今ひとつ売れない現行型のMC版を調査「新時代の国民車」を探す実地調査企画の第15回目。今回の調査対象は、2018年12月に新デザインへと変更されたトヨタ プリウスである。 超メジャー車種ゆえ、車に詳しくない人に対しても過剰な説明は不要だろう。日本を代表するハイブリッド車である。 初代プリウスは1997年12月、世界初の量産ハイブリッド乗用車として登場。2代目は2003年から2009年まで販売され(※ごく一部のグレードは2011年まで販売)、そして3代目は2009年に発売されると同時にバカ売れ。まさに「国民車」と呼びたくなるほどの状況となった。 そして2015年12月9日、「40.8km/L」という驚異のカタログ燃費を誇る4代目、すなわち現行型プリウスは満を持してデビューした。 が、これが今ひとつ売れなかった。 もちろんその他の一般的な車と比べれば十分売れているわけだが、「国民車プリウス」として見るならば、やや物足りない数でしかなかったのだ。 原因はデザインだろう。 もちろんカタチの好みというのは人それぞれであるため、一概に断ずることはできない。だが筆者を含む多くの人は、ちょっと攻めすぎた感が否めない現行前期プリウスの顔つきや後ろ姿を「謎」あるいは「好きじゃない」と判断したのだ。数字が、それを物語っている。 で、「これはマズい」ということで割とプレーンなニュアンスの顔つきや後ろ姿へと改変し、同時に衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense」を全車標準とするなどしたのが今回のマイナーチェンジである。 そのような変更を受けた今度のプリウスはぶっちゃけどうなのか? 「A“ツーリングセレクション”」というグレードを借り出し、ごく普通ぐらいのペースで都内および近郊の各所を走り回ってみた。 結論から申し上げると、やはり4代目プリウスというのは悪くない、なかなかステキな実用乗用車であった。 新採用のTNGAが効いた、いい車であるこれまでの筆者は例の妙ちきりんな顔つきに嫌悪感を抱いていたため、現行プリウスという車に対してどうしてもフラットな心で接することができなかった。 だが今回のマイナーチェンジにより「特に嫌悪感はない」ぐらいの姿形になったことで、ほぼフラットなマインドで接してみれば、やはりいい車ではある。実用車としてオススメできる一台だと感じられた。 ただし「グレード選択は慎重に行う必要がある」とも感じた。 以下、ご説明しよう。 パワーユニットなどのメカニズムに表立った変更はないようだが、1.8L直4エンジンと電気モーターの協調関係は相変わらず絶妙である。 住宅街などの静かな道路を走っている際には、今エンジンがかかっているのか、それともモーターのみで走行しているのかは、もちろん耳でわかる。だがにぎやかな幹線道路や高速道路を走る際は、計器の表示を見ない限りはハッキリいってほとんどわからない。それぐらいシームレスなのだ。 そして先代(3代目)と比べると全体として明らかにパワフルであるため、加速時等のストレスが少なく、また先代と比べて車内は圧倒的に静かでもある。 さらに言えば、現行型から新たに採用された「TNGA」なる新世代の車台がかなり効いている。 舗装の良い場所では「路面に吸い付くかのような」乗り味が堪能でき、カーブでは「安定っぷりと俊敏っぷり」という、相反するはずの要素が見事に両立されている。ホント、いわゆる「いい車」だ。 これをして、多くの著述家は4代目プリウスを「クラウンに勝るほど静か!」「乗り心地も下手な高級車以上!」的に評することも多い。 だが、筆者にはそこまでのものとは思えなかった。 もちろん、先ほど申し上げた「いい車である」との見解をくつがえすつもりはない。だが「さすがに“高級車以上”は大げさじゃないですか?」とは思うのだ。 価格次第ではなかなか素敵な実用車マイナーチェンジされた4代目プリウスは、確かに非常に静かな車だ。だがそれは「3代目と比べて」の話である。 もしもこれ単体で考えるなら、高速巡航時は常に感知される「奥のほうから聞こえるエンジンとモーターの微妙なこもり音」は、ハッキリいって少しだけ不快である(ただし超不快というほどではない)。 もちろん3代目のそれと比べれば明らかにこもり音は小さくなっている。だが「快適そのもの」のレベルにまで達したわけではないのだ。 また新しい車台が快適な乗り心地と安定感たっぷりの乗り味をもたらしていることに疑いはないが、とはいえ決してパーフェクトではない。 舗装の良い路面では「こりゃもしかしてパーフェクトかよ!」とすら思うが、高速道路のちょっとざらついた舗装ゾーンを走る際には、床方向から微妙な振動と「床面のたわみ」のようなものが感じられてしまう。いわゆる高級車では基本的には感じない現象である。 ……ここまでの原稿を読む限りでは、この筆者はマイチェン後のプリウスをホメているのかけなしているのか、まったくわからないかもしれない。 ハッキリ申し上げるが、わたしはホメている。これはなかなか素敵な実用車であると、試乗を通じて確信したからだ。 だがそれはグレード次第というか、より具体的には「価格次第」だ。 お手頃感のある中間グレード「S」がおすすめ今回の試乗車両は「A」という上級グレードの、さらに「ツーリングセレクション」という上級ラインである。その本体価格は300万6720円で、装着されていたオプション装備を含めた車両価格は349万3260円に達する。 そこに諸費用を加えた乗り出し価格は「360万円前後」といったところだろう。……まずまずのお値段である。 これがA“ツーリングセレクション”ではなく最上級グレードの「Aプレミアム“ツーリングセレクション」になると車両価格だけで328万4280円になり、乗り出し価格は380万円前後、つまり「400万円近く」にまで達してしまう。 そこまでの予算を投じるとなると、人間の目というのはどうしても厳しくなるものだ。 もしも手頃な総額であったならば気にもならない(または割り切ることができる)前述のわずかなこもり音や、舗装が悪い路面での若干の粗さ、あるいは内装樹脂パーツのちょっとしたショボさなどに対して「○○○万円も払ってこれかよ……」と、どうしても不満に思ってしまうのだ。見たくもないアラが見えてしまうのだ。 それゆえ、厳しめに見れば若干のアラもなくはない4代目プリウスに、心からシアワセな気分で乗るためには、筆者としては「S」という中間グレードが良いのではないかと思う。 Sの場合、シート表皮は本革や合成皮革でなくファブリック(エンボス付き)になってしまうが、基本的な装備はおおむねデフォルトでそろっており、前述のとおり「Toyota Safety Sense」も標準装備。それでいて車両本体価格は256万5000円で済む(※2WDの場合)。 これに必要なオプション装備を付け、そして店頭での値引きもコミで「総額280万円か290万円ぐらい」で入手できるのであれば……4代目プリウスが持つ若干のアラなど、たぶんほとんど気にならないだろう。 いや、むしろ「いい車を手頃な金額で買えた!」と小躍りする可能性すらある。 繰り返しになるが、「総額200万円台で買える」と思えば、現行プリウスは非常に良い実用車だ。取材当日の燃費は、車載の燃費計によれば22.4km/L。イメージとしては「市街地が20km/Lぐらいで、高速道路が25km/Lぐらい」という感じだ。 さすがにカタログ燃費には届かなかったが、十分納得の数値である。そしてここまで述べてきたとおり、乗り味もなかなかのもの。 かつての神通力は失っているプリウスだが、グレードによっては、依然として「まあまあナイスな国民車」にはなり得るだろう 【プリウス A“ツーリングセレクション” 2WD=300万6720円】 国民車とは今、「新時代の国民車」が待たれている。いや、それを待っているのはわたしだけという可能性もあるわけだが、筆者が考える新時代の国民車とは以下のようなクルマだ。 「安価だが高機能かつ低燃費で、それでいておしゃれ感もある、程よいサイズの実用車」 100万円台でまるっと買えるのが望ましく、それが難しい場合でもせいぜい200万円台前半ぐらいまで。自動車オタクが求めがちなマニアックな諸性能はどうでもよく、どんな状況でも普通か普通以上ぐらいに気持ちよく運転でき、燃費が良くて維持費も安く、人と荷物をある程度積載できて、邪魔くさくないサイズで、それでいて大のオトナが乗るにふさわしい質感とデザインも備えているクルマ。 ……そんなある意味ぜいたくな一台を探し出すため、筆者はこのたび「一般社団法人 全日本国民車評議会」を(脳内で)設立し、実地調査に乗り出すことにした。 【国民車調査バックナンバー】 ■第2回 スズキ ジムニー、ジムニーシエラ ■第3回 日産 オールラインナップ ■第4回 スズキ スイフトスポーツ ■第5回 トヨタ カローラ スポーツ ■第6回 ホンダ シャトル ■第7回 ホンダ N-BOX ■第8回 スズキ ソリオ ■第9回 トヨタ シエンタ ■第10回 スバル XV ■第11回 ダイハツ ブーン ■第12回 スズキ クロスビー ■第13回 スバル インプレッサスポーツ ■第14回 マツダ デミオ ■2018年「国民車会議」振り返り |
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