タイムトライアル優勝者にスーパー耐久参戦権利を授与えぇえ~! マジかッ!! これは出るしかないだろ!? いきなり取り乱して、大変申し訳ない。だけれど定期的に配信されてくるアウディからのニュースリリースを見たときに、ボクはその一文を見つけてしまったのだ。 「タイムトライアルの総合優勝者、Audi RS3 LMSでスーパー耐久シリーズ スポット参戦のチャンス」、「次世代のジェントルマンドライバーに夢の第一歩を提供」。……なんて素晴らしい!! これは今年からアウディ ジャパンがその取り組みを開始した「Audi race experience(アウディ レース エクスペリエンス)」のリリースに、しれっと書かれた一文だった。 ちなみにアウディは2001年という早い段階から「Audi driving experience(アウディドライビング エクスペリエンス)」としてアウディオーナーを対象に運転技術向上プログラムを開催しており、これまでに2000名以上のユーザーがこれを経験しているという。そのメニューは日常の安全運転に役立つ「Active Safety(アクティブ セーフティ)」や、アウディの高性能スポーツカーであるR8用のプログラム「R8 experience tour(R8エクスペリエンスツアー)」など幅広い内容を誇っている。 だがなんと言っても一番興味深いのは、レース参戦への扉となるモータースポーツ用プログラムだ。その入門編としてアウディはまず「Circuit trial training session(サーキット トライアル トレーニング セッション)」を設けており、こちらは前回、btyのU編集長がレポートしている。 そしてアウディジャパンは、ここからさらに日本独自の展開として、「Circuit trial session(サーキット トライアル セッション)」を設置。「アウディ レース エクスペリエンス」の一環としてタイムトライアルイベントを開催し、総合優勝したドライバー1名に、Audi Sport GmbH生産のレース車輌であるAudi RS3 LMSを使用したスーパー耐久シリーズ(ST-Rクラス)への参戦権利を与えているのだ。 ちなみにサーキット トライアル セッションに参加するためには、トレーニングセッション受講もしくはJAFモータースポーツライセンスを所有していることが条件。となれば編集長とボクは、参戦権利があるんじゃない!? というわけでアウディジャパンにコンタクトしてみると「このイベントの愉しさや主旨をきちんとレポートしてくださるならOKですよ!」という快諾が。「やりますよ、えぇやりますとも!」と意気込んで、ボクは編集長とダブルエントリーしたのだった。 ストレートを使用しない安全を考慮したコース設定当日はまず朝一番の車検からスタート。富士スピードウェイA棟の大きなパドックを貸し切り、大勢のスタッフが僕たちの到着を待っていてくれた。ここではオフィシャルが車輌の安全状態をチェックして、必要とあらばタイヤの内圧セッティングまでしてくれる。雨ということもあったがゼッケンまでピシーッと貼ってくれるのは、さすが高級車ブランドのおもてなし! 荷物置き場や着替え室などのアテンドも完璧で、正直こういった細かな部分の配慮が行き届いていると、オーナーとしては「アウディ買って良かったなぁ…」と思うだろうと感じた。 午前中はタイムトライアルの方法について講師陣が解説をして本番前の練習走行へ。グループ分けを行い、先導車輌付きでコースを3回走った。面白かったのは今回のコースが、ストレートを使用しないということだった。富士スピードウェイといえば国内最長の1.5kmに及ぶ直線を持つサーキットで、最高速計測はアマチュアドライバーの間でも常に話題となっている。だが今回はスタート位置がピットレーン手前で、ゴールも最終コーナーを立ち上がってピットレーン手前なのだ。 これは参加者のクルマ、特にブレーキに対して負担を掛けないための配慮だ。また当日は雨量も多かったため、2コーナー手前にできる川の手前にパイロンでシケインを作ってあったりと、ユーザーの安全をかなり本格的に考えていたのが好印象だった。そして昼食を挟んだ午後からは、本番のタイムアタック。1回の練習走行を終えたあと2回のアタックを行い、良かった方のタイムでトライアルが争われることとなった。 この日ボクが相棒に選んだのは、アウディの最新モデルであるRS5。2ドアクーペであるA5をベースに、450psを発揮する2.9L V6ツインターボを搭載した、一族最強のRSモデルだ。これなら優勝間違いナシじゃん! 内心思いきりほくそ笑んでいた。しかしそううまくはいかないのが、このトライアルのよく考えられた部分。 前述の通りコースはストレートを使用しないから、パワー差が活きるのはヘアピン直後からダンロップコーナーまで。逆に曲がりくねった第3セクターでは小柄なマシンにアドバンテージがある。その総合力を推し量るとマシン差はほとんど現れず、最後はやっぱりドライバーの実力が物を言うのである。またクラス分けもしっかりなされているので、どんなアウディで参加しても楽しくアタックできるのだ。ちなみにボクは「RSクラス」でのエントリーとなった。 知恵を絞ったセッティングでチャレンジした結果は…?1回目の走行を終えたタイムは、2分18秒47。全体では4番手と、いいんだか悪いんだかちょっとよくわからない微妙なタイムだった。ただ言い訳をさせてもらえば、これにはれっきとした理由がある(笑)。ウォームアップランなしのタイムトライアルでは、どうしてもセラミックブレーキがスタンバイしないのだ。 「このくらいなら止まるでしょ!」と余裕を持ったブレーキング。しかし予想以上にすさまじいRS5のダッシュ力を前に、目測は見事なまでに外れた。1コーナーではABSをゴリゴリに効かせながらクリッピングポイントを大幅に通り過ぎ、コースアウト寸前。2コーナーのシケインなどは、パイロンをまとめてなぎ倒すところだったのだ。ちなみにコースアウトしてもパイロンタッチしても、競技は失格になってしまう。 この反省から2回目はちょっとだけ、ない知恵を絞ってみた。まず激しいオーバーステアを抑えるために、上げ気味にしていたリアタイヤの内圧を標準内圧までダウン。併せて可変ダンパーを「コンフォート」へ変更し、ロールスピードを早めることで、タイヤに早く荷重が掛かるようにした。さらにRS5で素晴らしいと感じたのは、スポーツディファレンシャルの制御が変更できたこと。2回の走行経験からこれを「オート」とすることで、必要以上のトラクションを稼がないようにした。ちなみにエンジン/トランスミッションとステアリング(電動パワステの制御)は「ダイナミック」だ。 そしてこの変更は、驚くほどにバッチリ決まった。相変わらずブレーキは止まらなかったが、全てのコーナーをRS5はニュートラルステアでターン。そこからアクセルをジワジワ合わせていくと、極めて美しい姿勢を保って旋回し、最後は4WDの力でモリモリとコーナーを脱出して行ったのだ。息を止め、恐ろしく丁寧に。しかし素早くハンドルを切り、足首に力を込めて繊細な踏力を掛けていく様は、まさにレーシングドライブだった。 通常これだけハイパワーな高額車輌だと、安全を優先してアンダーステア一辺倒なキャラクターにしがちだ。しかしアウディは本気のドライビングに対してしっかりと要求を受け止め、さらにセッティング変更まで許容する懐の深さを見せた。 果たして2回目の走行は2分12秒86をマーク! 大幅にタイムを短縮して、総合2番手のポジションを獲得できた。ただし総合トップとなったのは同じRSクラスのワタナベさん(車輌はRS3)だったので、惜しくもボクは決勝ステージに進出できなかった。その差は僅かに0.11秒差だったから、今回ばかりはアウディのセラミックブレーキを恨んだ(笑)。 素晴らしいイベントを満喫。参加費8万円はバーゲンプライス決勝ステージは1.4TFSI(FWD)のA4を使い、各クラスのトップタイムをマークしたドライバー4人がタイムアタック。出走順による雨量の差は運任せだが、極めてイコールコンディションのもとに最後の闘いが繰り広げられた。ちなみにbty編集長はクラストップのタイム(2分15秒34。車輌はS5)をマークしていたのだが、「今回メディア出場は章典外ということで…」とクギを刺された。ボクにいたっては、実は練習走行からそのお達しがあった(笑)。 そりゃないぜ、アウディ! だったら最初から言っておくれよぉ~。とも思ったが、アウディを購入してエントリーしたオーナーたちに我々が割って入るのも無粋な話で、確かにちょっとムシが良かったかも知れない。またこのイベントがとても本格的で、安全に配慮した素晴らしいシステムだったことを考えると、それを皆さんにお伝えできただけで良かったのかもしれない、と今では思っている。何しろこの豪雨で、一台もクラッシュがなかったのだから。 さて肝心の決勝ステージは、クラスAにA3で参加したオオイワさんが2位を大きく引き離すぶっちぎりの速さで優勝した。ヘルメットに備わる無線コードなどを見てもどうやら氏はレース経験者であるし、雨の中でしっかり速さを見せつけた意味でもAudi RS3 LMSのステアリングを握る権利は十分以上にあるだろう。……でも悔しいなぁ。 というわけで初めて参加した「アウディ サーキット トライアル セッション」だが、とっても素晴らしいイベントだった。参加者のレベルも高いうえに、グレードに関係なくスポーツドライビングが満喫できる。そして優勝者にはレース参戦権が与えられるのだから、参加費8万円は、はっきり言ってバーゲンプライスだ。……でも、やっぱり今回の結果は悔しいなぁ。こうなったらbtyでアウディ車を手に入れて、マイカーでリベンジするしかないですかねぇ? 編集長。 RS5 クーペ スペック【 RS5 クーペ 】 |
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