はっきり言ってアイス性能は期待しないほうがいい都心部などでスタッドレスを履かずに過ごし、年に1、2度だけ降る雪に翻弄されている。非降雪地域に住み年に1、2度の軽い雪道ドライブの為だけにスタッドレスタイヤに履き替えている。このところ、そんなユーザー注目のタイヤが増えてきた。 今回紹介するのは「ミシュラン クロスクライメート シリーズ」。ジャンルとしては近年国内で需要が急激に伸び出しているオールシーズンタイヤで、その商品コンセプトは「雪も走れる夏タイヤ」だ。 まずハッキリと言っておこう。アイス性能は期待しないほうがいい。毎年スタッドレスタイヤに履き替えて雪が降る地域でもアクティブに走ったり、夜や早朝に凍結の可能性が高い地域に住んでいるなら、今まで同様にスタッドレスタイヤをお勧めする。 そうではなく、どうにかスタッドレスタイヤを使わずに冬シーズンを不自由なく過ごせないものか? と考えているユーザーは、次の交換タイミングでこのタイヤを履くのもありだ。メリットとしては… 重視したのはウェット→ドライ→雪→アイスの順番クロスクライメートはヨーロッパ圏を中心に2015年に登場。ミシュランのお膝元であるフランスや、高い性能を必要とするドイツ、さらには目の肥えたユーザーが多いとされるイギリスで高い評価と実績を重ね、満を持して、最も過酷な冬期路面環境の日本市場に導入が始まったわけだ。 クロスクライメートが重視する性能は、市場ニーズに沿って、ウェット→ドライ→雪→アイスという順番。スタッドレスタイヤはブロック剛性が低いので、ウェットとドライの制動距離が長いという弱点が開発の背景にある。スタッドレスで最も求められるアイス性能が4番目? と思うかもしれないが、それを求めるならオールシーズンタイヤをそもそも選ぶべきではない。 こうして開発された「雪も走れる夏タイヤ」の素性に飛び道具はなく、トータルバランスによる仕上げとしか言えない。コンパウンドは低温でも発熱しつつ、発熱し過ぎないシリカを、独自ポリマーを使いながら高密度分散。そのうえで雪のグリップ効果を狙ってV字型のユニークなトレッドパターンを採用している。 また、進行方向側のブロックの角に面取り加工を施し、強いブレーキ時にブロックが倒れて接地面積が減る現象に対応。ブロックのサイプの奥には、当然ながら倒れ込みを防ぐ立体サイプも採用されている。 ドライ&ウェット性能はエナジーセーバーに匹敵テストコースでは、ミシュランのベーシックタイヤ「エナジーセーバー」と比較することができた。スラロームもある高速路は「トヨタ C-HR」、ハンドリング路は「VW ゴルフ」、ウェット路は「日産 セレナ」での試乗だ。 高速路の静粛性や乗り心地は同レベルだが、ハンドルの初期応答性能、特にスラロームでの切り返し操作を含めた応答がエナジーセーバーよりもダイレクトで優れている。レーンチェンジなどでハンドルの切りすぎが抑制され、姿勢変化少なくドシッと走れる。 ウェットハンドリングでは、横方向の踏ん張り感、特に旋回中のハンドルの手応えで勝っている。V字型のサイプが横方向からの入力ではヨレにくいためか、感覚だけならスポーツタイヤのような手応えとコントロール性を示す。しかも、排水性が良いのか水深のあるエリアでも的確に路面を掴んでいる感覚だ。 ただ、追い込んで滑りそうな限界付近になると、ブロックがクニッと急激によれて不安感が漂う。とはいえ、このタイヤでスポーティな走りはしないはずだ。 ブレーキ性能もエナジーセーバーとほぼ同等のレベルで、こんなにドライ&ウェット性能が高いタイヤで雪道を走れるの? と心配になるほど。 コーナーリングやアイス性能を期待してはいけない肝心の雪の性能は一般道で試すことができた。 高速道路のドライ路面では、ハンドルのシッカリ感に加えて乗り心地の良さ、正確には収まりの良さを確認。ギャップを乗り越えた後の振動の収まりが速く、スッキリした乗り味だ。ただし、テストコースでは確認できなかったが、ザラついた路面などでスタッドレスタイヤになはい「ゴー」という耳につく低周波音が出る。オーディオを掛ければ気にならない程度だが、夏タイヤとは違った音質で、V字のブロックパターンが関係していそうだ。 道中、高速道路の冬用タイヤ規制のチェックは当然ながらクリアして、雪道に入った。第一印象は、高速道路での比較的硬めのタイヤの乗り味から予想していたよりグリップしてくれる、というもの。圧雪路面ならかなりの安心感で走れるし、登坂力もある。シャーベット路面はむしろスタッドレスより強いのでは? と思えるほどだった。しかしながら、調子に乗ってはいけない。 加減速の縦方向グリップは強いのだが、その感覚で曲がろうとすると、横方向がグリップしない。滑り出しも唐突で、コーナーリングは心配性レベルで慎重に行った方が賢明だ。それと、凍りかけたような固めの轍(わだち)からの脱出に苦労する。横グリップが足りないので、わだちの壁を脱出する力が弱い。こんな時は速度を落としてハンドルを多めに切って脱出するのが賢明だろう。 そしてアイス路面はやはりグリップしづらい。ためしにトレッド部のゴムを触ってみたところ、皮膚が吸い付くような粘り気があって氷も噛みそうだが、実際は細かいサイプでエッジ効果を発揮するスタッドレスタイヤとは比較にならないレベルだ。 また、前進は良いが、バックではV字型ブロックパターンが影響するのか、圧雪路面でもグリップしにくい。圧雪路の下り斜面の駐車場に頭から駐車したら、バックで出られなくなるなんてことが考えられるので注意が必要だ。 要は“エナジーセーバー並のドライ&ウェット性能があるのに想像以上に雪道も走れる”というのがクロスクライメートで、スタッドレスタイヤ感覚で走ると痛い目を見る。逆に雪道を走り慣れているユーザーなら、このタイヤの特性を上手く使いこなすことは可能だろう。 結論は、あくまでもサマータイヤを通年で履いていて、年に数度の降雪にも対処したいユーザーに向けたタイヤ。ちなみに僕のようなタイプにはピッタリでもあり、性能にも満足できた。クロスクライメートは全額返金保証プログラムの対象にもなっている。というわけで現在、早速履いてみているところだ。 サイズ展開165/70R14 85T XL~275/45R20 110Y XLまで全78サイズを展開予定。 |
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