3列シートのSUVに需要があるのか心配していたが「なんだっけ、この感じ…」 マツダ「CX-8」の3列目シートに腰掛けて、運ばれるままに身を任せていると、スムーズな走りや静けさ、リラックスできるその雰囲気に、何かのクルマに乗ったときの感覚と似ていると思った。「あ、分かった。メルセデスベンツのSクラスだ」と声に出したとき、編集部の人に笑われたが、自分でも笑ってしまった。まさかそんな感想が自分の口から出てくるとは。 3列目シートはよくできていて、思いの外ゆったりと座れるうえに、一般的な女性の身長なら頭を天井にこすることもない。シートの両サイドはドリンクホルダーとなっているのだが、それはドリンクを置けるだけでなく、ちょうどいい高さのアームレストにもなる。腕を置くと自然に指で握れるくぼみがあって、とても楽ちん。これでもし2列目シートがなかったら、リムジンのようにゆったりと過ごせるショーファーカーになるのではと思ったほどだ。 マツダがミニバンをやめて6~7人乗りのクルマをSUVで作ると聞いて、そこまで思い切って大丈夫なのだろうか、3列シートのSUVに需要はあるのかと最初は心配していたが、実際に乗ってみてSUVでこんなにゆったりとした快適な空間を作れているのは驚きのひとこと。 NAモデルでも十分に良さを味わえる今回試乗したのは、2.5LのNA(自然吸気)ガソリンエンジン(190ps/252Nm)を搭載する「25S プロアクティブ(325万6200円)」。このモデルだと2.2Lディーゼルターボエンジン(190ps/450Nm、369万3600円~)や、2.5Lガソリンターボエンジン(230ps/420Nm、374万2200円~)が注目されがちだが、価格は高めだ。若い人たちなどは価格が安いモデルもどんなクルマなのか気になるところだろう。今回はあえて買いやすい価格のモデルを試乗してみることにした。 乗るまでは他のふたつのモデルに比べて、パワーは物足りないのだろうなと思っていた。ところが走り出してみると不足を感じない。低速でも高速でも必要なだけ力が出るので、パワーについては「やっぱり上のモデルを買えばよかった」とがっかりすることはないと思う。どっしりとした重厚感ある乗り心地の良さと、大きなボディを感じさせずスイスイと運転できる操縦性は、このグレードでも変わらない。インテリアなども黒で統一されていて、安っぽさをあまり感じないところも好印象。 SUVなので高さがある分乗り降りのしやすさはミニバンのようにはいかないが、小さな子どもがいる若いファミリーなら、友達家族と遊びに行ったりするようなときに7人乗りを活用することがあるだろうから、この値段で買えるクルマとしてはかなり満足度が高いはずだ。CX-8はスタイリッシュなデザインとその大きさもあって、いかにも高級車のような風貌をしているので、つい高いモデルを選びたくなるけれど、ベースに近いグレードでも充分CX-8の良さを味わうことができると思った。が…。 ディーラーの対応が残念で買うのをやめた人がいたマツダはCX-8だけに限らず、すべてのモデルに人が乗ったときに本当に心地よいものや使いやすいものを追求している。そういった意味でも、わたしはその誠実なものづくりが好きで、友人にもよく勧めている。実際、CX-8やそのほかのマツダ車が気になって、ディーラーまで行ってくれた友人は多い。 これは私個人の経験ではあるが、そこで肩を落として帰って来る人たちが少なからずいた。この半年だけでも「クルマは欲しかったけど、ディーラーの対応が残念で買うのをやめた」という人たちが4、5人はいただろうか。ある人は見積もりが何ヶ月も送られて来なかったり、ある人は試乗もできずカタログももらえず帰ってきたり、ある人はクルマのことを質問しても店員さんが詳しく知らなかったり……。いくら良いクルマを作っているとはいえ、購入するときにはその担当する店員さんからクルマを買いたいと思えるかどうか。 もちろん親切な店員さんがたくさんいるのも知っているが、これまでマツダ車を知らなかった人たちがディーラーを訪れていることをもっと考えなければ、お互いに残念な結果になりかねない。マツダがこれからCX-8のようにすこし高級なプレミアムカーを売りたいのだとすれば、ただ綺麗なディーラーを建てるだけではなく、その販売体制についてもしっかりと整えてほしいと、このクルマの出来栄えの良さを感じただけに強く思った。 ---------- 【 マツダ CX-8のその他の情報 】 スペック【 CX-8 25S プロアクティブ(6AT・FF) 】 |
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