドモデルである「AMG C 63」シリーズにもアップデートが施された。事前資料によれば技術的な変更はこれまでの7速ATが9 ...

9速MCTを搭載する新しいAMG C 63は快適性重視のおっとり系

トランスミッション以外のアップデートは地味だが…

新型Cクラスの登場に合わせて、そのハイエンドモデルである「AMG C 63」シリーズにもアップデートが施された。事前資料によれば技術的な変更はこれまでの7速ATが9速になっただけでパワーも同じ510ps。あとは主にその外観が変更され、インフォテインメント機能のアップデートと内装の化粧直しが行われたに過ぎない。

だからだろうかAMGは、今回“ミニ・ニュルブルクリンク”と呼ばれる「Bilster Berg Drive Resort」で試乗する機会を与えてくれていた。しかも試乗車は全て最もハイパワー版の「C 63 S」である。だからボクは当初このツアーを、「特別な変更はないけれど、思い切り楽しんで!」といった主旨の国際試乗会なのかな? と思っていたのだが…。

「もう慣れただろう? そうしたら、今度はESC(スタビリティコントロール)をオフにして」

「AMG GT R」による先導走行を2回ほど繰り返したあと、インストラクターが窓越しに語りかけてきた。

えっ…ホント!?

思わず自分の英語力を疑ったけれど、どうやらウソではないらしい。

C 63のステアリングスポークには、AMG GT Rではセンターコンソールに位置したコントロールダイヤル(デジタル式に変更)が装着されており、よりイージーに走行モードを変更することができるようになっている。それまではこのダイヤルを「Sport」「Sport+」、そして「RACE」へ回してきた。普通は、ここまでなのである。しかしAMGのトレーナーは「ESCスポーツ」を完全にオフにしろというのだ。

このシステムについてはボクも、鈴鹿で試乗したGT Rの経験で心得ていた。ESCを完全オフにするとダイヤルには、9段階のトラクション制御目盛りが現れる。これを減らすほどに後輪の出力が解放されるのだが、日本の試乗会では満足に試すことができなかったのだ。

しかも相手はCクラスベースのAMG。まだこの装備がない頃の走りを思い出せば、かなりテールハッピーで気を遣うFR車である。GT Rと比べて重心も高く、トランスミッションもエンジン直後にあるから、トラクションだって掛かりにくい。

「そんなのアマチュアに試させてダイジョウブ?」というのが偽らざる気持ちだった。しかしこれこそが、今回最大のトピックだったのだ。

一番ハードなRACEでも驚くほどしなやかになった

初代モデルが6.2リッターの自然吸気V型8気筒エンジンをCクラスの小さなボディに搭載したことから爆発的な人気を呼んだC 63。現在のパワーユニットはダウンサイジング化の流れを受けて、同じV8でも総排気量が3982ccに。しかしそのパワーは標準仕様の「C 63」で476ps/650Nm、この「C 63 S」では最高出力510ps/5500-6250rpm、最大トルク700Nm/2000-4500rpmまで跳ね上がっている。そして全てのパワーは後輪だけで支えられる。

その立役者となったのは、制御系の進化というか“深化”だろう。前述の通りトラクションコントロール系はよりその階層を深める形となった。同時に足回り及び駆動系制御が以前よりもさらに緻密さを増していると感じた。

これまではどちらかといえば、そのハイパワーに対応するべく足回りは固めな印象だったC 63。しかしその乗り味は、一番ハードな「RACE」モードを選んでも、驚くほどしなやかに4つのサスペンションを伸縮させるようになった。

かといってロールスピードが速いわけではないから、ドライバーは緊張感を強いられない。ただしダンパーの初期レスポンスをやや鈍めに取っている関係上、慣れてくると、そのスタビリティの高さに対して切り返しなどでの応答性に欲が出てくる。

もっともここをむやみに高めれば、ドライビングセオリーを無視して蛮勇を振るうドライバーをピンチに追い込むことはAMGも分かっている。実際、隊列の後続ではやたらめったらにドリフトしようとしてとっちらかっている他国のジャーナリストが、何度も窮地を救われていた。

総じてC 63 Sのシャシーセッティングは、アマチュアにも寛容であり、ドライビングセオリーを理解した者には非常にバランスの取れたステア特性だということがよくわかる。

ESCオフでも、ドリフトし易くはない!?

最高に面白かったのはトラクションコントロールダイヤルの調整によって、挙動が確実に変わることだった。ダイヤルをTCRがほぼオン状態にある「9」から「7」まで緩めると、これまで絞られていたアクセル開度が開くようになる。

エンジンサウンドは先代の自然吸気時代を意識した北米好みなターボサウンドから、ヨーロピアン好みな整ったメカニカルサウンドに変わったように思えた。ターボながらも回すほどに音色が澄んで気持ちが良く、アクセルを閉じればバリバリとアンチラグ的演出をするのはお約束である。

しかしこのくらいの状況では数値通りまだスタビリティコントロールの方が優勢で、自分の雑な運転をピカピカとインジケーターが知らせてくれるに留まる。

そこからさらに「5」まで行くと、ドリフトコントロールへの道が開けてくる。ただし基本的にはフロントにV8ユニットを搭載することからノーズが重く、これをゆったりとしたダンパーコントロールで制御するため、あまりドリフトしやすいクルマだとは思わなかった。

それはそうだろう。510馬力にもなるパワーと、総重量で2180kg(サルーン)にもなる車体の慣性重量を支えるためにスタビリティを上げるのが、AMGの狙いだったのだから。むしろ簡単に横を向かず前に進めるようになったことが、最大のトピックなのだ。

Vバンク内にタービンを納めるホットV式ツインターボのレスポンスはリニアであり、電子制御デフとリアサスによる安定性が高いことも相まって、むしろパワーがもっと欲しくなってしまう。細かいコーナーで無理矢理アクセルをがばっと踏んでドリフトするよりは、中・高速コーナーを高い速度で走りながら微細なアクセル操作で姿勢をコントロールする方が、気持ち良くC 63 Sの魅力が引き出せると感じた。

よってTCRダイヤルも、5以下のレベルを使わずに走った方が現状は速い。もしTCRをオフにして楽しむならば、アンダーオーバーを打ち消すために足回りを固める必要があるだろう。

一般道で冴える9速MCT。乗り味はカブリオレがベスト

確信的にややおっとりとした操縦性を持たせることで、そのパワーを見事に吸収したC 63 Sの乗り味は、結果的にオンロードで最高級のプレステージ性を与えることに直結している。

とくにボディ剛性が大幅に落ちるはずのカブリオレでは、当然バネレートやダンピングレートのバランスは専用にリセッティングされているが、その結果、最高の快楽といえるドライバビリティを実現していた。通常こうしたハイパワーモデルのカブリオレなどは、いわば金無垢時計のようなもので、本来の主旨からは少し外れた道楽仕様である場合が多い。しかし「C 63 S カブリオレ」は快楽の本命。素晴らしい動力性能を欲しい時に欲しいだけ引き出しながらも、乗り心地に全く不満を抱かせず、オープンエアの気持ちよさを満喫させてくれるのだ。

やや遅れた報告となってしまったが、今回の変更点である9速スピードシフトMCTも、こうした一般道でのドライバビリティが冴えた。出力伝達部分に湿式多板クラッチを配置したこの機構は、3軸式で次のギアをスタンバイするDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)よりは変速スピードが劣るものの、当然ながらトルクコンバーターよりダイレクト。700Nmのトルクを全くしゃくりなく受け止めて変速するキャパシティもあり、低速域ではクラッチを滑らせてクリープまでしてくれる。

9速の段数はこの際気にする必要がない。常にドライバーが快適と感じるエンジン回転に留めておくためのツールとして使えば良いし、放りっぱなしでも何も問題はない。サーキットではDCTに軍配が上がると感じたが、むしろ一般的なドライバビリティを第一とした上で、限界領域でも不足を感じさせないトランスミッションという捕らえ方で良いと思う。

カブリオレ以外のボディについても触れておこう。エステートに至っては寸胴となったボディの剛性を高めるため絶妙に足回りが引き締められ、これがかえってクーペやセダンよりもかっちりとしたスポーティネスを演出できている。

クーペの乗り味はサーキット/公道共により繊細で、運転に対して真摯に向き合える。パーソナル感を重要視するならベストな選択だろう。

対してセダンは挙動も穏やかで、正確性は劣りつつもC 63というキャラには一番合っていると思えた。

スペック

【 AMG C 63 S セダン 】
全長×全幅×全高=4757×1839×1425mm
ホイールベース=2840mm
駆動方式=FR
エンジン=4.0L V型8気筒DOHCガソリン直噴ツインターボ
最高出力=375kW(510hp)/5500-6250rpm
最大トルク=700Nm/2000-4500rpm
使用燃料=プレミアムガソリン
最高速度=290km/h(セダン、クーペ)
0-100km/h加速=4.0S
トランスミッション=9速AT(MCT:多板クラッチ式)
サスペンション=前:マルチリンク式
        後:マルチリンク式
タイヤサイズ=前245/40R19
       後265/35R19
※欧州&北米参考値


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