99%を刷新してレンジローバーらしい質感を手に入れた“よりレンジローバーらしさが増した”というのが、新型「イヴォーク」を見て触れて乗ってみての結論。それはつまり、同社の上級モデルが持つ「レンジローバー」ならではの豊かで贅沢な乗り味走り味や、そこから生まれる独自の世界観を新型イヴォークも手に入れたということだ。 レンジローバーのラインアップでもっともコンパクトなモデルであるイヴォークは、2010年に3ドアの衝撃的なクーペボディでお披露目され、2011年に通常の5ドアも伴って発売された。どちらかといえばデザインコンシャスな1台であり、エレガンスの中にも硬派なクロカン4WDテイストが漂うレンジローバー・ファミリーの中では、もっともSUV的な存在でもあった。 それが新型では変化した。 もちろんデザインコンシャスな部分はこの新型でも受け継がれる。先に登場した「ヴェラール」が採用する新世代デザインのテイストを、これまでのイヴォークのデザインと融合したことで、造形自体に深みや奥行きが出てきた。これまではどちらかといえば2D的だったデザインが、基本骨格がより逞しくなったことで3Dになったという感じだ。 新型イヴォークは99%が新設計されており、先代と共用しているのはドアのヒンジのみだという。基本骨格に関しても、新たにプレミアム・トランスバース・アーキテクチャ(通称PTA)を採用。ボディ剛性向上や軽量化に寄与すると共に、最近の自動車としてはもっとも重要ともいえる電動化に対応したのが特徴だ。 今回採用したMHEV(マイルドハイブリッド)はもちろん、今後はPHEV(プラグインハイブリッド)も追加予定で、リチウムイオンバッテリーやその他のユニットを収納するスペースがあらかじめ確保された構造となっている。このため床下にバッテリーを抱えつつも、キャビンやトランクが狭くなるなどの影響が出にくい。先代モデルと比べると3サイズは同じでありながら、ホイールベースは21mm長くなり、ニールームも20mm広がっている。 インテリアのセンスや質感も上級モデルに迫る新たな時代に対応したアーキテクチャの上に設えられたインテリアも先進的だ。他のレンジローバーのモデルと同じように、タッチプロデュオと呼ばれるダッシュボードからセンターコンソールにかけての2つの液晶画面を備え、メーター内の液晶(グレードによって部分的な液晶と全面液晶がある)と合わせてデジタルなクルマであることを感じさせる。 先進性が盛り込まれながらも、そこに漂う雰囲気はどこか落ち着くオーガニックな感覚があるのもレンジローバーならでは。グレードによっては従来のレザーのほかに、ウール混紡スエードクロスなどが用いられ、感度の高い家具のような雰囲気さえある。新型イヴォークが気になっている人の多くは、この内外装デザインにノックアウトされるのではないだろうか? もちろんそれはデザインが圧倒的な注目を集めた先代でも同じだったわけだが、新型は質感の高さがプラスアルファされており、上級モデルの世界観を彷彿とさせる要素になっている。 ガソリンモデルよりディーゼルモデルが味わい深い今回試乗したのは「P250」と呼ばれる2.0Lガソリン直噴ターボと「D240」と呼ばれる2.0Lディーゼルターボの2種類。ともに48Vのマイルドハイブリッドで、11kWのベルト式インテグレーテッドスタータージェネレーターが組み合わせられるタイプだ。 最初に試乗したのはP250。最高出力は249ps、最大トルクは365Nmを発生する。実際に乗ってみると、エンジンそのものには大きな感動はない。いかにも実直な2.0Lガソリンターボという印象で、官能性よりは真面目に仕事をこなすタイプ。ベルト式ISGは11kWを発生して発進などをアシストする仕組みだが、「メルセデス・ベンツ Cクラス」のBSGのように明確にモーターの力が加わっているという感覚は少ない。これは車両重量が1818kgと軽くないことも影響しているだろう。これまでのガソリンターボと比べて違和感のないパワー&トルクのフィーリングがそこにある、とも言えるが、個人的にはもう少しパワフルな感覚が欲しいと思った。 一方で魅力的だったのはD240。最高出力は240psと驚くほどではないが、最大トルクは実に500Nmと圧倒的なトルク感で頼もしい加速が味わえる。巡航等では1500rpmを下回るエンジン回転で十分以上のトルクがあるため、1880kgとガソリンモデルよりさらに重いのにもかかわらず、アクセルを少し踏むだけでゆとりあるドライブが楽しめたのだった。もっとも日本に導入されるのはもう少し出力の低い「D180」となるが、それでも最大トルクは430Nmを発生するから余裕ある走りをすることは間違いないだろう。 エンジンの違いは乗り味走り味にも表れている。端的にいってガソリンモデルが軽快で、ディーゼルモデルは重厚だ。そうした違いも含めて、よりレンジローバーらしい味わいを感じるのはディーゼルモデルの方だ。新型は以前より遥かにストローク感の増した濃厚なサスの動きが“らしさ”を生んでいて、重厚な走りが合うからだ。 先代のイヴォークはフラットな乗り味走り味が特徴だったが、それゆえに路面の凹凸に対してストロークが途中で止まるようなツンツンとした感触が出ることがあった。新型イヴォークでオンロードを走って印象的だったのは、コーナリングにおいて他のレンジローバーのモデルと同様のフィーリングを感じさせてくれたこと。レンジローバーのコーナリングは、ハンドルを切っていくと豊かなロールが生まれ、最後にアウト側の後輪がしっとりと深いストロークを伴って、決して踏ん張りすぎることなく沈み込んで気持ちよくコーナーを駆け抜けていく。 ボーダーレスな存在感。弱点はワイドな車幅約500km以上の試乗コースにはかなりの割合でオフロードが含まれていた。ダートに始まってモーグルのある渡河セクションやロックセクションを含む急勾配の登り下りなど、様々なシーンを新型イヴォークは難なくこなす。渡河水深限界がこれまでの500mmから600mmに増したことや、クリアサイトグラウンドビューと呼ばれる車体下部の映像をリアルタイムでモニターに映すことで、ボンネットに隠れた車体の下を可視化する技術も投入された。 4WDシステムは、ドライブライン・ディスコネクト機能を採用したことで効率よくFFと4WDを切り替えることも可能としている。また電子制御によって走行中の路面状況を自動的に検知し、状況に応じた最適な車両設定(サスペンション、トランスミッション、トラクション)を行なうテレインレスポンス2を備えたことで、都市型SUVながらも他のモデルには不可能な走行を可能としている。 もちろんランドローバーの試乗チームが何ヶ月も前から入念に準備をしてきたコースだからこそ、イヴォークのオフロード能力が発揮されるわけだが、それでも並の街乗りSUVでは厳しそうなシーンはたくさんあった。 ライバル比較だが、イヴォークには真正面から比較できる存在があまりいない。例えばボディサイズ的には「ボルボ XC40」や「BMW X2」辺りが妥当だが、価格レンジはもう少し上に位置する。とはいえ「BMW X3」や「メルセデス・ベンツ GLC」と比べると全長はかなり短いし、価格的にも下に位置している。 実際にクオリティや走りで見るとXC40やX2より1ランク上で、X3やGLCに近いものがあるといったところでボーダーレスな存在だ。 一方で一般的なカテゴリーで分けてしまうと、ボディサイズで見たら割高に思えるし、価格で見たらボディサイズが小さいように思えてしまう。独自のデザインコンシャスな部分や、レンジローバー・ファミリーの世界観にブランド価値を感じて買うモデルだとも言える。 また、先代モデルもそうだが、今回のモデルでもミラー込みの全幅は2100mmに達しており、日本の駐車場事情においてはやや苦戦する可能性があるだろう。購入を考えているならここは確認しておいたほうが良さそうだ。 日本への導入は夏頃が予定されている新型イヴォーク。上陸時にはいち早く試して日本の道路での走りもレポートしたいと思う。 スペック【 インジニウム Si4 250ps 】 |
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