ダイハツ版「DNGA」の第1号は新型タント「プリウス」「カローラ」「カムリ」「RAV4」「クラウン」など、トヨタの現行モデルと先代モデルを乗り比べて、大幅に乗り味が進化していることを感じ取っている人もいると思う。その原動力がTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)だ。 プラットフォームやパワートレーン(エンジンやトランスミッション)や電装系は開発時間もコストも異なるから、大手自動車メーカーではバラバラのスケジュールで更新されていくのが普通だ。こうした開発体制では、せっかく根幹のプラットフォームを刷新しても、エンジンなどほかの基幹部品は古いまま継続使用しなければならず、それが足かせになって大胆な進化が果たせないという弊害がある。 これを打開するべく、全ての基幹部品の設計を同時にリセットして、新たな価値観や技術によるクルマの進化を狙ったのがTNGAだ。そのダイハツ版が、ダイハツの頭文字の「D」を付けたDNGAというわけだ。 第1号車に選ばれたのは新型「タント」だが、DNGAは軽自動車のみならず、スモールカー(A&Bセグメント)と呼ばれる登録車までカバーする。言うなれば、次期タントは登録車の基準で仕上げられた軽自動車だ。また、DNGAは新興国のBセグメントなど、90カ国で販売する21車種のモデルをカバーする計画というから、量産によってコスト効率を大幅に高められるというわけだ。 ACCや駐車サポート機能も第二世代に進化以下、プロトタイプのインプレッションをお伝えしていこう。 まずは装備や新機能に驚かされる。ACCは全車速追従になり、高速道路で車線中央付近を維持する機能も追加、ステアリング操作を含む駐車サポート機能、道路標識の読み取り、誤発進抑制制御にはブレーキ制御も加わった。駐車サポートは電動パワステの容量が小さいことからハンドル切れ角が大きくとれず切り替えし回数は多めだが、設定は簡単で、駐車が苦手な人には便利だろう。運転支援システムの直接比較はできていないが、「ホンダ N-BOX」、「日産 デイズ」&「三菱 eK」、新型タントは横一線と見ていい。 凝ったデザインの液晶メーターやLEDヘッドライトも採用。特にカスタムは片側7個のLEDを組み合わせて対向車や前走車を眩惑しないように照らせるマトリクス方式のアダプティプヘッドライトになっている。 内装では乗り降りが楽な助手席の回転式シートや、運転席を超ロングスライドさせて前席後席の垣根をなくすように立体的に使えるシートアレンジが魅力的だ。 もちろんデザインも今風。リア周りのワイド感を出すのに「N-BOX」のような横一線のクロームエッジ加工などを取り入れても良かったように思うが、街中でもそれなりの存在感を発揮するはずだ。 軽量ボディや新開発の遊星ギア付きCVTに注目タントはボディで40kg、シャシーで10kg、その他で30kgと、合計80kgも従来モデルから軽くなった。自然吸気エンジンでもふだん走りなら十分に軽快な走りを見せ、改めて軽量化は走る・曲がる・止まる、全てに効く要素で、クルマの素性を高めることを実感する。 日本初の複数回(2回)点火を行なうエンジンもDNGAで刷新された。ターボと自然吸気は排気音やフケ上がり感が違い、回すと粒が揃う印象は自然吸気だが、排気音も含めるとターボの刺激が勝る。ここ一番でアクセルを踏んだとき、高回転でエンジンが唸るのに抵抗感がないなら、新型タントは自然吸気でもかなりよく走る。ターボであれば高速だけでなく、ワインディングも走りを楽しめるだろう。 剛性も30%向上した。ボディがガッチリとヨレない…とはいえないが、少なくとも軽自動車にありがちな、ボディがヨレてコントロール性が落ちるとか、旋回中にハンドル操作のダイレクト感や手応えが曖昧になる感覚が少なく、気持ちよく走れる。ブルブルした走行振動が少なく、乗り味の質も向上している。とはいえ路面のいいサーキットでは本質が見抜けないのも事実で、一般道で確認してみたい。 トルコンATのダイレクト感や高速での伝達効率の良さを兼ね備えた、新型CVTトランスミッション(D-CVT:デュアルモードCVT)もメカオタク必見。CVT(ベルト駆動)に遊星ギアを組み合わせることで、低速での加速感、高速域での燃費や伸び感を両立しているのはみごとだ。 試作車はやや硬めの乗り味。14インチタイヤが課題試乗したのはプロトタイプで、しかもサーキット限定という条件付だが、新型タントは背が高い割にはハンドリングにダイレクト感が適度にあって不安感なく走れた。サスペンションの伸び側が柔らかめで少しフワッとする反面、大き目の段差ではやや硬さを意識することもあったから、荒れた道を走ることが多い人は乗り味を確認するといいだろう。 飛ばさないならターボも自然吸気も似たような乗り味だが、走り好きなら、少し締ったターボのほうがハンドリングの手応えがあって楽しめる。ターボはパワステの容量も大きいので、ステアリングフィールも明らかにいい。 また、15インチはタイヤの横剛性が適度にあり、ハンドリングとの調和もまずまず仕上がっているが、超エコ仕様の14インチは完全にタイヤ負けだ。ハンドルの手応えと、クルマの曲がり方、ハンドル操作に対するレスポンスがあいまいだし、乗り心地も15インチよりも堅く感じる時があり、振動も気になる。(タントの)DNGAシャーシには15インチが合っていると思う。 一般道では乗っていないが、15インチを履くターボは走行振動の少なさでN-BOXに勝てそうだし、ハンドリングの良さでデイズに勝てそうなポテンシャルを備えている。14インチが一般道でどういう評価になるかは未知数だ。ボディ剛性が高まると、他のパーツもそれに合ったレベルが求められ、結果として車両価格が高くなってしまうというジレンマにダイハツはどう対処していくのか。今後もダイハツの展開から目が離せない。 |
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