たった4年でフルモデルチェンジの理由とは?北米サウスカロライナ州のスパータンバーグで今年の秋口に日本に導入されると噂されている新型「BMW X4」に触れてきたので報告しよう。 なぜここが国際試乗会の会場に選ばれたのか? BMWの生産工場があるからと思いきや、BMWの安全運転スクールなどのBMW Experienceで使用されるサーキットを模したクローズドコースが隣接しているからだった。 そもそもBMWの4輪駆動であるxDriveは、2000年に登場した初代「X5」の時から、大きいSUVをミドル級のFR車と同じように走らせることを目的に進化を重ね、今やFR車を超えるレベルになったと開発者は胸を張る。今回は一般道での試乗だけでなく、その運動性能の高さを伝えるべく、クローズドコースが用意されたわけだ。どれだけBMWがX4に自信を持っているのか、この時点でも想像がつく。 X5より始まったBMWがSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)と呼ぶモデルは「X1」「X3」「X5」を機軸モデルとして、オンロード性能を高めたSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)が「X2」「X4」「X6」としてラインナップ。SUV市場の拡大も後押しして、今やBMWの総販売台数の32%を占めるまでに成長した。 さらなるシェア拡大を狙い、年内にはビックスケールのラグジュアリーSAVである「X7」のグローバル発表も控えている。今回、X4をたった4年でフルモデルチェンジした背景にも、SUVラインアップ増強に向けたBMWの様々な思惑が見え隠れする。4年足らずのフルモデルチェンジの裏には、今の5シリーズなどと同じ新規FRプラットフォームに入れ替えて、生産効率を上げたい狙いもありそうだ。 新世代の統一プラットフォームで乗り味が上質に少し整理しておくと、現在のBMWの新規プラットフォームは、FR系と、MINIと共用するFF系の2種類のみ。上屋とも言えるボディの形状は様々だし、使用する素材もモデルごとに異なるので乗り味に相応の差はあるが、5シリーズの乗り味がしっとり上質になったのも7シリーズと同じプラットフォームを使ったことが大きく関係する。昨年フルモデルチェンジしたX3も同様に乗り味が上質になった。 X4も同様の進化を遂げた。先に言っておくとプラットフォームの共有化は乗り味が洗練される利点がある一方、価格上昇も懸念される。より小さなモデルの場合、過剰性能分のコストを払うような面もあり、現にX3も日本では高くなってしまった。X4はX3よりもプレミアムな位置づけだから、プライシングに関しては心配だ。 ちなみにX4はボディもX3より幅が広く長い。この伸びやかなロー&ワイドフォルムが迫力をもたらしている。リアのトレッドは30mmも拡大し、そのリアに向かい各エッジラインが収束してオーバーフェンンダーの張り出し感が強調されている。要は台形フォルムが明確で、先代よりもカッコいい。 一方、室内はメーター周りのデザインが異なる程度で、基本はX3と同じ作りなのが若干寂しい。もっとコクピット感や豪華さなど、クーペらしいキャラクターを外装のように出しても良かったと思う。 スポーツカーのような旋回性能やドリフト感覚その走りは、粗探しでもしないと気になる要素が出てこないほど完成されていた。特に「M40d」は見事すぎる。午前中、一般道で試乗したM40dを、午後はそのままサーキットに持ち込み、豪快なスポーツ走行をしても涼しい顔をしている。日本にはディーゼル版のM40dこそ入らないが、ガソリン版の「M40i」の導入が噂されているので、SUVの最低地上高や積載力や運転視点の高さは欲しいが、走りは犠牲にしたくない、快適性も欲しいという人は注目しておくと良いだろう。 ノーマルモードからスポーツモードにすると、排気音も野太く迫力が増し、刺激的になる。同時に足回りに張り感がでてカーブでの姿勢変化が少なくなるとともに、連続するカーブで切り返してもぐらつき感も気にならなくなる。そして何より、アクセルをぐんぐん踏んでいけるようになる。 ブレーキ制御を積極的に使い、旋回の内輪より外輪を速く回すベクタリング効果を積極的に使っている印象だ。流石に兄貴分にあたるX6の生粋Mモデル「X6 M」のように、アクセルを踏み込んだ方がよく曲がるなんていう不思議な感覚はないが、通常なら旋回ラインが外に膨らむようなアクセルの踏み方でも、オンザレールで狙ったラインを走れてしまう。 旋回しながらの加速だけでなく、ブレーキを掛けながら旋回に入る高荷重を掛けた走りにもへこたれないし、不思議なほどよく曲がる。この手の複合操作は、SUVのような車高や重心が高いモデルが苦手としているはずだが、何をしても剛性不足感などないし、安心して走れる気持ちよさがある。場所をウェットの定常円旋回コースに移し、横滑り防止装置をオフにしてドリフトを試みる。着座位置は高いのに、動きはスポーツカーのように俊敏。前輪が車体をグイグイ引っ張りながら、リアが安定して横滑りするという体験は、その速度も高く、実に刺激的だった。 こうしたシーンで、スポーツカーに対するX4の弱点を敢えて挙げるなら、視点が高いため速度感がかなりあること。そして、ドリフトなど振り回す場合には、限界域が高いので腕と度胸が必要なことだろう。 X3に差をつける走行性能と快適性には理由があるそんな豪快なモデルなので、さぞかし快適性は劣るのでは? と思うかもしれないが、そこがBMWの新規FR系プラットフォームの実力と、X4にあって、X3にはないメカニズムやパッケージの効果だろう。 見た目はゴツい20インチタイヤを履くが、ゴロゴロ感が少なく滑らかに静かに走る。これでどうやってサーキットドライブまでこなせるのか? というと、まずは電子制御サスペンションが関係する。 4輪独立で伸びと縮みの減衰力を調整できる効果は大きく、無駄な走行振動を的確に収束させているのだ。ふだんの乗り心地の良さは当然として、サーキットやワインディングでも姿勢変化がとても少なかったのが印象に残った。足回りは特に締め上げられていないのに、クルマがカーブで傾かないという感覚だ。結果として、内輪の浮き上がりが少なく全部のタイヤがグリップして曲がる感覚もあり、安心して優雅に心地良く走ることができる。 X3よりも30mmリアトレッドが広げられた踏ん張り効果も、足回りを固めずに姿勢変化を抑えることに効いているだろう。54mm長くなったホイールベースによるブレーキや加速での安定感の底上げも関係しているはずだ。 さらに決定的なのは、X3に対して素材や構造を変えてボディ剛性を高めたことで、カーブでの踏ん張り感やハンドルに伝わってくるグリップ感、そして姿勢変化が少なく安心して豪快に走れるスポーツ性と、快適性を併せ持つことに成功したことだ。これは無駄な走行振動がないことや、サーキットで追い込んだ時にもハンドル操作にダイレクトに反応することからも感じていた。ただし、今回用意されなかったノーマルの足回りに触れないと、最終的な判断はできないかもしれない。 何にせよ、今回X4に触れて思うのは、高級セダンに匹敵する快適性とスポーツカー顔負けの走行性能を持ったSUVが登場すると、今以上に高級セダンやワゴンの存在価値が危うくなりそうだということだ。ちなみに速さに違いはあるが「X4 30i」もOPの電子制御サスが装着されていたこともあって、同質の乗り味を備えていた。 心配なのは価格と、全長が先代より81mm長い4752mm、全幅が37mm広い1918mm(北米サイズ)という立派なサイズが、日本でどう感じるかだけ、と言っておこう。 スペック【 X4 M40i 】 |
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