(ランボルギーニを除けば)SUVカテゴリーで最速アルファ ロメオが初めて手がけたSUVモデル「ステルヴィオ」。その詳細はbtyで紹介済みなのでお任せするとして、発売が予告されながらもなかなか追加情報が出てこない、ステルヴィオの最強最速グレード「クアドリフォリオ」に、日本で触れることができたので報告しよう。 日本のナンバーがつき、日本の道を走っているので、導入は秒読み段階であることが分るだろう。1秒でも早く欲しいという人もいそうだが、この車両はプロモーションのために急ぎで仕上げた日本仕様であり、1台だけ空輸されたものだ。通常生産で、しかも船積みで来ることを考えると、日本に着くだけでもゆうに1ヶ月以上。発売タイミングは想像にお任せしたい。 ステルヴィオも知らない、クアドリフォリオと聞いてもさっぱりという人に向けて端的に言うと、世のSUVモデルには走りを魅力にするモデルも多数あるが、いまSUVカテゴリーにおける総合力で最速の1台がこのステルヴィオ クアドリフォリオだ。 2.9Lの直噴V6ガソリンエンジンを2基のターボで武装。フェラーリがそのチューニングを手がけていて、最高出力は510ps。車両重量は1910kgで、0-100km/h加速はわずか3.8秒。実は、この数値だけを見るとランボルギーニのSUVモデルである「ウルス」が3.6秒で勝っているのだが、ステルヴィオ クアドリフォリオは現時点でニュルブルクリンク北コースのSUVカテゴリーでトップとなる7分51秒をマークしている。 こう書くと、ウルスはまだタイムアタックしていない…となりそうだが、何にせよ重心の高いSUVで8分を切るのは驚異的な速さであり、ステルヴィオ クアドリフォリオのタイムが容易に破れるのならライバルが更新をしているはずであり…世界最強最速を争うSUVの1台であるのは間違いない。 迫力の専用外装だが内装は意外にもあっさりノーマルのステルヴィオとは見た目からして異なるとは言っても、そもそもステルヴィオ自体が、スポーティかつエレガント。さらに4輪駆動でありながらその基本をFRとするパッケージなので、よくあるFFベースの4輪駆動SUVモデルとはフロント周りの伸びやかさが異なり、スポーティな見た目を備えている。 まずボンネットにエンジンルーム内の冷却と気圧抜きのエアダクトがつき、フロントフェンダー脇にはクアドリフォリオ(4つ葉)のロゴマークが付く。ここが最も容易にノーマルモデルと見分けるポイントになるが、加えてタイヤサイズがフロント255/45R20、リア285/40R20という迫力サイズかつブラック塗装になり、奥には強化された対向ピストンの赤いブレーキキャリパーが覗く。またリアは左右各2本出し、合計4本のテールパイプが強力なエンジンを搭載していることをアピールする。 車内はカーボン内装パネルがクアドリフォリオ専用となるが、ドイツ車のハイパフォーマンスモデルに慣れ親しんでいるユーザーからすると、若干寂しいかもしれない。ハイパフォーマンスモデルの価格に見合う専用の仕上げが満載されるのがドイツ勢とするなら、かなりサッパリしている。走りの実に関わるシートの形状やサポート性などは的確に仕上がっているのだが、まだ価格が出ていないので判断が難しいところではあるが、もう少し使う素材やデザインなどで上質感を高めてもいい気がする。 アルファ ロメオのスポーツモデルである「4C」の印象にもかぶるが、必要以上に魅せないというか、飾るための予算を走りに振り向けるような本物志向を感じるとも言える。 日常ドライブに使うには固すぎるかもしれない走り出して即座に感じるのは、ただ者ではない乗り味と雰囲気。“大(高性能)は小(日常ユース)を兼ねる”的発想で購入すると、慣れてくる頃には疲れを感じてしまうシーンが多いかもしれない。週末乗る程度であれば気分転換的な刺激として受け入れられるだろうが、毎日足として乗るとなると乗り味が固いのだ。 足が固いというよりも、ボディが強靭で、それが前面に出てくる。「ジョルジオ」と名付けられた新世代プラットフォームは強靭な上に低重心かつ旋回時のロールも抑えられている。最初に採用したセダンの「ジュリア」の走りも見事で、そのクアドリフォリオ版もニュル最速セダンの座を争うモデルになっているほどだ。 そのSUV版となるステルヴィオ自体も当然のようにスポーティ。だから、たまにワインディング走る時の気持ちよさが欲しい! というレベルであれば、間違いなくノーマルのステルヴィオで満足できる。アルファ ロメオをあまり知らないユーザー向けに強調しておくと、ブランド自体がそもそもスポーティ。そんなブランドでも別格のクアドリフォリオとなれば、心して乗るのは当然なのだ。 電子制御サスペンションがノーマルモードだと足はそれなりに動くから、スポーティな乗り味が好きな方には許容範囲かもしれない。しかし、ボディは本当に硬く、1輪だけに入った突き上げが一瞬で車全体に響き渡るような感覚がある。乗り心地も求めるユーザーは良く考えたほうがいい。 停止状態から走り出すとクルマの味付けの方向性がすぐにわかる。トランスミッションの変速は、デュアルクラッチのようにダイレクトで歯切れが良く、8速のトルコンATだとは思えないはずだ。多くのメーカーがデュアルクラッチをトルコンATのように滑らかに制御しようとするが、逆にふだん使いからトルコンATをデュアルクラッチのように感じさせる味付けは、このブランドくらいだろう。 鋭いハンドリングにドイツ勢と異なる世界観がある想像して欲しい。そんな刺激的でスポーティなモデルで、走行モードをダイナミック、さらにはレースモードにしたらどうなるのか? 先に言ってしまうとレースモードの美味しい領域は試せていない。一般道ではその限界性能や能力が高すぎて、凄さの極みは味わえないのだ。ニュル最速SUVは伊達じゃない。 それにハンドルが細めで、のんびり走っている際はどうしてもニュル最速とは程遠い、普通のクルマを運転している感覚を抱いてしまうので、アクセルを踏んだ際や旋回を始めた瞬間の豹変ぶりに常に驚かされる。演出として狙ってやっているのか定かではないが、劇でも見せられているような感覚で、新鮮であり、人間の感覚をうまく逆手にとっていると感心してしまう。 それでも限界特性は掴めずとも、レースモードを含め、ダイナミックモード以上にした瞬間に、このモデルの性能の片鱗には触れられる。そこで感じるのは、ドイツのハイパフォーマンスカーとは速さのつくりこみが違うことだ。ドイツ勢は重厚感を軸に速さを求めていくイメージがある。具体的には重さで車体やタイヤを押さえつけ、うねり路面に対して沈み込みむような足回りの動きでクルマを安定させ、安心してアクセルを踏み続けられることで速さを得る。 対してクアドリフォリオはレスポンス、軽快、俊敏が速さの軸になっている。勘違いしてもらいたくないが、ドイツ勢にだってレスポンス、軽快、俊敏はあるし、クアドリフォリオにも安定や安心はあるが、どちらを重視しているかというスタンスの話だ。また、路面からの入力に対して、クアドリフォリオは若干跳ねようとするところも、クルマ側でしっとりと入力を吸収しようとするドイツ勢と違う。 ハンドルを切ると曲がりすぎるほどクアドリフォリオはコーナー内側に俊敏に向かう。ドイツ車の感覚でハンドルを切ったら、内側の縁石に当たりそうなほどの鋭さで、演出的にも曲がるという感覚が強い。その俊敏さは乗り手にも繊細な操作を要求するが、思いの外ストレスにならないのも見事だ。なぜなら、全ての操作に対するレスポンスが良いということは、微細な操作にもリニアに反応するため、コントロールしやすいからだ。 これはエンジン特性も同じで、レッドゾーン開始の6500rpmまで淀みなく鋭く回り、しかも最高出力510psの発生回転数が6500rpmであることからも読みとれるが、回すほどに力がみなぎる。また、最大トルク発生回転数は2500rpmと、低回転に振り過ぎていないから、スポーツドライブ時のアクセル操作へのレスポンスや、高回転でも酸欠にならず、伸び感を得られていると推測できる。さらにスポーツモード以上だと、回転数が落ちそうな時にはバラバラとミスファイアリングシステムの排気音もする。制御の緻密さも使いレスポンス確保をしているのだろう。 ライバルはマカン ターボやGLC63?そのレスポンスの背景には基本は後輪駆動として走り、フロントはリアが滑った時にだけ働く4輪駆動システムを使っていることが挙げられる。そのため旋回フィールが軽快で、走行スピードが上がっても俊敏な感覚が失われない。リアの左右の駆動力に差をつけて積極的にクルマを曲げるベクタリングも効いているのだろう。 “だろう“話ばかりになるが、限界特性が高すぎて、一般道のインプレッションはこれが限界なのだ。何にせよ、軽快に、俊敏に、レスポンス良く、刺激的で気落ちがいい。ステルヴィオ クアドリフォリオの走りを、落ち着きのない動きをと捉えるユーザーもいるかもしれないが、慣れてくるとイメージに直結するように動く快感がある。そもそもスポーティな味付けのノーマル・ステルヴィオがあるので可能なクアドリフォリオの味付けとも言えるが、適度に抑えられたロール量で、リアが若干沈み込むFR的旋回姿勢で、アクセルを踏むとベクタリング機能によってさらに旋回力を増しながら、これ以上だとリアが横滑りしそうというところでフロントタイヤが前輪をグイッと強烈に引っ張り出す。この一連の動きがレスポンス良く鮮明に感じられる乗り味は癖になりそうだ。旋回性や加速力と比較してブレーキ弱いのは残念だが、サーキットを走ってみたいと思わせる最強最速のSUVモデルだった。 日本での価格は1167万円と発表されている。同じプラットフォームを使いFRでセダンの「ジュリア クワドリフォリオ」は1132万円なので、本モデルはお買い得と言えるかもしれない。ライバルは「ポルシェ マカン ターボ」(1100万円)や「メルセデスAMG GLC63 4マチック+」(1247万円)で、マカン ターボはほぼ同価格。内装の質感などでは負けてしまうが、軽快さや俊敏な走り、旋回力といった運動性能ではステルヴィオ クアドリフォリオは十分すぎる魅力を備えている。この手の速さや刺激に価値を見いだせるユーザーにとってはコストパフォーマンスが良いオススメモデルとなるだろう。 スペック【 ステルヴィオ クアドリフォリオ 】 |
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