必要最低限をさりげなく置いてくれている感じがいい昨年、会社を辞めてフリーランスになってから、身の回りのことに少し余裕を持ってできるようになってきた。朝起きてもバタバタと出勤の支度をすることなく、パジャマのまま簡単な朝食を作って、お湯を沸かして、あたたかいお茶を淹れる。天気の良い日は、洗濯機をまわして、その間に掃除機をかけたり、本を読んだり。なんとなく調子が出てきたお昼頃からぽちぽちと原稿を書き始める。 自分のペースで自分の歯車をまわせるというのは、なんて幸せなことなのだろう。フリーランスになってみて、様々な仕事を請け負えるとか、お金を稼げるとか、そういったことではなくて、日常の些細な営みの中に自分が思う幸せがあるのだと気づいた。 久しぶりにダイハツ ムーヴに乗って、あらためてそんなことを考える。これまでは目まぐるしく仕事に追われながら、高級なクルマやスーパーカーなどに乗って、楽しい思いもたくさんしたが、ムーヴのようなクルマの良さには気づけていなかったような気がする。 試乗車のムーヴは「X“SA III”」で、ターボのついていない自然吸気エンジンのグレード。パワーは軽自動車なりで、速くはない。でも、なにかと比較しないかぎり、遅いとも思わない。最近よくある天井がものすごく高い軽自動車とは違って、クルマに乗り込んでみると「思ったより広いかも」と自然に感じさせてくれるサイズ感。そして、後席に座ってみると意外にゆったりと過ごせる。足元は広々としているし、リアドアのウィンドウ後方に小さな窓があるおかげで開放感がある。過剰なものはなく、必要最低限をさりげなく置いてくれている感じだ。 ほかにも、助手席背もたれの後ろ側にクルリと回すと現れるフックがついていて、「なぜここに?」と思ったら、運転席から手を伸ばしてみると使いやすい位置にある。運転席にはシートヒーターが標準装備されていて、しかも座面だけではなくて背面まであたためてくれるタイプ。「シートヒーターなんて過剰な装備じゃないの?」と言う人もいるかもしれないが、女性からするとどんなクルマにも付けてほしいくらい、あると嬉しいものだ。ムーヴをあれこれ触ってみると、思いやりとコストがとてもいいバランスで成り立っていることに気づく。 モデルチェンジしても流されないでいてほしい最近の軽自動車は規格ギリギリまで大きくしているモデルが増えてきて、装備も豪華だったりする。そういったモデルに乗り、頭上に広がる広大な空間を見上げては「ユーザーの過剰な要求やメーカーの市場競争がそのままいびつな形になっているみたい」と思っていた。これは自動車に限ったことではなく、身の回りに便利なものが溢れている今の世の中、どこでも起きていることのような気がする。「私たちが必要なのは本当にこういうものだっけ?」と、振り返ることもできなくなっているみたいに。 ムーヴに乗って「とてつもなく普通なクルマだ」と思った。でもその普通のなかには「大っぴらに言う必要のない気遣い」みたいなものが詰まっていた。こういったクルマに触れると、自分の生活を大げさに飾る必要はないんだなと少しの安堵を覚える。さらに、そのなかでも思いやりを忘れてはいけないんだ、とも。 クルマも社会も手に負えないような方向へ膨らんでいく時代に、ムーヴのように等身大のクルマがまだぽつんといてくれることが嬉しい。そろそろムーヴもモデルチェンジの時期が迫っているはずだが、どうか流されないで、と願うばかりだ。 ---------- 【 ダイハツ ムーヴのその他の情報 】 スペック【 ムーヴ X "SA III" 】 |
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