実用性が劇的に向上したかねてから待たれていたリーフのハイパフォーマンス・モデル、リーフe+がいよいよデビューする。バッテリーの総電力量はスタンダード・モデルの40kWhに対して62kWh。モーターは型式こそEM57と同じだが、最高出力は110kW/3283-9795rpmから160kW/4600-5800rpmへ、最大トルクは320Nm/0-3283rpmから340Nm/500-4000rpmへとスープアップされている。超低回転から大トルクを発生するモーターによって、スタンダード・モデルでも十分に加速はいいが、車両重量が160kgほど重たくなることへの対応だろう。 気になる航続距離はスタンダード・モデルが322km(WLTCモード)/400km(JC08モード)/240km(米EPA)のところ、458km(WLTCモード)/570km(JC08モード)/361.6km(米EPA)と約40%伸長。バッテリーが55%容量アップしたのだから、電費としては少し落ちていることになる。車両重量による影響が大きいのだろう。とはいえ、長大な航続距離はe+の最大の魅力。初代リーフの初期モデルなどは、真冬にヒーターを効かせていると50km程度しか走れないなんてこともあったが、e+なら条件が良くなくても300km近くはいけそう。約8年の時を経て、実用性は劇的に上がったと言える。 実用性といえば充電性能の向上も見逃せない。急速充電器を使うと、SOC(充電状態)が低いときにはスピーディだが、50%を超えて80%に近づくにつれて電流が絞られて遅くなっていく(急速充電では上限が80%)。その特性は大容量となっても同じだが、40kWhでSOC50%から30分充電したときに比べて、62kWhでSOC50%から30分充電すると約40%多く電力を入れられる。小さなコップよりも大きなコップのほうが、気を使わないでドボドボと水を入れられるイメージだ。 また、現在の急速充電器は出力電力50kWが一般的だが、e+は100kWまで対応。そう遠くない将来に普及する高出力急速充電をも見越している。普通充電では、従来はオプションだった車両側の6kW充電器が標準対応となった(ノーマルは3kW)。 生産技術でコンパクトなモジュールを実現バッテリーは容量が55%アップし、サイズも大きくなってはいるが、それは最小限に抑えられている。後席下部を中心に厚みが増しているものの、最低地上高を15mm下げ、全高を5mm上げたことで吸収し、40kWhのスタンダード・モデルとまったく同一の室内スペースを確保している。 なぜサイズアップを抑えられたかといえば生産技術によるところが大きい。搭載しているセル(単電池:バッテリーの最小構成単位)は40kWhが192セルで62kWhは288セルとなるが、前者は8セルを一つのモジュールとして、それらをワイヤーハーネスで接続していた。接続部分にはどうしても数センチ単位の隙間が生じていたが、62kWhではハーネスを基板化してレーザーで接合することでスペース効率を高めたというわけだ。さらに8セルモジュールに限定される必要がなくなり、自由にセル数を設定できる新型モジュールとされている。 セルそのものも少し進化し、サイズに対するエネルギー密度としては約25%アップしたという。ちなみにバッテリーの重量は440kg。今後、エネルギー密度はまだ進化する余地が残されているという。現在のリーフのリチウムイオン・バッテリーは正極材にニッケル(N)、マンガン(M)、コバルト(C)を使用する三元系でNMCは111と比較的に一般的だが、これを変更するなどでエネルギー密度はさらに高まることになるだろう。 また、40kWhは2並列×96セル=192セルだったが、62kWhは3並列×96セル=288セルとなり、大電流化が図られている。インバーターの高性能化と合わせてパワートレーンの高出力化が実現したのだ。 加速性能が向上、サーキットでの走りにもしっかり対応まだナンバープレートが装着されていないゆえに今回はサーキットでの試乗となった。主旨にかかわらず、サーキットとなると攻めた走りをしたくなってしまうものだが、e+はハイパフォーマンス・モデルと呼ぶに相応しい活発な走りで応えてくれた。 もともとリーフは加速に優れるが、e+は輪をかけて速い! ゼロ発進からグイグイとくるのは相変わらずだが、伸びやかさが違う。EVの多くは速度が高まるほど加速が鈍化していき、100km/hオーバーでは顕著になるが、e+は120km/h程度でも衰えがないように感じられるのだ。日産のデータによるとスタンダード・モデルは50km/hまで最大加速Gが続いたのちに徐々に加速度が落ちていくが、e+は70km/hまで最大加速Gが続く。また80-120km/h加速は13%短縮されているという。 シャシーではおもにバッテリー周りの剛性を高めるとともに、重量増や重心変化に適応させるべくサスペンションを仕様変更。さらにフロントストラットのマウンティングにボールベアリングを採用することで低フリクション化を図り、滑らかで安定したステアリングフィールを実現している。 バッテリーを床下に敷いたリーフはもともと低重心で想像以上にハンドリングがいいが、大容量化で重量増となったことで重心高はさらに10mm下がったという。スタンダード・モデルと乗り比べてはいないが、サーキットを攻めるような走りにもしっかり対応していることには改めて驚かされる。アクセルを踏みこめば340Nmのホットハッチ並の大トルクが即座に引き出せるので、タイトコーナーの立ち上がりなどではフロントタイヤがたまらず空転し始め、VDC(ヴィークルダイナミクスコントロール)のお世話になったりもするが、破綻する素振りもみせずに安定して走っていく。 2代目となる現行リーフだが、シャシーは初代からのキャリーオーバー。サスペンションに凝ったシステムを使うでもなく、タイヤも8年前に開発の、しかも電費コンシャスなものだが、それでこれだけ走れるのは立派。EVの大衆化を目指してコストを抑えているものの、料理する腕が確かなのだ。 価格差は想像していたより抑えられた今のところ世界一売れているEVであり、さしたるライバルも見当たらないリーフだが、来年あたりからは続々とフォロワーが表れて競争が激化しそうだ。EVの普及にはいくつか超えねばならぬ壁があるが、少なくともe+は航続距離という大きな課題には一定の回答を見せたといえる。高速ロングドライブを日常的にこなしたいというユーザー以外ならば、そう不便を感じないレベルにはなったはずだ。 車両価格も安いとまでは言えないものの、e+ Xが416万2320円、e+ Gが472万9320円で40kWhとの価格差は想像していたより抑えられた(Gグレードでの価格差は73万80円)。そして何よりリーフには累計販売台数30万台以上で得た知見がある。後発のライバルに対しても、十分な競争力を発揮しそうだ。 スペック【 リーフ e+ G 】 |
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