ミニバンは顔が8割! 新型は顔面インパクト勝負に出た「もはやミニバンは顔が8割ですから。今や全メーカーで進化が進み、どれも使い易くなって不満が残るレベルではなくなっています。ミニバンの購入動機の一番は広さですが、2番は外観の良さ。性能底上げの結果、2番目がよりクローズアップされているのかもしれません」。 今回はつくづくこの言葉が心に染みるぜ。そう、以前聞いた国内ヒットミニバン開発者の金言だが、いよいよそれが現実の物となってきたのだ。それはデビューから実に12年ぶりのマイナーチェンジとなった三菱の新型ミニバン「デリカD:5」。なぜ12年ぶりにしてマイチェンなのか? 同時に全長4.8mサイズで、人気の5ナンバーサイズでも、アルファード系ラージサイズでもない絶妙な立ち位置にも驚くが、パッと見やはり気になるのはド派手すぎる顔。 マイチェン前とは似ても似つかぬ唐草模様、あるいは電気シェーバーのようなネット柄グリルに、左右のエラのように張り出した縦型LEDライトが超斬新! 実物は写真で見るより違和感はないもののいずれにせよ相当な顔面インパクト勝負に出ている。 しかもこのディーゼルの標準顔の他、唐草模様グリルを廃した上下左右ストライプ顔のアーバンギアと、旧型マスクをそのまま使ったガソリン仕様も残している。新型D:5は斬新、先進、定番、3通りの顔が選べるわけで、ミニバンは間違いなく顔が8割の時代に本格突入したのである。 改良版ディーゼル&8速AT化で力強く滑らかな発進加速にとはいえインパクトある標準ボディ顔でも、決してヤリ過ぎ歌舞伎顔で失敗したマツダ「ビアンテ」のような不気味さはない。あくまでもメカデザインに徹した三菱テイストの良さが滲み出ているが、同時にこの戦略から三菱の苦しい台所事情も伺える。 あのトヨタですら2016年、人気ミニバン「エスティマ」に10年目のビッグマイナーチェンジを受けさせざるを得なかった現実。そこにはほぼ国内専用車たるミニバンに、そこまで開発費がかけられないウラ事情がある。 小沢が勝手に想像するならば、日産グループ傘下で復活を期する三菱も去年やっと4年ぶりのオールニューモデル、エクリプスクロスを出すので精一杯。いくら根強いファンがいるとはいえ、ミニバンのデリカにフルチェンジの手間ヒマはかけられなかったのだ。 とはいえこの3フェイス戦略を見ればわかる通り、MCデリカには驚くほど力が入っており、骨格たるプラットフォームこそ新しくできなかったがそれ以外はオールニューと言えるほど。 まずいいのはデリカD:5最大の売りとなるディーゼルエンジンの全面リフレッシュ。現在国産ミニバンでクリーンディーゼルが選べるのはデリカだけで、自慢の2.2Lターボに次世代規制もクリアできるよう尿素SCR(選択触媒還元)システムを初導入。そのほか燃料噴射や燃焼室形状を改善すると同時にフリクション低減を図り、ギアボックスを6速ATから8速スポーツモードATに進化させた。 結果、発進加速は明らかに力強く滑らかに。ピークパワー&トルクは107ps&380Nmとパワーは2ps下がっているものの、トルクが20Nm上がっているのと、なにより8AT化が効いている。発進に使う1速をローギアード化し、逆に高速で使う8速を約18%もハイギアード化。結果、出足では後ろから押されるような余裕のパワーを感じ、高速ではエンジンが2000回転も回らず静かになった。 ついでに尿素で排ガスをキレイにすることにより、無駄に燃料を使わなくなり、ハイギアード化と合わせて燃費も向上。実情に近いWLTCモードで12.6km/Lはかなりのメリットだ。とはいえ尿素を含むアドブルーを補充し続けなければいけない面倒は増えたのだが。 高級セダン並みの乗り心地、内装の質感向上など充実度は高いが…さらに大きいのはボディの全面的補強で、フロントデザイン変更や歩行者保護規制に対応してフロント回りのフレームを新設計。お陰でステアリングやフロントサス回りの剛性が上がったほか、リアのフロア回りを中心にボディ全体を強化。さらに精度の高いデュアルピニオン式電動パワステや、より太いリアサスダンパーを導入し、乗り心地やハンドリングはちょっとした高級セダン並みに。 実際、今の日本でアルファード、ヴェルファイアを含めて380Nmの巨大トルクを出すラージ系ミニバンはなく、走りの良さと燃費の良さはデリカD:5の大きなアドバンテージと言える。同時に今回のマイチェンで防音性能もかなり強化され、明らかに静粛性も増した。 一方インテリアのクオリティアップもかなりのもので、本革シートでなくてもベージュ内装の質感はかなり高いし、デリカらしく汚れプロテクト機能も付く。またインパネはシフト回りにピアノブラック調の化粧パネルが付いたり、10.1インチのワイドディスプレイも選べるようになった。 ハイテク安全も三菱自慢のe-Assistは全車標準で被害軽減ブレーキ、車線逸脱警報システム、レーダークルーズコントロールなどが一通り付いて、ボンネット回りなど歩行者保護も新たに加わった。というわけで時代に合わせて走り、質感、安全性能を高め、最大のアドバンテージたるディーゼルエンジンの性能を強化してきたデリカD:5。充実度はとてもマイナーチェンジとは思えぬレベルで12年ぶりの意気込みを感じるが、とはいえこれで今の厳しいミニバン界で新たな客を取れるかってそう簡単じゃない。 既存のデリカファン以外を取り込めるかは疑問なぜなら今の売れ線ミニバンは基本全長4.7m×全幅1.7mの5ナンバーサイズで、トヨタのノア、ヴォクシー、エスクァイアや日産 セレナが大半を占め、元祖ホンダ ステップワゴンがなかなか食い込めない状態。そこにちょっとデカめのデリカは食い込めないし、安い(継続販売される)ガソリン版はほぼ手つかず状態。 かといって未だかつてない絢爛さで勝負するトヨタ アルファード、ヴェルファイアの牙城に食い込めるかってそれまた疑問。つまり今回は三菱自慢のディーゼルエンジンやフルタイム4WD性能を愛する、デリカファンに向けてのリフレッシュがメインで本質は攻めというより守りと言ってもいい。 というかあのハデ顔作戦も三菱の熱いファンなら多少ヤリ過ぎても大丈夫だろう! という見切りの大胆作戦と取ることもできる。実は小沢の見立てでは、今後も日本のファミリーカーの事実上のメインは5ナンバーサイズの便利ミニバン。ここに向けて今後の三菱はどうでるのか? そこの疑問は解決されずで、もしや今後三菱は日産セレナの顔恐い版デリカを作る! かもしれないと思ったくらいなのである。 スペック例【 デリカ D:5 アーバンギア G パワー パッケージ(7人乗り) 】 |
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