大きくなった分広さを得て使い出がある良いクルマを作っているメーカーといえば、どこを思い浮かべるだろう。 自動車業界に入る前の、クルマに詳しくなかった頃の私は、輸入車だとメルセデス・ベンツやBMWなどの高級車ブランドにそういうイメージがあった。それ以外の、たとえば自分の手の届きそうな範囲で知っているメーカーではあまりなかったと思う。そのなかで、フォルクスワーゲンはなぜか自然に知っていたブランドのひとつで、輸入車なのに、とっつきにくさがなく、身近に感じる。きっと良いクルマなんだろうなという漠然としたイメージを持っていた。 「フォルクスワーゲン ポロ」を運転してみると、自分が描いていたイメージとそう変わらないことに気づく。なんとなく安心する感じ、良いものを所有している感じ。デザインもシンプルでクリーン。インテリアにはボディカラーと同じ色のパネルがあって、ほかのフォルクスワーゲンよりもちょっと遊び心を感じるところがいい。 去年の3月に発売された新しいポロは、フォルクスワーゲンの新プラットフォーム「MQB」を初めて採用して、少しボディサイズが大きくなった。とはいえ、小回りは効くので大きくなったから取り回しが大変になったということはない。室内は先代よりもかなり広々としたので、たとえば、結婚して子どもが生まれるような家庭でも、これまでより使い出がありそうだ。 ちょっと大人びたけどらしさはちゃんと感じる1.0L直列3気筒ターボエンジンは、お買い物クルマとして街中で使うには充分なパワーがあると思う。ただ、燃費重視のセッティングのせいなのか、すぐシフトアップしてなるべく低回転で回そうとする傾向があるので、中低速でちょっとパワーが足りないと感じる方もいるかもしれない。そんなときはシフトレバーを軽く下に倒すと「Sモード」になってエンジンの反応もよくなるので、一度試してほしい。もしパワーがちょっと気になるなぁくらいの人であれば、上のグレードを買わなくても、必要なときにこのSモードを使えば問題ないような気がした。 MQBを採用したこともあってか、これまでのポロのように軽快にぽんぽんと走っていくような感覚はすこし薄まって、しっとり滑らかでちょっと大人びた雰囲気になった。サイズが大きくなってよりしっかりしたクルマに変わったことで「ゴルフと何が違うの?」とか「ポロらしくない」と言われることも多いらしい。でも、それはクルマに詳しい一部の人の意見だなぁと思う。昔に戻って普通の目で見ると、やっぱりポロはポロだ。ビタミンカラーが似合うデザインと、コンパクトでちょっとそこまで出かけたくなるようなクルマ。その根幹は変わっていない。編集部内では、クルマにそんなに詳しくない女性たちが一目見ただけで「かわいい!」と言っていたらしいから、それだけでやはりゴルフとは違うアイデンティティを持っていると感じる。 ポロを見て自身の襟を正したそういった意味で、新型ポロは元々の愛されるキャラクターは持ちつつも、より現代のクルマとしてきちんと進化したと思う。これなら、若い人たちにとっても受け入れやすいはずだ。「かわいい」クルマのなかでは、一番実用性が高くて、長く付き合えるクルマなのではないだろうか。 クルマが進化していくにつれて、「そのクルマらしさがなくなった」と言う人たちもよく見かける。それは、これまで何十年とその歴史を見てきて、自分の歴史もそこに投影しているからなのだろうなと思う。もちろんクルマの歴史は大切なことだが、これから世の中を担っていく若い人たちにそれを押し付けてばかりではよくないと思う。昔を懐かしむことと新しいものを否定することはまったく別物だ。 いまの自分は新しいものを吸収しようというキャパシティはあるのだろうか、単にいまの時代に背を向けてはいないだろうか。ポロが正しい道をすくすくと成長しているのを見て、私も今一度その問いかけを自分自身にしてみて、すこし背筋を正した。 ---------- 【 フォルクスワーゲン ポロのその他の情報 】 スペック【 ポロ TSI ハイライン(試乗車) 】 |
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