無印良品を思わせるシンプル&お手頃感ダイハツの新しい軽自動車、「ミラ トコット」の内外装を撮影していると、bty編集部のT氏が「このクルマって無印良品っぽくないですか?」と指摘した。なるほど、言われてみるとそんな気もしたので、無印良品の商品との共通点を思い浮かべてみる。 まず、ごてごてとした飾りのない、シンプルですっきりした意匠が共通している。シンプルでありながら、長く使っても飽きないようにデザインされている点も両者は似ている。もうひとつ、値札をひっくり返して価格を確認すると、「思ってたよりお手頃じゃん」と感じる点も無印良品的だ。 目を閉じて想像してみる。無印良品のクリーンな店舗をだだっ広くして、オーガニックコットンのボタンダウンシャツや耐熱ガラスのマグカップなどと一緒にミラ トコットが並んでいる様子を。 確かに、ミラ トコットは無印良品の売り場に違和感なくなじみそうだ。 ミラ トコットのチーフエンジニアを務めたダイハツ製品企画部の中島雅之氏によれば、このモデルは女性や初めてクルマを購入する若年層がメインターゲットで、開発にあたっては女性の声を採り入れたという。 「女性の声を採り入れる」というのは今までもしばしば耳にした開発手法であるけれど、ミラ トコットの場合はレベルが少々違うようだ。中島氏によれば「男性が考える女性像ではダメ」とのことで、7名の女性社員からなるプロジェクトを立ち上げて、このプロジェクトが開発を引っ張ったという。 つまり、従来が「女性の声を聞きながら男性が開発する」という形だったのに対して、ミラ トコットの場合は「女性が自分のほしいクルマを開発した」ということになる。 では、7人の侍ならぬ7人の女性社員は、どのような提案をしたのか? 女の子らしさから自然体へと女性の心境が変化しているまず大前提にあったのは、現代の女性の心境が変化していることだ。かつての女性の多くは、モテファッションなど女子らしさを“盛る”方向に関心を持っていたのに対して、ここ最近は自分らしく自然体でありたいという価値観にシフトしているのだという。そこから生まれたキーワードが「エフォートレス」で、無理することなく、不安を感じることなく、自然体でいられるクルマを目指すことに決まった。 より具体的に言うと、冒頭で紹介したシンプルだけど愛着の湧くデザイン、安心して運転できる安全性、そして経済的な価格が、ミラ トコット開発の3本柱となった。 運転席に座ってみると、その狙いは達成していると感じる。まず、ガラスエリアが広いために見晴らしがいい。内装のインストゥルメントパネルや外装のウェストラインを水平基調にしたことも、視界がいいという印象につながる。細かいところではドアミラーをAピラーの根元ではなく、ボディパネルに設置したことも視界の確保につながっている。 こう書くと機能一辺倒のデザインだと感じるかもしれない。けれども試乗した個体がG“SAIII”という上級グレードであったため、インパネのガーニッシュはオフホワイトの陶器のような質感で、悪くない。センスのいい2トーンのシートもあいまって、頭には北欧デザインという言葉が浮かんだ。 無印良品だけでなく、IKEAに置いても絵になるかもしれない。 運転席シートの座り心地が良好だったことは、特に強調しておきたい。特別に凝った形状ではないけれど、シート座面はしっかりと太モモをサポートし、背もたれが包み込むように背中をホールドしてくれる。「女性向け、若年層向け」に開発したといいながらも、シートに手を抜いていない点は好感が持てる。 タウンスピードでは好印象だが高速道路では…ミラ トコットに用意されるパワートレーンは、最高出力52psの直列3気筒エンジンとCVT(無段変速機)の組み合わせのみ。ターボエンジンは設定されないものの、FF(前輪駆動)とフルタイム4輪駆動の2種類の駆動方式が用意される。やはり、雪国では四駆が求められているのだという。 走り出して「おっ」と感じるのは、ハンドルの手応えが軽いことだ。電動パワーステアリングのモーター容量を上げることで、姉妹車にあたるベーシックモデルの「ミラ イース」よりも大幅に軽いパワーステアリングの設定になっている。 ただし、大昔のアメリカ車のようにただ軽いだけで、路面からの情報が一切伝わらない、というセッティングではない。タイヤがどの方向を向いているのか、どんな路面コンディションにあるかといったインフォメーションは手のひらに伝わるから、不快だったり不安だったりということはない。 前席で感じる乗り心地はまずまず良好だ。路面の不整を乗り越える瞬間の衝撃は、角の丸いまろやかなものだ。その理由として、タイヤの選択やサスペンションのセッティングもさることながら、ボディがしっかりしていることが大きいと感じた。ボディがねじれないから、常に正しくタイヤが路面と接し、サスペンションが機能している印象だ。 「まずまず」と書いたのは、高速道路で80~90km/hを超えるあたりから、ややダンピング不足を感じたから。不安をおぼえるほどではないにしろ、路面の凸凹を乗り越えた後の揺れが一発で収まらず、こうした速度域だと“余震”が少し残る。 高速で「ちょっと足りない」と感じるのは、タウンスピードでのやわらかい乗り心地と二律背反、こちらを立てればあちらが立たずの関係にあるので、仕方がないとも言えるが。 安全装備も含めた内容と、価格のバランスに感心動力性能についても、乗り心地と同じことが言える。市街地ではまったく問題がない一方で、高速道路の合流ではやや力不足を感じる。実際は床までアクセルペダルを踏みつければ問題なく合流するけれど、このクルマがメインターゲットにする若年層(つまり運転のビギナー)はアクセルを全開にすることに抵抗を感じるかもしれない。 ミラ トコットというモデルで最も感心したのは、価格と内容のバランスだ。たとえばL“SAIII”というグレードを選ぶと、「スマートアシストIII」というダイハツで最新の衝突回避支援システムを装備した車両を113万9400円(FF)で手に入れることができる。この値付けは、大いにがんばったと言っていいだろう。 「スマートアシストIII」についてふれると、ステレオカメラとソナーセンサーによって、対車両と対歩行者の自動ブレーキ、車線逸脱警報、前後方向の誤発進抑制機能などが備わる。 ステアリング操作をアシストする機能こそ備わらないものの、現代のベーシックカーにあって求められる安全装備はすべて揃っていると言える。 アナザースタイルパッケージについてもふれておこう。シンプルなベース車両をもとに、アクセサリーによって「スイートスタイル」「エレガントスタイル」「クールスタイル」という3つのスタイルをダイハツは提案している。 アクセサリーの一部を工場で装着、一部を店舗で装着することになるが、3つのスタイルの実車を見る限り、シンプルなベースモデルが最もミラ トコットの魅力を表現しているように感じた。 シンプルでありながら長く愛用できそうな洒落たデザイン、視界のよさなど基本的な安全性能を確保した上での最新の安全装備、そして良心的な価格。いままでありそうでなかったタイプの軽自動車であり、あまりライバルは思い浮かばない。 強いてあげればスズキのラパンあたりになりそうだけれど、“kawaii”の成分が少ないミラ トコットのほうが甘すぎないというか、ユニセックスに感じる。そういえばこのミラ トコット、カラーリングによっては無印良品のパジャマのようにユニセックスな雰囲気も漂わせることから、お洒落な男性にも似合いそうだ。 スペック【 ミラ トコット G“SAIII”(FF) 】 |
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