ハイブリッドは300万円超え。カローラは高級車!?「新時代の国民車」を探す実地調査企画の第5回目。今回の調査対象は、その昔はまさに国民車と言える存在だったものの、近年の日本市場ではすっかり影が薄くなっていたトヨタ カローラの最新バージョン「カローラ スポーツ」である。 総合的なレポートはほかの方がすでにしっかり書いているはずゆえ、基本的なプロフィール紹介は最小限にとどめよう。カロスポ(カローラ スポーツ)は2018年6月デビューの5ドアハッチバックで、車格的にはドイツのフォルクスワーゲン ゴルフとだいたい同じ(カーマニア的にはCセグメントと呼びます)。基本的なグレード展開と価格は以下のとおりだ。 【 1.8Lハイブリッド 】 【 1.2Lガソリンターボ 】 1.2Lガソリンターボには4WD版もあり、また8月には1.2Lターボのほうのみに6MT仕様も追加されている。 こうしたプロフィールを眺めつつ思うのは「カローラも高くなったものだな」ということだ。 ハイブリッドの中間グレードを選んで、それに純正カーナビやら何やらのオプション装備を加えれば、支払総額は少なめに見積もっても300万円は超える計算。一部のマニアはともかく、一般国民としては「カローラに300万円」というのは少々ためらう部分もありそうだ。 であるならば国民車としての検討対象はお安いほうである「1.2Lガソリンターボ」の一択で、なかでも特にお安いベースグレード(G“X”)……だと少々悲しい気持ちになるので、現実的には中間グレードである「G」になるだろうか。 で、同じ「G」でも6MTを選べばさらにお安いわけだが、今どきMT車を買う人も激少と思うゆえ、最終的な検討対象は「Gのオートマ(Super CVT-i)」に決定したい。車両本体価格225万7200円のこちらであれば、支払総額は280万円ぐらいで済む計算だ。…それでも少々お高いわけだが。 日常のドライブではなかなか良い車ということで1.2Lガソリンターボの「G」を借り出し、例によって「峠道をぶっ飛ばすのではなく、そのへんの幹線道路や高速道路を普通に(でもたまには少々飛ばし気味に)走り、生活道路ではウルトラ安全運転に徹する」という、日頃のあなたとほぼ同じニュアンスで走ってみた。 そしていきなりの結論となるが、ハードウェア面のみを見るのであれば、カロスポのGは十分以上に「国民車」としての資質があるように思われた。簡単に言うなら「なかなか良い車」ということだ。 まずはその姿形。ややアグレッシブな外観デザインは好き嫌いが分かれるかもしれない。しかし某ハイブリッド専用モデルのような「多くの人に不快感を与える感じ」ではないと、筆者には思われる。 そして内装のデザインと質感も、試乗車に装着されていたいくつかの洒落たオプション装備に助けられている部分も大とはいえ、特に不満はない。欲を言えば樹脂パネルの質感にもう少し「いい物感」があってほしいが、まぁ高級車を買うわけではないので許容範囲とするべきだろう。 走り出してみても、「うむ、なかなか良い車じゃないか」との感慨は変わらない。 自動車評論家諸氏が指摘している「新開発のショックアブソーバー」が利いているのだろうか? 走り出しから巡航速度に乗るまでの感触は非常にしなやかであり、どこか高級車然としたニュアンスすらある…というのは大げさだが、少なくとも足回りとボディからまずまずの「いい物感」は噴出している。 だが大きめの段差をややハイスピードで越える際の感触には結構な雑味があり、ハンドルを切る際の「手応え」のようなものがやや希薄に感じられるのも、この車の残念な部分ではある。 しかし段差問題については「200万円台の実用車相手にナニ細かいこと言ってやがんでえ! こちとら高級車じゃねえんだぞ!」という話であり、ステアリングの手応えについては「好みの問題」だとも言える。 筆者はフォルクスワーゲン ゴルフぐらいの「手応え感」がある車を好むが、逆にカロスポの「軽さ」を好む人だっているだろう。むしろ国民車としてはこのぐらいが良いのかもしれない。常識的な速度で走る限り、この軽めのタッチでも何ら問題はないのだ。 スポーツモードは単なるガソリンの無駄遣いカローラ スポーツのドライブモードセレクトには「ECO/NORMAL/SPORT」の3段階がある(※上級グレードのG“Z”はオプションで5段階にもできる)。 助手席や後席に第三者を乗せて走るときは「ECO」をデフォルトに選ぶのが良いと思う。このモードだと少々かったるいのだが、同乗者としては「少々かったるい」ぐらいの運転をしてもらったほうが、何かと快適で安心なものだ。 そして普段、ひとりで乗る際のおすすめが「NORMAL」だ(…当たり前か)。カロスポの1.2L直噴ターボエンジンは1500rpmというきわめて低い回転数から最大トルクが発生するため、アクセルペダルに「右足をただ乗せておくだけ」といったニュアンスでも、巡航力というか推進力というかはかなり力強い。 逆に「あまり使いみちがないのでは?」と思われたのが「SPORT」だ。確かにエンジンはガオーッ! と吠え、少々速くもなる。だが、決して揶揄するわけではなく客観的な話として「しょせんはカローラのエンジン」なので、吠えたところでさほどの快感はなく、圧倒的に速度が増すわけでもない。 まぁ価値観は人それぞれだが、筆者には、SPORTモードは単なる「ガソリン無駄遣いモード」に思えた。男は黙ってNORMALモード。それが、筆者の個人的な結論である。 そんなこんなの走り方で、都内および近郊を(飛ばしすぎるでもなく、かといってトロ過ぎるでもなく)走り回っての実燃費は、簡易な満タン法での計測だが14.1km/L。 カタログ燃費である16.4km/L(WLTCモード)にはさすがに届かなかったが、直噴ターボエンジンでありながらハイオクではなくレギュラーガソリンでOKという部分も合わせれば、「まあまあ経済的やんけ」と評せるはずだ。もう少々エコドライブを意識してやれば、燃費はさらに伸びる気配もある。 総額300万円が余裕な人向けの“上級”国民車その他、中間グレードとベースグレードに標準装備となるフロントの「スポーティシート」は座り心地もホールド性もなかなか良好で、後席の居住性も悪くない。天地方向の余裕はほどほどレベルだが、前後の余裕は十分以上だ。 荷室容量はスタイリッシュなフォルムのせいかやや少なめだが(352L)、フル乗車ではなく2~3名での使用を前提とするなら、後席背もたれを倒すなどして、「荷物グルマ」としても活用できそう。 問題は、やはり価格なのだろう。 というか「支払う価格に見合うだけの価値」を、この車に見いだせるかどうかというメンタルの問題だ。 前述のとおり、1.2Lガソリンターボの「G」を買うとなると、ざっくりとした支払総額はおおむね280万円。だがそれは必要最低限と思われるオプション装備を選択した場合であって、今回の試乗車両のように洒落た「サドルタン」のシート表皮等々をあつらえると、とてもじゃないがそれでは収まらない。 今回の試乗車両の具体的なオプション装備総額は69万833円。車両本体価格との合計金額は294万8033円に達する。で、実際買うにはそれにプラスして税金や手数料などの諸費用もかかるわけだ。 そう考えるとトヨタ カローラスポーツGとは、225万円の車ではなく「だいたい総額300万円ぐらいの車」と捉えるべきなのだろう。それは、筆者の感覚からすると国民車とは呼び難い。強いて呼ぶならば「上級国民車」だろうか? だが金銭感覚というのは当然ながら人それぞれである。 「300万円? 余裕で安いじゃん」と思う人もいるだろうし、世の中には残価設定ローンという選択肢もある。また今現在「まあまあの下取り価格が期待できる車」にお乗りの方だっているだろう。 筆者個人の感覚に基づくなら、もう少し安めの車こそを「国民車」として推したい。そんな車の登場を待っている。だが国民各位の経済状況とメンタルが総額約300万円を許容するのであれば、1.2Lターボのカローラ スポーツGは「なかなかいい感じの国民車候補のひとつ」ではある。それが、結論だ。 全日本国民車評議会(通称:国民車会議)議長としての勝手な評価まとめは以下のとおりである。 【 カローラ スポーツ G(FF・CVT)=225万7200円 】 国民車とは?今、「新時代の国民車」が待たれている。いや、それを待っているのはわたしだけという可能性もあるわけだが、筆者が考える新時代の国民車とは以下のようなクルマだ。 「安価だが高機能かつ低燃費で、それでいておしゃれ感もある、程よいサイズの実用車」 100万円台でまるっと買えるのが望ましく、それが難しい場合でもせいぜい200万円台前半ぐらいまで。自動車オタクが求めがちなマニアックな諸性能はどうでもよく、どんな状況でも普通か普通以上ぐらいに気持ちよく運転でき、燃費が良くて維持費も安く、人と荷物をある程度積載できて、邪魔くさくないサイズで、それでいて大のオトナが乗るにふさわしい質感とデザインも備えているクルマ。 ……そんなある意味ぜいたくな一台を探し出すため、筆者はこのたび「一般社団法人 全日本国民車評議会」を(脳内で)設立し、実地調査に乗り出すことにした。 【国民車調査バックナンバー】 ■第2回 スズキ ジムニー、ジムニーシエラ ■第3回 日産 オールラインナップ ■第4回 スズキ スイフトスポーツ |
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