久しぶりにアートという言葉を使いたくなるカーデザインずいぶん大きくなったな………そんな第一印象を持った新型「ベントレー コンチネンタルGT」。しかしながらスペックを確認すると、全長4880mm、全幅1960mmと確かに従来より長さが65mm、幅が40mm拡大されているものの、元のサイズからしてみたらそう極端に大きくなったわけではない。つまり、そう見せているのはデザインとプロポーションということになる。 実際、プラットフォームを初めて刷新したことによって、その前輪の位置はドライバー基点で従来より135mm前方に移動しているという。またラジエーターグリルが明らかにワイドになり、また低い位置に移動したこと、薄型のテールランプによってワイド感が強調されたこと等々が相まって、クルマをより大きく、威厳たっぷりに見せているのだ。 スーパーフォーミング加工により実現した迫力ある、そして彫刻的な表情を見せるフェンダーライン、クリスタルガラスのような引き込まれる美しさを放つヘッドライトユニット等々、デザインはどこを取っても見所ばかり。カーデザインに於いて、久しぶりに「アート」という言葉を使いたくなってしまった。 本物の素材とフルデジタルのメータークラスターインテリアも、思わず息を飲むような空間に仕立てられている。レザー、ウッド、クロームなど、そう見える素材はすべてが本物。手作業を多用した作り込みも素晴らしく、座って、眺めているだけでも背筋が伸びるほどだ。触れるのも、また歓びである。エンジンスタートボタン、ウインカーレバーなど様々な箇所に施された繊細なローレット加工は、見た目に美しいだけでなく、操作感を心地よく演出することにも繋がっている。 こうしたクラフトマンシップを最先端のテクノロジーと融合しているのが、このインテリアの特徴だ。インストゥルメントクラスターは遂にフルデジタル化。センターにもインフォテインメント機能を集約した大型タッチスクリーンが埋め込まれている。ちなみにこのタッチスクリーンはエンジンオフ時にはからくり扉のように回転して隠され、また好みでアナログ3眼メーターに切り替えて、違った景色を楽しむことも可能だ。 W12を積む巨体とは信じられないフットワークそんな新型コンチネンタルGTだが、本当の感動はその先に待っている。つまり走りの世界である。 まず唸らされるのが極上のライドコンフォートだ。クルマの動き自体は初代や先代よりも軽やかでシャキッとしているのに、重厚感だったり密度感だったりという要素はこれまでと変わらないか、それ以上。しっとりと路面に吸い付き、常に至極フラットな乗り心地をもたらしてくれる。 実際にその車体は、スチールやアルミニウムなど各種素材のミックスにより車両重量を従来比80kg減の2260kgにまで軽減している。また、サスペンションにはもっともソフトな設定では従来比60%増の空気量を確保できるという3チャンバーのエアスプリングを採用。前後に可変式アンチロールバーも組み合わされるなど、スペックも確かに充実しているのだが、最終的にはそれらを活かすベントレー流のセットアップが巧みなのだろう。 しかも、これだけ快適なのに、いざとなれば侮れないフットワークを披露するのだから圧倒されてしまう。文句無しの直進性を示すのは半ば想像通りとしても、そこからステアリングを切り込んでいった時のレスポンスの良さは、これだけの体躯の、フロントにW12ユニットを積むクルマを操っているとは信じられないほど。旋回姿勢も驚くほどニュートラルで、コーナーの連続する区間がこの上なく楽しい。 新型は圧倒的な魅力で新たな地平に到達したそのW12ユニットは、6Lツインターボという構成は従来通りながら、筒内直接噴射とポート噴射を併用するTSIとされ、また気筒休止機構、スタート・ストップ・システムなども搭載する。最高出力は635ps、最大トルクは900Nmに達する一方、燃費は15%の改善を実現しているという。 これだけ力があれば、回転計の針は普段2000rpmまですらほとんど達しないが、それでもドライバビリティは上々だし、追い越しなどもタイムラグを感じることなく行なうことができる。8速DCTの採用も、まるで右足と直結したかのような好レスポンスに繋がっているのだろう。 しかもブレーキも高い制動力と、微妙な操作にも応えるコントロール性を両立しているから、車速を問わず非常に走らせやすい。全車速追従のACCも備わるが、自らの運転でも渋滞すらまったく苦にならない。ブレーキペダルを奥まで深く踏み込むと、自動でパーキングブレーキがかかりアイドリングストップ状態になる機能も、大きな助けとなってくれる。 もちろん、本領を発揮させれば凄まじい速さを披露することは言うまでもない。左のダウン側シフトパドルを引き続けると、ギアは自動的にその時に入れられるもっとも低い段まで下がる。そこからアクセルを踏み込めば、怒濤のパワーとトルクで蹴飛ばされるような加速が始まる。全開にした時だけタービンからなのかどこからなのか耳に届く、キューンという高周波の混ざったサウンドも気分を昂ぶらせる要素で、すぐに速度は禁断の領域に到達してしまうのだ。 決して非の打ちどころが無いわけではない。DCTが低速域での変速時に多少のショックを伴うことがあることなどは要改善と言いたいが、しかしそれぐらいではこのクルマの圧倒的な魅力を何ら損ないはしない。初代が築き、2代目が育んだコンチネンタルGTだけが持つ独自の世界は、3代目にして大きく飛躍し、まったく新たな地平に到達したと言っていいだろう。 とにかく圧倒されたの一言。自分のボキャブラリーの乏しさが恨めしいが、自動車というものが体現できるラグジュアリーには、まだまだこれほどの可能性が秘められていたのかと、久々に感動させられたテストドライブだったのである。 スペック【 コンチネンタルGT 】 |
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