AT制御の工夫で従来よりも上質な走りに新しい顔つきの話題が先行したが、デリカ D:5は中身も大幅に進化した。プラットフォームを流用したためにフルモデルチェンジとは呼ばないようだが、過去にもっと小規模の変更でもフルモデルチェンジを謳ったモデルはいくらでもある。 D:5にはガソリンとディーゼルがあって、顔つきを含め今回刷新されたのはディーゼルのみ。ガソリンはこれまでと同じモデルを継続販売するという格好だが、そのうちガソリンも新顔になるのか、しばらくするとガソリンがディスコンになってディーゼルのみになるのかはわからない。が、価格を抑えられるガソリン仕様をなくすのは考えにくいので、いつかはガソリンも新顔になると予想する。 2267ccのディーゼルエンジンはフリクション低減が図られ、最高出力は従来が148ps、新型が145psとほぼ変わらないものの、最大トルクが従来の360Nmから380Nmへと大幅アップした。これに加えてATが6段から8段へと変更され、1速は約8%低くなり、トップギアは約18%高く、全体で約27%ワイド化された。この結果、端的に言うと力強くなって、静かになった、また確認していないが燃費も向上するはずだ。エンジニアによれば、ドライバーが要求するトルクへの到達時間が短くなった。 乗ってみてすぐに感じたのは静粛性の高さ。発進時も巡航時も従来型よりも確実に静かになった。走りの面で従来型よりもそこはかとなく全体に上質さを感じるのは、AT制御のさまざまな工夫のようだ。例えば、アクセルオフ時のダウンシフト時にエンジントルクを一瞬増加させることで回転合わせをして変速ショックを低減したり、すばやくアクセルオフした際のアップシフトを一時的に抑制し、再加速時のもたつきをなくしたりといった制御が入っているそうだ。 ドライバーがキックダウンさせた際に従来ほぼ一律で6速から5速にダウンしていたのを、踏み込み方に応じて、6速から一気に4速にダウンするような制御も入ったという。大前提として、トルクアップのおかげで、従来ギアダウンしなければならなかった場面で変速しなくても必要な加速力を得られる機会が増えていることも、上質さの理由だろう。 たいがいのセクションは4WDオートで事足りる三菱お得意の4WD制御は相変わらず。D:5の4WDには、同社が「S-AWC(スーパーオールホイールコントロール)」と呼ぶトルクベクタリング制御が入ったシステムは使われていない。けれども、エンジントルク、AT、ヨーレート、ステアリング角などをセンシングし、電子制御カップリングで前後の締結力を調節している。これが雪上で実に具合がよろしい。タイヤがグリップ力を失わない限り、アンダーステアが非常にでにくいのだ。ステアリングを持ち替える手前くらいの切れ角を維持しながらぐるりと回り込む長いコーナーで、一般道ではやや無謀といえる速度を最後まで維持できたのには感心した。 歩けば足首がすっぽり埋まるほどのシャーベット状の雪というのはもっともグリップを得られない状態だが、最新のブリヂストンのスタッドレスタイヤとD:5の組み合わせであれば問題なし。確実に進んでいく。たいがいのセクションはオートのままで大丈夫だが、路面の凹凸によってどこかの車輪が浮き気味になっているような場所で発進する際にはロックモードをおすすめする。 特徴的な顔に慣れてもらおうということではないと思うが、ずいぶん早くから姿を明らかにし、メディアに対してはクローズドコースでの試乗を繰り返したD:5もようやく2月15日に発売された。公道でのなにげない走行でどうか気になるが、これまでのところ、ていねいにネガをつぶした、よくできたオフローダーであり、ミニバンだなと感じた。 低ミュー路でも大胆にステアリングが切れるアウトランダーPHEVアウトランダーPHEVの特徴はふたつある。ひとつはPHVであること。もうひとつは三菱が誇る車両運動統合制御システムのS-AWCのなかでも最も先進的な前後ツインモーター式4WD(ブレーキ制御によるAYC<アクティブ・ヨー・コントロール>付き)を採用すること。モーター駆動の電動車だからこそウルトラレスポンシブな車両制御が可能なわけで、ふたつの得意技を絡ませた同社の技術を全部載せしたクルマといえる。ランエボを電動化してSUV化したようなクルマなのだが、マニアックに過ぎるのか、市場にはその凄みが十分伝わっていないような気がする。 世の中の多くの4WD車は、エンジン(フロントエンジンの場合)が発するパワーをプロペラシャフトを介して後輪(後車軸)に伝えるが、このクルマの場合、前車軸はフロントモーターで、後車軸はリアモーターでそれぞれ駆動するのでプロペラシャフトは不要。それぞれのモーターを個別に制御すればよいので前後トルク配分はモーターの性能の範囲内で完全に自由自在だ。左右の駆動力配分はフロントブレーキを制御するAYCが担う。システムが必要に応じて内側の前輪にブレーキをかけることでクルマを曲げやすくする。 AYCの効果は低μ(ミュー)路で絶大。低μ路では、ステアリングもアクセル&ブレーキも操作量を最小限にとどめ、操作自体も優しくすることでタイヤのグリップ力を前後左右にうまく配分すべきというのが一般論だ。けれどもブレーキ制御AYC付きツインモーター式4WDのアウトランダーPHEVの場合、ドライバーは曲がりたい方向に積極的に、大胆にステアリングを切るべきだ。そうすることでシステムがドライバーの曲がりたいというその意思を理解し、積極的に内輪にブレーキをかけてクルマを曲げてくれる。前後モーターは最大のトラクションを維持すべく常時トルク配分を最適化し続ける。 実際、アウトランダーPHEVは低μ路に非常に強い。ツルツルの路面でもオーバースピードに陥らない限り、ドライバーはクルマをコントロール下に置くことができる。ESPを切ればクルマを横に向けることもできるが、ドリフトアングルを維持すべくアクセルを踏めば踏むほど、システムは車両を安定させるべくよりフロントへトルクを配分するため、クルマが元に戻ってしまう。もちろんそれは制御としては100%正しい。 姿かたちやブランドの面で気に入らないという人や家で充電できない人にまで積極的に勧めるつもりはないが、乗用車における最先端の技術を感じたい人には真っ先にこのクルマを勧めたい。 最後に乗ったエクリプスクロスにはシンプルなS-AWCが採用されている。前後輪間のトルク配分をリアデフに組み込まれた電子制御カップリングが、左右輪間のそれを前輪に備わるブレーキAYC(アクティブヨーコントロール)がそれぞれ担う。通常はFWDで走行し、必要が生じると素早く後輪にもトルクが伝わるほか、コーナリング中に車両が外に膨らむと内側の前輪にブレーキがかかり、クルマを曲げる動きが強まる。雪上コースであえてハイペースを保って走行してみても、ステアリング操作に忠実にクルマがしっかり曲がってくれ、安心感が高かった。FWDも選べるが、わざわざ三菱車を選ぶなら4WDを選ぶべきだ。 スペック デリカ D:5【 デリカ D:5 G パワー パッケージ(7名乗り) 】 スペック アウトランダーPHEV【 アウトランダー PHEV G プレミアムパッケージ 】 スペック エクリプスクロス【 エクリプスクロス G プラスパッケージ(4WD) 】 |
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