そもそもジョン・クーパー・ワークスとは何か?「ジョン・クーパーに孫がいたなんてー!」 なんて叫ぶほど大げさな話ではないが、その孫、チャーリー・クーパーさんに会う機会を得た。場所は韓国のインジェ・スピーディウム。2013年開業でスーパー耐久が行われたサーキットだ。朝鮮半島の東のエリアにあり、仁川空港まで貸切りバスで3時間の距離に位置する。そう、メチャメチャ遠い。 なぜそこにチャーリー・クーパーさんがいたかというと、韓国メディア向けのミニJCW(ジョン・クーパー・ワークス)の試乗会が行われていたから。我々日本メディアもJCWをサーキットで走らせるいい機会ということでそこに参加することとなった。 チャーリーさんの役目はブランドアンバサダーだそうだ。JCWを広めていく上で重要なポジションを担うこととなる。学生時代は家族が経営するクーパー・ガレージで働いていたこともあり、ジョン・クーパー・ワークス・チャレンジ(現在のミニ・チャレンジ)に参戦した経験を持つ。要するにレーシーな人物である。 祖父に当たるジョン・クーパーさんについてはいまさら語るまでもないだろう。F1をも手がけるレーシングコンストラクターで、マシンにはジャック・ブラバムが乗っていたというだけで鳥肌が立つ。登場人物全員がレジェンド。でもってその祖父とチャーリーの父に当たるジョン・マイケル・クーパーさんがミニを所有するBMWとライセンス契約し今日の「JCW(John Cooper Works)」に発展した、というストーリー。そもそも祖父のジョン・クーパーさんもはじめは彼の父親とレーシングガレージをつくったのだから、JCWはある意味親子四代に渡ってのビジネスと言えそうだ。 JCWは7速DCTではなく8速トルコンATを採用では、「ミニJCW」に話を移そう。 今年、ベースとなるミニ自体がマイナーチェンジしたのはご存知の通り。3ドア(F56)とコンバーチブル(F57)がそれで、ガソリンエンジンを積んだクーパーSをスペインのマヨルカ島で行われた国際試乗会でテストドライブした。目玉は6速ATが7速DCTになったことで、よりスポーツマインドが高まっている。 が、ハイパワーのガソリンエンジンを搭載する今回のJCWはデュアルクラッチではなく8速ATを積む。理由は大きなトルクで、これを正確に伝達するにはトルコン式の方がいいと判断したようだ。ただ、断っておくと今回の試乗車は左ハンドルの韓国仕様。で、ギアボックスは同じトルコン式でも6速であった。 ちなみに、2リッター直4DOHCツインパワーターボの最大トルクは3ドアハッチとコンバーチブルが320Nm、クラブマンとクロスオーバーは350Nm。それを1450回転という低い領域から発生させる。最高出力はどちらも231psを発揮する。 外観ではライト周りの変更が目立つ。特にアシンメトリーに描かれたリアテールランプのユニオンジャック(英国国旗)。こういった洒落っ気がミニらしいポイントといえるだろう。もちろん、JCWは専用のスポイラーやボディカラー、ラインが装着される。スパルタンに仕上がったエクステリアは誰が見てもJCW。お見事である。 で、こちらはブレーキ性能のテストと、スラロームを配したジムカーナを行った。車両は3ドアハッチバック。ブレーキはブレンボとの共同開発。17インチの専用ホイールの隙間から赤いキャリパーが顔を覗かせる。もちろんそこに「JOHN COOPER WORKS」のロゴが入っているのは言わずもがな。制動力はスタンダードのミニよりグッと強くなり、ガツンと反応するのがウリとなる。 とはいえ、踏みしろがあっていきなり効き出すものではない。ちゃんと日常使いができるようセッティングされている。普段使いからサーキットまで! というのがJCWの正しい使い方であることを訴えている。 ※本文中に誤りがあったため修正いたしました。(8月23日) サーキットではクラブマンが本領を発揮ジムカーナではステアリングの反応の良さが際立つ。ミニ得意のゴーカートフィールはJCWでも根幹にあることがわかるはずだ。フロントにマクファーソン式ストラット、リアにマルチリンクはスタンダードミニと一緒。だが、味付けは異なる。電動パワステも微妙にクイックにしている気がした。 ドライブモードは右端のトグルスイッチで切り替え。スポーツモードでアクセルの反応を高めて走らせた。 ジムカーナはミニおよびJCWの得意とする範疇。コーンを軸にヒラリヒラリと駆け抜ける様は外から見ているだけで楽しい。誰がステアリングを握っても安定した挙動でクルリと向きを変える。速く走らせるポイントは踏みすぎないこと。そもそもオーバースペックともいえるJCWではタイムを出すのに自制心も必要となる。 JCWは速すぎるクルマだ! と思う。192psのクーパーSでさえ街中では十分すぎると感じる場面は多い。瞬発力は同クラスのライバルに差をつけている。だが、サーキットを走ったり、広い場所でこうしてジムカーナをさせると231psにスープアップされたパワーの魅力がわかる。クルマを思い切り走らせる環境下においてJCWは本領を発揮するのだ。 では次に3.9kmの本コースを走ったクラブマン(F54)とクロスオーバー(F60)だが、ここではクラブマンが俄然楽しい走りを見せた。スタートダッシュ、コーナー入り口でのブレーキング、クリッピングポイントでの向きの切り替えと安定性は素晴らしい。狙ったポイントにピタッと行き着くステアリングの正確性などが存分にあらわれた。 思うに3ドアハッチでも同じような楽しさはあると思う。が、クラブマンに限っていえばより安定感と安心感が増す。というのも、ホイールベースが長いぶんキャビンがフラットに保たれるからだ。それでいて前後のオーバーハングが短く姿勢の変化が素早いのがいい。クラブマンの新たな一面を見た気がした。きっとロールバーを一本入れるだけでもサーキットはより楽しくなることだろう。 クラブマンとクロスオーバーはモアパワーが欲しいクラブマンの後にクロスオーバーに乗ると、やはりその違いは明確になる。いくらJCWとはいえ重心の高いクルマには限界があるのは否めない。地面に吸い付くような走りのクラブマンに比べ、クロスオーバーはロール角が深く希に挙動も乱れる。 とはいえ、背の高いクルマだけを集めてサーキット走行をすればかなりいいポジションに立てるのは明白。フルブレーキングでフロントに過重が移動してからの素早い向きの切り替えはさすがとしかいいようがない。サーキット走行を熟知した者がセッティングしていることを物語る瞬間だ。 と同時に、クラブマンとクロスオーバーにはもっと大きなエンジンを積んでもいいのではと思えた。それは3ドアハッチの車両重量が1260kgなのに対し、クラブマンは1550kg、クロスオーバーは1630kgだからだ。JCWというブランド上どれも3ドアハッチバックの走りを期待してしまうが、すべて同じパワーソースでは限界があってしかるべきだ。 なんて話は次回会ったときチャーリー・クーパーさんに直接話すとして、JCWを体感するにはいい機会であったのは確か。日本でもこういったイベントをどんどん行って欲しい。ミニ好きはもちろん、クルマを速く走らせることに興味を持つ人にもJCWの存在はアピールできるであろう。JCWはスペシャル度の高いニッチなモデルだけに、その扉の向こうには無限の可能性が広がっている、と思う。 スペック【 ミニ JCW(3ドア) 】 【 ミニ JCW コンバーチブル 】 【 ミニ JCW クラブマン 】 【 ミニ JCW クロスオーバー 】 |
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