全幅1875mmでも受注4000台の人気モデルにエンジンを過給機付きの2リッター4気筒以下に絞り、プラットフォームも大小2つに絞って、それらをかけ合わせてさまざまなモデルを生み出すボルボの選択と集中作戦は大成功した。 年々グローバルでの販売台数を増やし、2018年は年間60万台を突破するだろう。日本でも、14年1万3520台、15年1万3786台、16年1万4914台、17年1万6120台と順調に台数を伸ばし、18年は10月までで前年同期比108.3%の1万4149台。十中八九、前年を上回るだろう(数値はJAIA調べ)。どうしてそんなに売れるのか? どこがよいのか? そんなことを考えながら、このほどXC40に追加されたT4モデルを試乗した。 日本で今年1月に予約が始まり、3月に発表、発売となったXC40。立ち上がりから人気を集めたが、当初18年分の日本割り当て台数が1500台と少なかったため、受注してもデリバリーが十分にできない状態だった。その後、500台を新たに確保し、年内に2000台をデリバリー予定だというが、オーダーは4000台に達するというから、これから注文してもそれなりに待つことになりそうだ。なんでも日本の場合、40を名乗るモデルとしては車体が大きく、とりわけ全幅が1875mmと幅広いため、日本でどれほど受け入れられるかインポーターとしても未知数だったようで、様子見として1500台と決めたそうだ。 しかし蓋を開けてみれば大人気。確かに全幅1875mmはCセグメントとしては小さくないが、XC40の場合、従来の60、70シリーズあたりからの乗り換え需要が少なくないのではないか。であればさほど全幅も気にならないはず。実際、XC40は全高も1660mmと高く、車内と荷室は広々していて、上のカテゴリーから乗り換えても不満は出ないはずだ。 190psのT4エンジンは日常領域では十分な性能まずスタイリングがよいではないか。好き嫌いを別にして、ユニークで、他に似たクルマがないことを評価したい。二の線でカッコつけるわけでもなく、かといって色気を感じさせないわけでもない。デートでも家族ドライブでもさまになる。シーンを選ばない。つまりユーザーを選ばない。顔つきはブルドッグみたいでブサかわいい。ゆるキャラ的なのかと思いきや、ところどころにシャープで大胆なキャラクターラインが入っていて、全体に精度の高さを感じさせる。 ボルボはSUVに対しXCという車名をつけるが、XC40はXC60やXC90ほどSUV然としているわけではない。何系にも属さず分類が難しい。にもかかわらずフロントグリルにアイアンマークがなくてもボルボだとわかる。 これまでXC40のエンジンは、ガソリンのT5(最高出力252ps/5500rpm、最大トルク35.7kg-m/1800-4800rpmの2リッター直4ターボ)一択だったが、新たに同じガソリン2リッター直4ターボながらやや性能を落としたT4(同190ps/4700rpm、同30.6kg-m/1400-4000rpm)が追加された。 XC40の場合、T5には4WDのみが設定され、T4には4WDとFWDが設定される。今回試乗したのは、FWDのT4モメンタム。モメンタムは4段階あるグレードのうち下から2番目で、上級グレードに対し、内装の加飾パネルやシート素材などが安価なものになるが、それでも内外装の質感は十分に高い。 T4エンジン。端的に言ってこれで十分だ。発進加速、中間加速ともに不満なし。車重1.6トンと、このクラスとしてはあまり軽くないXC40をあらゆる場面で痛痒なく走らせることができた。これなら積極的にT5エンジンをオススメする理由を思い付かない。特に4WDに対し60kg軽いFWDの場合には、よりT4で十分といえよう。 スペックを見ればわかるように、T5はT4に対し、より高回転まで回すことができ、その分高出力を得ている。逆に高回転まで回さない日常的な領域でのパワーはさほど変わらないということだ。明確に違いを感じるのは高速道路へ合流するための全開加速時くらいではないか。もちろんそれが重要だという人もいるだろうし、T5に意味がないわけではもちろんない。トルクはあっても邪魔にならないし。 V60同様にXC40にもディーゼルの設定はなしちなみに、ボルボは2015年に日本にディーゼルエンジンのD4を導入して各モデルに設定した。力強いにもかかわらず燃費もよく、またボルボは排ガス関連の不祥事とも無縁で、既存モデルの販売台数を大幅に回復させた。にもかかわらず、ボルボ・カー・ジャパンは2017年に発売されたXC60を最後に今後はディーゼルモデルを設定しないことを決めた(既存モデルの販売は継続する)。 つまりV60同様、XC40にはこの先もディーゼルは設定されない。その代わりとして彼らがツインエンジンと呼ぶプラグイン・ハイブリッドの設定を拡大する計画のようだ。ディーゼル好きとしては残念だが、これも選択と集中の一環だろう。 XC90、V90、S90、XC60、V60と、ここのところボルボが発売したモデルはすべてSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)というプラットフォームを用いて開発され、いずれも従来モデルに比べて、乗り心地、ハンドリングともに大幅レベルアップを果たした。 これに対し、XC40はCMA(コンパクト・モジュラー・アーキテクチャー)というプラットフォームが用いられている。SPAとCMAはいずれも前車軸とバルクヘッド(フロントドア前端付近)部分のみ固定されるが、それ以外の部分は自在に伸縮させることができるため、SUVやセダン/ワゴンをつくり分けることができる。そのうちCMAを用いて開発された40シリーズの追加モデルが登場するのは間違いない。それがVなのかSなのか、両方とも出てくるのかはわからないが。 エアサス設定はないが兄貴分たちと同等以上の乗り心地また将来のEV化にも対応できる(バッテリー積載スペースを考慮した)設計になっている点でもSPAとCMAは同じ。サイズの違いのみと考えてよさそうだ。それにしても、年間60万台の販売規模でプラットフォームを2種類抱えるのは珍しい。特に40シリーズのためだけに専用プラットフォームを用いるとなるとぜいたくな話だが、実際にはCMAは同じグループのジーリーやそのプレミアムEVブランドであるリンク&コーも用いるので元が取れるというわけだ。 CMAプラットフォームを用いたXC40の乗り心地は、SPAを用いた60シリーズや90シリーズと同じかそれ以上にできがよい。60シリーズ、90シリーズと違ってエアサスの設定はないが、普通のバネでも全然OK、路面を選ばず乗り心地は快適だし、ペースを上げても腰砕けになるようなこともない。剛性の高い車体に組み付けられたサスペンションがしっかり仕事をしているのを感じることができる。 ステアリングフィールも良好だ。ボルボは昔からステアリングアシストの量を3段階から選べるが、アシストを強めの設定にしてもフィールが失われるわけではないのがよい。 ユーティリティー性能はT5でもT4でも、またグレードがなんであっても同じ。乗員スペース、ラゲッジスペースともに広々していてさまざまな使い方に対応できそう。フロントドアの下部にスピーカーを埋め込まないためドアポケットがかなり広いのは使い勝手がよい。XC40、今から頼んでも納車を待たされることを除くと欠点が見当たらない。 スペック【 XC40 T4モメンタム 】 |
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